研究課題/領域番号 |
23K06805
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 直希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (60769339)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / Amyloid-β / ILEI / 遺伝子発現制御 / 老年期認知症 |
研究開始時の研究の概要 |
Alzheimer病(AD)の基本病態は、amyloid-β (Aβ)ペプチドの脳内蓄積であるが、この要因は未だ解明が進まず、発症前に開始すべき根本的治療の開発には至っていない。代表者らはAβ産生を抑制する内在性タンパク質ILEIを見出し、ILEIの加齢等に伴う発現低下がAβ蓄積を誘発する可能性が示唆された。本研究課題では、孤発性ADのリスク要因としてのILEI発現低下に焦点を当て、ILEI誘導性コンディショナルノックアウトマウスを用いた検証と、ILEI転写誘導による治療方法の検証により、Aβ蓄積の一次的要因の一端を解明し、Aβ蓄積に対するILEIを標的とした先制医療の実現に資する知見を得る。
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研究実績の概要 |
Alzheimer病(AD)の基本病態にはAmyloid-β(Aβ)斑等が知られるが、その要因は未解明な点が多く、根治的治療の開発には至っていない。本研究では孤発性ADのリスク要因としてAβ産生抑制因子ILEIの発現低下に焦点を当て、誘導性コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを用いた検証と、ILEI転写誘導による治療効果の検討を通じ、Aβ蓄積要因の一端を解明し、Aβ蓄積の抑制による治療法開発を目指す。 [a] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因かの検証:前脳領域神経細胞特異的なCaMKIIプロモーター下にtamoxifen(tam)誘導的にCre発現を誘導できるILEI-icKOマウスとSwedish + Iberian変異型ヒト化APPノックイン(App(NL-F)-KI)マウスを交配し、App(NL-F);ILEI-icKOマウスを作出した。App(NL-F)-KIマウスでのAβ沈着開始前の3、6か月齢、開始後の9か月齢に対照群およびcKO群にtamを投与した。6か月齢にtam投与したマウスを14か月齢で解析すると、Aβ沈着増加を認め、行動実験ではY字迷路での自発的交替行動の低下を認めた。 [b] ILEI転写誘導による治療方法の検討: ILEI転写誘導に向けた人為的な転写活性化のため、培養細胞を用いたCRISPR/dCas9システムの構築を行った。dCas9には小型のS. aureus Cas9 (3.2 kb)を使用した。ヒトILEIプロモーター領域にoff-targetを避けたsgRNAを設計し、複数候補を培養細胞で試し、最適sgRNAの選択を行った。転写誘導機構として小型のdCas9-VPRシステム(dCas9にVPR (VP64-p65-Rta)を融合)を用いた。ヒトILEIの場合、ASCL1等の他の遺伝子よりもCRISPRaでの転写亢進が弱かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[a] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因となるかどうかの検証 App(NL-F);ILEI-icKOマウスの解析のため、Tam投与を行い、さらに14か月齢にてAβ免疫組織染色およびELISA、行動実験等を実施し、確認できた群ができた。 [b] ILEI転写誘導による治療方法の検討: ILEI転写誘導に向けた人為的な転写の活性化のため、培養細胞を用いたCRISPR/dCas9システムを構築し、ヒトILEI遺伝子の転写誘導を亢進できたが、ヒトILEIの場合、ASCL1等の他の遺伝子よりもCRISPRaでの転写亢進が弱かった。
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今後の研究の推進方策 |
[a] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因となるかどうかの検証 ・App(NL-F);ILEI-cKOマウスの脳内Aβ蓄積および認知機能低下解析: App(NL-F)マウスで Aβ沈着開始前の6か月齢、ないしAβ沈着開始後の9か月齢のApp(NL-F);ILEI-cKOマウスにTam投与を開始し、脳ILEI発現減少とAβ産生及び沈着との関連性を経時的に評価する。評価はAβ免疫組織染色および western blotting、ELISAによる。また、記憶学習能はY字迷路、放射状迷路、受動的回避実験、運動量測定などの行動実験を実施する。 [b] ILEI転写誘導による治療方法の検討 ・ILEI転写誘導に向けた人為的な転写の活性化: CRISPRaによるヒトILEI転写亢進が他の遺伝子に比し弱いため、培養細胞を用いた検討を追加する。 ・マウス個体を用いた最適化と検証: マウス個体への導入には AAVベクターを用いるが、そのDNA容量の制限のため、小型dCas9を選択し、転写亢進ドメインのVPRの一部を削る計画である。AAVは、静脈注射によって高効率にマウスの中枢神経系に遺伝子を導入出来るPHP.eBという改良型AAV、pUCmini-iCAP-PHP.eBを用い、尾静脈より投与する。 ・マウス個体への応用: 以上から最適化されたCRISPR/dCas9システムとAAVベクター系を用い、マウスでの試験を行う。ヒトILEIの発現制御の評価には、ヒトILEI遺伝子の上流ゲノム領域を有し、発現をLuc2レポーターにより容易に評価できるILEI-Luc2/TK-hRluc Tgマウスを用いる。発現制御効率の評価とともに、ILEIの発現制御に加え、効果持続期間の評価を定量的に行う。
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