研究課題/領域番号 |
23K06771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
梯 アンナ 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60382222)
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研究分担者 |
萩原 淳司 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40423884)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ヒト浸潤性膵管癌 / バイオーマーカー / 発がんメカニズム / 浸潤性膵管癌 / 新規マーカー候補 / 膵管発がんメカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌は我が国において、癌の死因別では男女とも第5位であり、また年々増加傾向にある。初期には無症状のことが多く、早期発見が困難な腫瘍の一つである。以前、我々はプロテオームや免疫染色解析を用いて、浸潤性膵管癌及び膵上皮内腫瘍性病変においてPRDX3とMVPの高い発現が見られて、癌細胞から分泌される蛋白であり、膵管癌早期発見のためのマーカーになる可能性がでてきた。さらに、膵管発がん機序には抗酸化システムの活性化が重要な役割を果たすことが分かった。本研究は、ヒト浸潤性膵管癌の早期発見のために有用な新規マーカー候補の探索、新規オルガノイド培養モデルの開発、阻害剤の選択と膵管発がん機序の解明を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、ヒト浸潤性膵管癌(PDAC)の早期発見または予後予測に有用な新規マーカー候補の探索を目的とした。2007年から2019年までに大阪公立大学医学部附属病院で手術されたPDACの100症例を対象に、プロテオーム解析で高い発現が見られたPRDX3とMVPの免疫組織化学染色を実施し、臨床所見及び病理学的所見との相関について検討した。PRDX3及びMVPはPDACの細胞質に良好な染色性を示し、一部の標本中に含まれる膵臓上皮内腫瘍(PanIN)相当病変においても染色性を示した。PRDX3について、全症例を対象とした術後1年までの生存分析及び血清中SPan-1が臨床基準範囲よりも高値を示した症例の全生存期間に対する生存分析では、強陽性患者で生存期間の低下が認められた。膵癌細胞株の培養上清からPRDX3及びMVPが検出された。Balb/cヌードマウスの膵臓癌細胞のxenograftにおいて血漿中のエキソソーム(EV)を抽出し、PRDX3 mRNAの高発現が認められたがMVP mRNAの発現が見られなかった。ELISA法を用いて血漿のPRDX3蛋白レベルの有意な上昇を確認された。透過型電子顕微鏡解析では腫瘍の血管内にリボソームが含まれるEVを観察された。PRDX3の過剰発現見られた癌細胞にNrf2及びFoxo3aの活性が示された。siRNAを用いてFoxo3aをノックダウンした癌細胞ではPRDX3の発現低下及び細胞増殖の抑制が見られた。PRDX3と膵管癌幹細胞マーカーCD44v9及びPRDX3とp38/JNK活性化を示すP-Foxo3a Ser7/594の発現との間に有意な相関関係が見出した。以上のことから、PRDX3は浸潤性PDAC の早期マーカー候補になりうることが期待され、Nrf2、Foxo3a、CD44v9とともに膵臓発がんにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ヒト浸潤性膵管癌(PDAC)組織のQSTAR LC-Ms/Ms解析結果を用いて、バイオインフォマチックスIPA解析および免疫組織学的解析を用いて膵管癌の潜在バイオ―マーカーの選択を行った。2007年から2019年までに大阪公立大学医学部附属病院で手術されたPDACの100症例を対象に、高い発現が見られたPRDX3とMVPの免疫組織化学染色を実施し、臨床病理組織学的解析を行った。PRDX3について、全症例を対象とした術後1年までの生存分析及び血清中SPan-1が臨床基準範囲よりも高値を示した症例の全生存期間に対する生存分析では、強陽性患者で生存期間の低下が認められた。PRDX3及びMVPは、一部の標本中に含まれるPanINにおいても高発現を示した。 2.In vitro解析では膵癌細胞株の培養上清からPRDX3及びMVPが検出された。siRNAを用いてFoxo3aをノックダウンした癌細胞ではPRDX3の発現低下及び細胞増殖の抑制が見られた。In vitro膵管癌のオルガノイドの方法を作成中である。 3.In vivo Balb/cヌードマウスxenograftモデルを用いてPRDX3及びMVPの血中蛋白及びエキソソーム(EV)内mRNAレベルを調べた。血漿のEV内にPRDX3 mRNAの高発現が認められた。ELISA法を用いた解析ではPRDX3蛋白レベルが有意に上昇した。 4.透過型電子顕微鏡解析を行った。腫瘍の血管内にリボソームが含まれるEVを観察された。 5.ヒトの膵管癌、膵臓癌細胞株及びBalb/cヌードマウスの移植腫瘍を用いて、P-Nrf2/Nrf2, CD44v9, P-Foxo3a(Ser7/594)及びPRDX3の免疫染色を行い、P-Nrf2, P-Foxo3a(p38/JNKリン酸化Ser7/594)、CD44v9とPRDX3発現の相関関係を認められた。
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今後の研究の推進方策 |
1.令和5年度の引き続き、KrasLSL-G12D/+およびPtf1aCre/+PDACモデルマウス膵管癌細胞、PBMCs、間質細胞 (線維牙細胞、マクロファージ)、成長因子、Lgr5 agonist R-spondin Iを用いて、マウス由来オルガノイドモデルを開発する。コンフォーカル顕微鏡を用いて目的蛋白の機能解析を行う。 2.マウス由来膵管癌オルガノイドやヒト膵臓癌細胞株 (Panc-1, MiaPaca-2 , sw1990)を用いて、阻害剤 (PRDX3阻害剤:チオストレプトン(Thiostrepton), MVP阻害剤(PAK-104P), Nrf2阻害剤(Brusatol, Ascorbic acid、Retinoic Acid, Chrysin, Luteolin, Trigonelline) Foxo3a 阻害剤(AS1842856) を投与する。細胞の成長、増殖、細胞死、移動力、遺伝子やタンパクの発現変化について検討する。 3.令和5年度の引き続きPRDX3、Nrf2、Foxo3aのsiRNAを用いてノックダウンし、目的蛋白の機能解析を行う。上流因子、シグナリングパスウェー、膵管発がんのメカニズムを解明する。 4.本学肝胆膵内科より分与された膵管癌患者血液を用いてELISA法により、ターゲットタンパクの発現の有無およびその量について検討を行う。浸潤性膵管癌患者の血液サンプルを用いて、ELISA法・RT-Q-PCR PCRで目的蛋白/RNAの濃度を調べて、血中マーカーを検索する(SPSS statistics version 16.0(IBM)またはGraphPad Prism 8(GraphPad Software Inc.)。
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