研究課題/領域番号 |
23K06793
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石川 淳子 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30570808)
|
研究分担者 |
西井 淳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00242040)
藤本 憲市 香川大学, 創造工学部, 教授 (20300626)
村井 礼 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (30279111)
美津島 大 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264603)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 海馬CA1 / super burst / リップル発火 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が経験する出来事の記憶形成には海馬CA1が重要な役割を担っているが、これに関わるCA1の神経活動はあまり解っていない。我々は、強い情動性経験によって、ラット海馬CA1に超高頻度発火(super burst)が起き、その後複数ニューロンによる協調性発火(リップル発火)が誘発されることを明らかにした。さらに、この実験から、super burstが記憶形成プロセス開始のトリガとなっていることや、リップル発火が経験情報を符号化していることが示唆された。そこで、本研究ではsuper burst生理学的意義とリップル発火の符号化様式を検証する。
|
研究実績の概要 |
ラットに拘束ストレス経験をさせると、経験開始直後から海馬CA1多ニューロンによる超高頻度発火(super burst)が発生し、その後、複数のCA1ニューロンによる協調的発火活動(リップル発火)の増加と波形の多様化、抑制性・興奮性シナプスの強化が起きることが解っている。本年度は、super burstの発生を特異的に阻止、その後の記憶形成がどのようになるかを検証した。Super burstを特異的に除去するためにリアルタイムでinter spike intervalをモニターし、burstが検出されたタイミングで海馬交連を電気刺激した。比較対照群には海馬交連のランダム刺激を行った。記憶の形成を確認するために、拘束ストレスを行った翌日に、再度同じ場所に暴露してフリージング行動を評価した。比較対照群はフリージング行動が増加するのに対し、super burst阻止群は増加しなかったことから、super burstが記憶形成に必要であることが明らかとなった。一方、拘束ストレス経験後には発火が一定期間起きない「サイレントピリオド」が増加することが解っているが、super burstを阻止してもこの増加が起きた。以上のことから、super burstの阻止によって興奮性シナプスの増強が阻止されるが、抑制性シナプスの増強は阻止されないことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではsuper burstが記憶形成プロセスのトリガとなっているということと、経験後に増加するリップル発火の符号化様式を検証する。現在まで、super burstを特異的に消すことで記憶の形成が阻止されることを行動学的に明らかにした。一方で、super burst阻止によって、記憶形成過程に海馬CA1に起きる活動変化が全て阻止されるわけではないことも解った。一方、リップル発火の符号化様式を調べるために膨大な数発生するリップル発火の自動検出を機械学習によって試み、目視確認の結果、良好な成績を得ている。また、リップル発火の自動抽出だけではなく手動抽出も行っており、そのためのプログラムも作成した。
|
今後の研究の推進方策 |
リップル発火には経験情報が符号化されていることが示唆されている。そこで、令和6年度はsuper burstの阻止により、リップル発火の発生・波形の多様化・符号化様式がどのように変化するかを解析する。また、記憶の形成と想起時に起きるリップル発火がどのように経験を符号化しているかを調べるために、当初は拘束ストレスを使用する計画であったが、想起を評価しやすい恐怖条件付け(熱ショックストレス・7分間・10回・ランダムインターバル)を用いる。記憶形成は従来通り、経験中・経験後のリップル発火を評価し、想起時のリップル発火は、翌日に熱ショックボックスに再暴露しフリージング行動を示した際に発生するリップル発火を解析する。
|