研究課題/領域番号 |
23K06695
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福島 健太郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70546879)
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研究分担者 |
保仙 直毅 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10456923)
草壁 信輔 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50747186)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 造血細胞移植 / 血液悪性疾患 / 白血病 / 免疫細胞療法 / プロバイオティクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究において我々は腸内殺菌に用いられた抗生物質・プロバイオティクスの投与歴と腸内細菌叢の相関を解析し、ショットガンシークエンスを用いることで有益な菌群や不利益な菌群を株レベルで同定することを目標とする。
一方腸内細菌叢は、抗腫瘍薬、放射線による副作用、好中球減少期の感染症や急性・慢性GVHD等の合併症にはドナー免疫担当細胞が大きな役割を果たしている。本研究では、同時に末梢血免疫細胞のプロファイルを解析し、それと腸内細菌叢、プロバイオティクスおよびFMTによる介入と、移植経過中の感染症や非感染性の移植合併症の関連を明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまで我々は造血幹細胞移植患者の便検体を16SrRNA 解析により評価し、移植後腸内細菌叢の安定性が生存と関連していること、移植後1か月目の腸内細菌叢に占めるEnterococcusの増加が移植成績に負の影響を与えること、移植後1か月目の腸内細菌叢の不安定性は慢性GVHD 発症のリスク因子であることを報告した。さらに造血幹細胞移植患者の腸内細菌叢が、移植後10年以上経過しても多様性の改善が得られず、合併症や二次性悪性腫瘍の発症に関与することを明らかにした。(Hino A, Fukushima K, Hosen N et al. Br J Haematol. (2023) May;201(4):725-737. doi: 10.1111/bjh.18574.) 近年、本邦で臨床使用されているクロストリジウム・ブチリカム生菌製剤(CBM588)はニボルマブ・イピリムマブによる治療を受けた転移性腎細胞がん患者の臨床転帰を改善することが報告され、腸内の安定化ががん治療に正の影響を及ぼすことが期待できる。そこで我々はこれまでの同種造血幹細胞移植と腸内細菌叢に関する研究結果をもとに予備的解析を行い、当施設症例で移植後急性期に腸内細菌叢の多様性を、既存検体をもとに比較を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
造血細胞移植における経口抗生物質を用いた腸内殺菌法とプロバイオティクスの投与に関してはエビデンスが乏しく、一方でプロバイオティクス等の生菌製剤には感染症のリスクも生じる。今回我々は本研究を通じて、新たな腸内細菌叢の特性を生かした支持療法の確立を目指しており、前向き無作為化臨床試験を立案するに至った。そのために、我々はこれまでの同種血幹細胞移植と腸内細菌叢に関する研究結果をもとに予備的解析を行い、移植後急性期に腸内細菌叢の多様性を、既存検体をもとに較したところ、移植早期にCBM588 投与を継続的に行った群は、非投与群と比較し移植前後の腸内細菌叢のα多様性が保持されていることを示し、CBM588の腸内細菌叢の安定化に寄与している可能性につき報告した。(Bone Marrow Transplant (2024). doi: 10.1038/s41409-024-02250-1)。 ①腸内細菌叢と同種造血幹細胞移植予後との関連は多数の論文報告があり、②腸内細菌叢の安定化、改善が移植予後を改善させることが解明されつつある今、③移植実施にあたり腸内殺菌法を実施する時点からCBM588を投与することで腸内細菌叢が安定化できるのか、そのことが移植の予後を改善するかどうかをプラセボ対照ランダム化比較試験にて臨床的有用性を検証するとともに、同時に取得する末梢血検体と合わせて移植後の腸内細菌安定化による末梢血免疫細胞の特性解析を行うこととした。本研究は倫理審査で承認され、他施設との協力体制が構築でき次第開始することとなった。 今後は多施設臨床試験を遂行しながら、本研究を完遂すると同時に、得られた糞便検体および血液検体を用いてプロバイオティクスによる介入の有用性を検討し、さらに基礎的検討を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本試験を臨床研究法に基づいた研究を行うと同時に、基礎的検討を加えるにあたり、以下を計画している。 (1)16SrRNA解析およびショットガンメタゲノムシークエンス解析を行うことにより、腸内細菌叢の予後因子を規定する菌種の同定と代謝産物の評価 (2)16SrRNA解析・ショットガンシークエンス解析結果と臨床データの関連性に関する検討 便検体から得られた検体を用いて16S rRNA sequencing を行う。解析結果を適切なリファレンスを用いて解析する。さらにメタゲノムDNAからショットガンライブラリーを作製後、Nextseqシーケンサーを用い解析する。取得したリードをマッピングすることで、菌種組成および菌叢の持つ代謝機能およびCBM588をはじめとするプロバイオティクスによる影響を明らかにする。また、腸内細菌叢の変化や有意に存在量の変化する菌種の同定と機能に関する遺伝子群の評価、プロバイオティクスの臨床的意義の評価をおこなう。今回の前向き検討により、生菌製剤の有無による経時的に同一条件での患者間の比較を行うことが可能になる。 (3)末梢血免疫細胞の特性解析を行いプロバイオティクスの影響を検討する 患者の末梢血をマスサイトメーター(CyTOF)を利用して解析する。本研究では、B細胞、単球、NK細胞、T細胞、Treg細胞、mDC細胞、pDC細胞、自然免疫系細胞、自然リンパ球、制御性T細胞等の解析を行う。そしてCBM588を使用している患者群において増加・減少する細胞集団を同定する。
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