研究課題/領域番号 |
23K06689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岡田 雅司 山形大学, 医学部, 准教授 (70512614)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | HDAC / 分化誘導 / 細胞毒性 / がん幹細胞 / エピジェネティック修飾薬 / エピジェネティック |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍の発生・維持にはがん幹細胞が中心的な役割を果たしており、様々な治療法が報告されているがその制圧は未だ困難である。申請者はがん幹細胞の「分化誘導薬」やがん幹細胞特異的な「殺傷薬」を開発し、「殺傷薬+分化誘導薬の併用療法」の相乗的な治療効果を明らかにしてきた。ところで申請者は最近、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)ががん幹細胞の脆弱性であることを示唆する知見を得たことから、本研究にて、HDAC阻害薬ライブラリのスクリーニングを通じて新たな殺傷薬を同定し、さらに申請者がこれまでに確立した分化誘導療法を組み合わせることで、腫瘍中のがん幹細胞を効果的に消滅できる新規がん幹細胞治療法の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
がん幹細胞(CSC)は腫瘍組織内のごく少数の亜集団ではあるが、高い自己複製能や異なる腫瘍系列への分化を可能にする多能性を持つことから、がんの根治を阻む最難関の一つと考えられている。これまでに我々は、CSCを機能的に減じる「分化誘導薬」や、CSCと非CSCの差分解析から、CSC特異的な脆弱性を標的とすることで殺傷し物理的にCSCを減じる「殺傷薬」を開発し、さらにこれら両者の併用がお互いの課題を克服することで相乗的な治療効果を生み出すことを報告してきた。この様な背景の中我々は、差分解析からヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)がCSCの新たな脆弱性であること、CSC標的治療薬として有望であるHDAC阻害薬を複数同定し報告してきた。さらに、その一つは膠芽腫がん幹細胞だけでなく、卵巣がん細胞にも有効で、卵巣がん治療の標準治療薬として用いられるシスプラチンやパクリタキセルと併用することでより効率よく細胞を殺傷できることを報告した。また、これまでに見出していた「分化誘導薬」の一つであるCEP1347がCSCに対する分化誘導活性とは別に、がん抑制遺伝子p53の発現上昇を促し細胞増殖を抑制すること、この発現上昇はp53の負の制御因子の一つであるMDM4の発現抑制によって引き起こされることを明らかにし、特にp53遺伝子が野生型で保持されていることが多い、髄膜腫・神経膠芽腫・網膜芽細胞腫・ぶどう膜黒色腫に対して有用であることを立て続けに見出し、合計、4報の論文を国際誌に発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点で得られていた予備的知見をさらに発展させ、見出したがん幹細胞標的治療薬として有望であるHDAC阻害薬の一つをヌードマウスを用いたin vivo投与実験にて検証し、現在のところ所期の結果を得つつある。加えて、概要に記したように、申請時の予備的知見をさらに派生させ、まず同定したHDAC阻害薬の一つの適応拡大を目指しグリオーマ幹細胞以外にも試験したところ、卵巣がん細胞に対しても強力な増殖抑制効果を持ち、かつ卵巣がん治療の標準治療薬として用いられるシスプラチンおよびパクリタキセルとの併用により効率よく細胞を殺傷できることを明らかにした。加えて、殺傷薬と分化誘導薬の併用に使用する予定薬剤の一候補であるCEP1347の薬理学的性質を分子生物学的に調べた結果、CEP1347はがん幹細胞に対する分化誘導活性とは別に、p53の負の制御因子の一つであるMDM4の発現抑制によってがん抑制遺伝子p53の発現上昇を促し細胞増殖を抑制することを複数のがん種において発見し報告するに至った。さらに、これらの他にも差分解析を用いてがん幹細胞に特徴的な脆弱性を標的とする薬剤を既に複数同定しており、さらなる発展研究の足がかりになると考えられる。以上の研究活動を総合的に判断すると、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本課題で見出した複数のHDAC阻害薬に対して、ヌードマウスを用いた動物実験を始めとしたさらなる解析を進めている。加えて、本課題において、がん幹細胞に特異的な新たな脆弱性やそれらを標的とする薬剤を現在複数同定つつあり、それらの解析をin vitroのみならずin vivoでも鋭意進める予定である。
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