研究課題/領域番号 |
23K06765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大村 洋文 九州大学, 医学研究院, 助教 (60767375)
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研究分担者 |
新井田 厚司 東京大学, 医科学研究所, 講師 (00772493)
LOW SIEWKEE 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター リキッドバイオプシーシステム開発グループ, 主任研究員 (40634720)
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
長山 聡 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70362499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | メチル化ctDNA / MRD / dPCR / シミュレーション / DNAメチル化 / 大腸がん / 早期診断 |
研究開始時の研究の概要 |
リキッドバイオプシーによるがん遺伝子パネル検査が保険診療下で実施可能となったが、シーケンスのコストが問題である。Stage IIまたはStage III 大腸がん術後経過をモニタリングし、同一検体を用いたctDNAゲノム変異およびctDNAメチル化の感度・特異度を比較することで、ctDNAのメチル化のサブクリニカルレベルでの有用性を示す。そして通常診療において安価に頻回の実施が可能であり、かつ、がん遺伝子パネル検査へサブクリニカルレベルで繋げていくための検査法を確立することが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
メチル化アレイ公共データベースを解析し、①大腸がん特異的、②癌細胞特異的、③健常組織非発現、④標的転写産物の発現とメチル化βvalueが逆相関、⑤独立予後不良因子。以上5つの条件を満たすメチル化ゲノム領域を選定しdPCRで検出する3マーカーを同定した。Digital PCRを用いた検出系では解析対象は根治切除を終えた大腸がん症例(stage III)のうち3年以内の再発陽性28例(経時的採取し合計181血漿検体)、再発陰性19例(112検体)を対象にメチル化3マーカーを測定した。その結果、再発例のメチル化陽性22例(感度78.6%)、無再発例のメチル化陰性17例(特異度89.5%)であり、既存の血清腫瘍マーカー(CEA)を凌駕し画像診断の60〜200日早く診断が可能であった。 本年度は本アッセイの更なる実装化を進めるために別のサブグループで再現性を検証した。比較対象はctDNAゲノム変異を測定済みのstage II/III 大腸がん血漿検体(110例468検体;術前/AC中/AC後/再発時(非再発2年目))を用いる。すなわちctDNAの症例別ゲノム変異解析とctDNAメチル化マーカー解析とを同一検体で実施し直接比較し検討を行った。さらに最適治療法確立のためのシミュレーションを行い最適な採血ポイントでの計算式を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
突然変異の代表としてBRAFV600E CRC症例の末梢血8点におけるAMUSEのメチル化スコアとcfDNAのバリアント対立遺伝子頻度を比較した。我々は以前、Oncomine Pan-Cancer Cell-Free Assayを用い、メーカーのプロトコール(Life Technologies)に従い、20 ngのcfTNAをインプットしてcfTNAの標的化NGSを実施していた。我々は、NGS研究に適用された同一の血漿サンプルにAMUSEアッセイを実施した。その結果、CRC症例から得られたcfDNAのBRAF V600Eの変異対立遺伝子頻度を調べ、さらに、BRAF V600Eを有するCRC症例から得られた同一の血液検体についてAMUSEアッセイを適用したところメチル化β値の変化は、変異cfDNAと完全に一致した。以上の結果を踏まえて、これまでの成果をCancer Science誌に論文報告した。また、3マーカーは知財の特許の出願に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
メチル化された3遺伝子を同定し転移再発予測因子として明確な臨床的有用性を明らかにした。特に遺伝子Aを発現する細胞をstage IV大腸がん15検体(原発、肝転移、血液)scRNA seqでdeconvolutionして求めた結果、再発巣を構成するがん細胞ではなく、がん関連線維芽細胞(CAF)由来であった。またA(高メチル化)低発現CAF細胞と共局在する細胞およびクロストーク遺伝子をシングルセルデータの機械学習パイプラインDeepCOLORにより求めた結果、遺伝子A(高メチル化)低発現CAF細胞はCCL2を分泌してCD8 T細胞におけるCCR2下流シグナルを活性化して転移巣形成に寄与していることを明らかにした。既にわれわれはCCL2を標的にした阻害剤プロパゲルマニウムについて医師主導治験での安全性を確認しており、今後CCL2を介して構築される『GPC6(高メチル化)低発現CAF細胞とCD8 T細胞で構成する前転移ニッチ』を治療標的とした再発の予防法の確立をめざす。
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