研究課題/領域番号 |
23K06782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50020:腫瘍診断および治療学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
紅露 拓 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所がん免疫療法研究開発学部, チームリーダー (90372424)
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研究分担者 |
辻 嘉代子 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所がん免疫療法研究開発学部, 特別研究員 (60584232)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | TCR-T / シングルセル解析 / 腫瘍浸潤リンパ球 |
研究開始時の研究の概要 |
近年がんの治療手段として免疫療法が注目されている。なかでもT細胞受容体(TCR)遺伝子導入T(TCR-T)細胞療法は最も直接的な免疫療法といえるが、治療に用いるTCRの確実で効率の良い同定方法に課題が残っている。本研究では腫瘍浸潤T細胞を直接シングルセルRNAシークエンス解析することにより、腫瘍特異的T細胞の特徴を捉え、がん殺傷作用の高いTCRを効率的に取得する方法を確立する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は6症例の腎がん手術材料から腫瘍浸潤白血球(TIL)の精製、T細胞の凍結保存を行った。その内訳はStage I:1例、Stage III:4例、Stage IV:1例であった。そのうち4サンプルおよび予備検討で細胞凍結していた2サンプルについてシングルセルシークエンスを完了し、さらにそのうち2サンプルについてTCR-T20クローンずつを作成し、該当オルガノイド培養細胞への反応性を検討した。20クローンのうちオルガノイドへの反応を示したのはそれぞれ11クローン、4クローンであった。シングルセルシークエンスのTCRクロノタイプ情報と遺伝子発現データを同期させることにより、オルガノイド反応性TCRを発現していたT細胞とオルガノイドに反応しないTCRを発現していたT細胞の発現遺伝子変動を解析したところ、予想外なことに両者の発現遺伝子に有意差が認められなかった。一方、Stage IのサンプルとStage III-IVのサンプルを比較するとStage III-IVのサンプル中のT細胞はTOX陽性のT細胞が有意に多く、ステージの進んだ腎がんでは疲弊T細胞が多いことが明らかとなった。TILのCD4/CD8 T細胞比についてはステージとの関連は認められなかった。 これらの6症例の腎がん手術材料からオルガノイド培養の樹立を試み、5サンプルで樹立に成功した。予備実験の4サンプルのうち3サンプルについて正常組織、がん組織、オルガノイド培養細胞のwhole exome sequenceを行い、変異遺伝子を比較したところ、がん組織で見られた遺伝子変異の多くがオルガノイド培養細胞で検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度には2例の腎がん試料の収集とそのオルガノイドの樹立、腫瘍浸潤リンパ球からのTCR遺伝子の単離およびTCR-T細胞の作製を予定していたが、6例の試料を入手することができ、そのうち4例のシングルセルシークエンスを完了した。TCR-Tの作成についても目標の2例について完了している。 ただ、オルガノイド反応性T細胞と不反応T細胞のあいだで遺伝子発現に差が見られなかった。その原因としてオルガノイドにおいてがん組織で見られた遺伝子変異が検出できないことから、オルガノイド不反応のTCRも腫瘍内では腫瘍抗原に反応しており、その抗原がオルガノイドで欠損している可能性が考えられる。その場合、オルガノイド樹立プロトコールの再検討、オルガノイド反応性によらないTCR機能評価方法の検討などが必要になる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに予備検討分を含め10例の手術検体を入手しているが、Stage 1:3例、Stage III-IV:7例であるのでStage 1-IIのものを中心にサンプル収集を続ける。 未完了のシングルセルシークエンスおよびTCR-T細胞作成についても順次解析・作成を進める。 TCR-Tとオルガノイドの反応性についてはオルガノイドとがん組織の差異の大きさに注意しつつ進めるとともに、TCRのクローンサイズの大小による発現遺伝子の違いについても解析を始める。
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