研究課題/領域番号 |
23K06747
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
山田 武司 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (40333554)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | CD8 / エピジェネティック調節 / 抗腫瘍活性 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで、がんに対する様々なT細胞免疫療法が開発され、一定の成果を上げている。しかしながら、期待された免疫が持続せず十分な効果が得られないものも多く存在する。本研究では、ヒストンH3K9脱メチル化酵素であるPhf2に焦点を当てた研究を行い、Phf2のT細胞分化および抗腫瘍免疫における役割について明らかにする。さらに、薬剤を用いたPhf2の制御により、腫瘍特異的T細胞における抗腫瘍活性の増強効果について明らかにするとともに、効果を最大限に引き出す条件の最適化を行う。研究の最終段階では、新規免疫療法のプロトコール提案を目標とする。
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研究実績の概要 |
我々の先行研究から、ヒストンH3K27脱メチル化酵素であるUtxがT細胞の分化や機能を調節することが明らかとなっている。したがって、ヒストンH3K9脱メチル化酵素であるPhf2においても、T細胞の分化や機能との関連が示唆される。そこで本研究では、T細胞におけるPhf2の役割に焦点を当てた解析を開始した。 今年度は、解析に使用するT細胞特異的Phf2欠損マウスモデルの作製を行った。Phf2欠損マウスはPhf2 floxマウスとCD4 Creマウスを交配させることでT細胞特異的Phf2欠損マウスを作製した。T細胞におけるPhf2遺伝子の欠損をPCR解析により確認したとともに、ウェスタンブロット解析により、Phf2の蛋白発現がないことも確認した。野生型(WT)マウスとT細胞特異的Phf2欠損(Phf2 KO)マウスとの比較から、体重差や健康状態に差が見られないことを観察した。また、胸腺細胞を用いた解析から、Phf2遺伝子が欠損するT細胞胸腺分化後のCD4あるいはCD8単独陽性の割合も差が見られないことから、Phf2遺伝子欠損による胸腺分化には異常が見られないことが分かった。次に、様々な臓器(脾臓、血液、リンパ節、肝臓、肺)に分布するCD8陽性T細胞の分化を抗体染色後にフローサイトメトリー解析したところ、興味深いことにPhf2欠損によりCD44とCD62Lが高発現するメモリータイプの割合が増加していることが明らかとなった。一方で、各臓器におけるCD8陽性T細胞の数には差がなかったことから、数の恒常性は維持されていることも分かった。以上のことから、Phf2欠損によりCD8陽性T細胞が何らかの刺激を受けて活性化し、分化が進んだものと考えられる。今後は、活性化後のT細胞の増殖や分化、機能について細胞レベルだけでなく個体レベルで解析し、T細胞免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Phf2欠損マウスモデルの作製に関して、Phf2 floxマウスおよびCD4 Creマウスはすでに入手済みであったため、交配により予定通りT細胞特異的Phf2欠損マウスができたため、期待通りの研究成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえ、活性化後のT細胞の増殖や分化、機能について細胞レベルだけでなく個体レベルで解析し、T細胞免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにしていく。まず、個体レベルの解析では脾臓から分離培養したCD8陽性T細胞を、抗CD3/CD28抗体を用いて4日間培養を行い、T細胞分化と増殖についてフローサイトメトリー法により解析する。個体レベルの解析では、マウス胸腺腫瘍細胞であるE.G7を皮内接種し、腫瘍サイズの測定による抗腫瘍活性の比較を行う予定である。これらによって、T細胞の抗腫瘍免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにし、最終的に臨床応用に向けた新しい免疫療法のプロトコール提案を行う。
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