研究課題/領域番号 |
23K06705
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
矢内 洋次 関西医科大学, 医学部, 講師 (50509586)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 遺伝性乳癌卵巣癌症候群 / オルガノイド / 乳癌発生メカニズム / リスク低減乳房切除 / 網羅的遺伝子発現解析 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome, HBOC)では、乳癌を発症する前に予防的に乳房を切除するリスク低減乳房切除術(risk-reducing mastectomy, RRM)が推奨されているものの、乳癌発症リスクを判断するための客観的指標が存在しない。そこで、本研究ではHBOCにおける乳癌発生メカニズムを解明することにより、指標の確立を目指す。具体的には、HBOC女性とHBOCではない女性の乳癌および正常乳腺の網羅的遺伝子発現解析を実施し、標的分子を同定する。続いて、患者由来乳癌オルガノイドを用いて、標的分子に対する各種阻害薬等の抗腫瘍効果を検証する。
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研究実績の概要 |
乳癌は年間約9.4万人が罹患し、女性癌罹患率は1位となっている。その中で遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)女性による乳癌は約5%を占め、日本で新規に年間約4700名が罹患していると考えられる。遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)では、「乳癌を発症する前に予防的に乳房を切除するリスク低減乳房切除術(RRM)」による発症予防が推奨されているものの、乳癌発症リスクを判断するための客観的指標が存在しない。そこで、HBOCにおける乳癌発生メカニズムを解明することにより、客観的指標となる科学的根拠を示せるのではないかと考えた。 令和5年度は、HBOC乳癌患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本の癌組織および正常組織からRNAを抽出し、Counter Analysis Systemを活用した網羅的遺伝子発現解析を実施した。その結果、乳癌発症への関与が示唆される複数の標的分子を検出することに成功した。現在、有意差を認めた候補分子について、HBOC女性だけでなく、そうではない女性の乳癌・正常乳腺を含め、検体数を増大し、RT-qPCR法および免疫組織染色法を用いた解析を進めている。その他、ヒト乳癌および正常乳腺由来オルガノイドを複数樹立することに成功した。今後、オルガノイドの形態解析・遺伝子発現解析を行った後、標的分子に対する各種薬剤の抗腫瘍効果を検証する予定である。 本研究成果は、予防医療および新規治療法の開発に繋がり、社会への貢献が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の令和5-6年度研究計画は、HBOC乳癌患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本の癌組織および正常組織からRNAを抽出し、Counter Analysis Systemを活用した網羅的遺伝子発現解析を実施し、乳癌発症への関与が示唆される複数の標的分子を検出すること、有意差を認めた候補分子について、HBOC女性だけでなく、そうではない女性の乳癌・正常乳腺を含め、検体数を増大し、RT-qPCR法および免疫組織染色法を用いた解析を進めることであった。また、ヒト乳癌および正常乳腺由来オルガノイドの作製を開始することであった。 それらの研究を実施した結果、乳癌発症への関与が示唆される標的分子を複数同定した。そして、有意な差を認めた遺伝子に対して、RT-qPCR法を用いてRNAの発現確認、免疫組織化学染色を用いてタンパク質ノ発現確認を行っている。また、乳癌・正常乳腺組織からオルガノイドを樹立した。培養条件も確立し、オルガノイドの検体数を増やしている。これらの結果は、総合的に判断して本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
Counter Analysis Systemの結果などにより同定された標的分子に関して、HBOC女性の乳癌ではない正常組織の生検検体や血液検体で血中のcell free DNAの解析により、標的分子の発現を同様に再現できれば、乳癌発症リスクの評価が可能となり、「乳癌切除後にRRMを検討しているHBOC女性」・「乳癌未発症のHBOC女性」共にRRMを実施するタイミングの指標になると考える。以上の方法により、RRMを行うかどうかの判断基準を明確にし、客観的指標を同定する。乳癌研究が順調に推移した場合には、同定した標的分子の関与についてHBOC女性の正常卵巣および卵巣癌検体に対する解析を加える。また、HBOC女性由来の乳癌および乳腺オルガノイドを用いて、同定した標的分子の遺伝子発現を検証する。以上の結果により同定された標的分子に対する阻害剤、Morpholinoアンチセンスオリゴ等を用いて、抗腫瘍効果を検討し、新規治療法の開発を行う。
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