研究課題
基盤研究(C)
本研究では慢性疼痛関連行動を改善する色光線療法の作用に着目し、1.緑色光による視覚入力から中枢の疼痛関連回路への効果を神経回路レベルで検討し、疼痛に関連する特徴的な回路活動の変化を抽出する。さらに、2.その回路活動を人為的に模倣もしくは抑制することで慢性疼痛の疼痛行動やそれに伴う不安様行動・嫌悪反応への影響を評価する。これにより神経活動と疼痛関連行動を結びつけ、慢性疼痛への治療効果の作用機序を神経回路レベルで明らかにするとともに、色光線療法による疼痛関連回路再編成を目指す。
慢性疼痛治療における色光線療法の作用機序を末梢入力から中枢神経に至るマクロな神経回路と領域内でのミクロの神経回路の変化をとらえ、色光線療法の治療効果の作用機序を明らかにする。本年度は下記の項目に対して実験を行った。緑色光による治療効果を検証するため坐骨神経部分結紮モデル(疼痛モデル)を用いて行った。疼痛モデルに対し機械刺激や温度刺激で触覚閾値の評価を行いながら、色光線療法の治療を開始した。緑・赤のLEDを用いて一定の光量で特定の色を12時間の暗明サイクルで7日間、ケージ全体を照射し飼育を行った。疼痛行動を示すマウスを用いて条件づけ場所嫌悪性試験などにより不安様行動と痛みによる不快情動を色光線療法前後で評価し、色光線療法による情動行動への影響を検出した。その結果特定の色の照射で疼痛緩和効果をみとめ、その効果は一定期間維持されていた。また色光線療法の経路を検索するため、前帯状回への投射の差を逆行性ウイルス(AAV2-retro)を前帯状回に投与し、皮質下領域からの入力経路を特定した。一次体性感覚野にAAV1-CAG-flex-tdTomatoを投与し、高次視覚野V2MにAAV1-CAG-flex-EGPFを投与することで投射元からの軸索が前帯状回まで投射していることを確認した。慢性疼痛に関連のある領域で一次体性感覚野での神経活動を評価したが、自発活動では色光線療法後では明らかな活動変化は認めなかった。今後、特定の色照射中の神経活動を評価し、色光線療法での神経活動変化を抽出予定である。
3: やや遅れている
当初目的としていた前帯状回での生体カルシウムイメージングの確立に時間がかかっている。現在カルシウム活動を捉えることが可能となったため、今後評価していく予定である。
前帯状回の生体イメージング法について確立したため、前帯状回・一次体性感覚野での神経活動を可視化し、それぞれの色の照射での活動変化を抽出する。さらにアストロサイトの活動を同領域でとらえることでグリア細胞の関与を明らかにしていく。行動においては機械的刺激のみならず温度刺激による痛みの評価を追加していく。さらに不安様行動と痛みによる不快情動も色光線療法中と光線療法後での評価も追加し、色光線療法の多面的効果を明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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https://www.med.nagoya-u.ac.jp/cel-bio/achievement/index.html