研究課題/領域番号 |
23K06802
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森 文秋 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60200383)
|
研究分担者 |
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 多系統萎縮症 / αシヌクレイン / 封入体形成 / 線維性凝集 / 小胞構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、多系統萎縮症患者脳、αシヌクレイン封入体培養細胞モデルおよび多系統萎縮症モデルマウスを用いて 1)多系統萎縮症のαシヌクレイン陽性封入体内の小胞構造の起源となる細胞内小器官を明らかにする。 2)多系統萎縮症モデルマウスにおいて、αシヌクレインのオリゴマー形成・線維性凝集と小胞構造の関連性を解明する。 3)小胞構造による封入体形成の制御に着目し、予防・治療戦略につなげる。
|
研究実績の概要 |
ヒト剖検脳組織を用いた解析 コントロール(N = 6)、正常認知(NC)の多系統萎縮症(MSA)症例(N = 6)および記憶障害(MI)のMSA症例(N = 6)の内側側頭部を用いたフィルタートラップアッセイを実施した。MIを有するMSA症例のトリス緩衝生理食塩水画分は、5G4陽性α-Synuclein (α-Syn)の発現レベルが、対照およびNCを有するMSA症例のそれよりも高かった。一方、1%サルコシル画分における5G4陽性α-Synのレベルは、NCおよびMIを有するMSA症例において、対照と比較して有意に高かった。 次に、コントロール(N = 5)、MIのMSA患者(N = 5)およびNCの患者(N = 5)を用いて、二重免疫蛍光分析およびproximity ligation assayを実施した。MIを有するMSA症例では、NCの症例よりも頻繁に海馬形成に細胞質封入体を認めた。MIを有するMSA症例を用いた二重免疫蛍光分析では、α-Syn(syn211)がグルタミナーゼと共局在化したが、パルブアルブミンとの共局在は認められなかった。このように、ヒトMSA症例の海馬形成におけるNCIを持つニューロンは興奮性であることがわかった。Proximity ligation assayにより、コントロールと比較して、MIを有するMSA患者は歯状回およびCA1 - CA4においてより多くのα-Synオリゴマーを有することを明らかにした。 さらに、MSA症例(N=3)の金コロイド免疫電顕観察により、封入体および小胞構造におけるα-Synおよびマーカータンパク質の細胞内小器官レベルの局在を明らかにした。 本年度の研究実績は、MSAにおける記憶障害の病理学的原因として考えられるα-Synオリゴマーの役割について新たな知見を提供するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度科学研究費助成事業交付申請書に記載した研究実施計画通りに実験を進めることができたから。
|
今後の研究の推進方策 |
MSAモデルマウスを用いたトレハロース投与による小胞構造(細胞質封入体)の検討 申請者らが開発したMSAモデルマウス (12週齢、n = 160) を用いる。以下の解析実験で、トレハロース投与(経鼻・経口)群(n = 80)および非投与群(n = 80)群にTamoxifen投与を行い、経時的(1 、3、7、14日後)に以下の解析を行う(各日 n = 5)。 1)行動学的解析(森、大学院生)オープンフィールド試験、ロータロッド試験、物体 探索試験などで活動性、不安様行動、運動学習、協調運動、近時記憶機能などを解析する。 2)生化学的解析(三木、大学院生)断頭後、すぐに脳を取り出しサンプルを抽出してα-Syn(ヒト型およびマウス型)およびマーカータンパク質に対する抗体を用いてウエスタンブロット等で 解析する。 3)免疫電顕的解析(森、大学院生)灌流固定後、脳を採取。大脳および小脳のビブラトーム切片を作製し、α-Syn(ヒト型および マウス型)およびマーカータンパク質に対する抗体を用いて免疫電顕観察を行い、陽性構造物の出現率を定量化し小胞構造(細胞質封入体)の起源となる細胞内小器官を明らかにする。 以上の解析から、MSAの封入体における小胞構造(細胞質封入体)の起源および機能を明らかにし、α-Synの凝集過程において小胞構造が果たす役割(凝集の促進/抑制、オリゴマー形成の促進/抑制)の解明を目指す。
|