研究課題/領域番号 |
23K06823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 隆文 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70361079)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | パ-キンソン病 / αシヌクレイン / ソーティリン / エンドソーム / DNAJC13 / Rab40 / Cul5 / ユビキチン / メンブレントラフィック |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内外における物質輸送やシグナル受容には、エンドソームが主役を演じており生命活動を下支えしている。興味深い事に、遺伝子異常等によりエンドソームを介した物質輸送が滞ると、様々な神経変性疾患が惹起される。さらに神経変性疾患の共通病態とされる病態異常凝集蛋白の細胞間伝播にもエンドソーム輸送が深く関与する事が判明している。本研究では、PDを対象に、(1)αシヌクレイン(αS)細胞間伝播、及び (2)エンドソーム関連遺伝子変異による家族性PDの2つに焦点を定め、これらの病態におけるエンドソームダイナミクスの生理的・病的意義について探索し、革新的な予防・治療法の確立に繋がる基礎的知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
細胞内外における物質輸送やシグナル受容には、エンドソームと呼ばれるオルガネラが主役を演じ、生命活動を下支えしている。興味深い事に、遺伝子異常等によりダイナミックなエンドソームを介した物質輸送が破綻を来すと、パーキンソン病(PD)やアルツハイマー病をはじめとした神経変性疾患が惹起されることが判明している。さらに、神経変性疾患の共通病態として近年注目されている異常凝集蛋白の細胞間伝播にも、エンドソーム輸送が深く関与することが判明している。本研究ではPDをはじめとするシヌクレイノパチー対象疾患として、 (1)αシヌクレイン(αS)細胞間伝播、及び (2)エンドソーム関連遺伝子変異による家族性PD発症の2つの観点から、これらの病態におけるエンドソームダイナミクスの生理的・病的意義について分子レベルで探索し、革新的なPD予防・治療法の確立に繋がる基礎的知見を得ることを最終目標とする。研究初年度は、申請者らが網羅的解析手法により新たに見出した線維化αシヌクレイン(aS)受容体であるVPS10Pファミリーに属するtype I膜タンパクであるsortilin に着目し、線維化αS とsortilinの結合部位であるsortilinの細胞外ten conserved cysteines segment(10CC)ドメイン(GVNPVREVKDLKKK, residues 726-739 a.a.) 特異的新規モノクローナル抗体を新たに作出し、同抗体の存在が線維化αSの細胞内への取り込みを抑制するか検証実験を行った。また、レビー病理を伴うPARK21家族性PD原因分子であるDNAJC13 (別名RME-8)とRab40の双方に結合性を示すCullin-RING 型ユビキチンリガーゼCullin5 (Cul5)に着目し、Rab40/Cul5複合体を介したDNAJC13のユビキチン化の可能性について、細胞生物学的な検証実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維化aSとの結合部位であるsortilinの細胞外10CCドメインのコア領域(GVNPVREVKDLKKK, residues 726-739 a.a.) をエピトープとして、新たにモノクローナル抗体 (10CC Ab)を作出した(Eurofins Genomics, Tokyo, Japan)。コントロールである正常ウサギ免疫グロブリンで前処置したHEK293細胞と比較して、10CC Ab(100μg/ml、30分)で処置した細胞では、細胞内に取り込まれる線維化aS量が有意に減少した。10CC Abは単量体aS取り込みもわずかに低下させる傾向が示されたが、有意差は認めなかった。上記と併行して、DNAJC13 (RME8)との結合が確認されているRab40について、HEK293細胞を用いRab40/Cul5複合体を介したDNAJC13のユビキチン化の検証実験を行った。コントロールのmcherry発現細胞に比べ、mcherry-Rab40A/B/C共発現下において野生型DNAJC13のユビキチン化の増加が確認された。さらに興味深い事に、同ユビキチン化はRab40のcul5との結合ドメインであるSOCS (suppressors of cytokine signaling) boxへの変異導入(AAAA)により有意に減少する事が示された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果を踏まえ、次年度以降は以下の通り研究を進める予定である:(1) sortilinノックアウト、あるいはsortilin抗体前処理下にて、マウスモデルでのαS脳内伝播抑制効果を観察する。具体的には、マウス線維化αSを超音波破砕したpreformed αSフィブリルをマウスの一側線条体もしくは嗅球に接種した脳内伝播モデルを用いる。(2) 家族性PD変異型 (N855S) DNAJC13発現による表現型が、Rab40の共発現で修飾されるかについて、細胞・動物モデルを用い検証する。併せて、細胞・動物モデルあるいは患者由来iPS細胞を用いたオミックス解析により、DNAJC13機能破綻から神経細胞死に繋がるパスウェイを網羅的に探索する。
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