研究課題/領域番号 |
23K06834
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高鶴 裕介 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (30446265)
|
研究分担者 |
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (90235680)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 周産期ストレス / 母性行動 / プロラクチン / 知覚異常 / グルタミン酸 / ドパミン |
研究開始時の研究の概要 |
周産期にストレスを与えたマウス(母仔乖離マウス)が成獣になった際、25%で育仔放棄をする。このメカニズムを明らかにすることで、ヒトにおける幼児虐待被害者で見られる様々な精神科的疾患や自分の子供を虐待してしまう症状の治療を目指す。この時、母仔乖離マウスでは授乳期のプロラクチン濃度が上昇していることが分かっているため、プロラクチンが脳に及ぼす影響に着目して研究を進める。プロラクチンは臨床現場で測定していることから、本研究成果がすぐに医療現場で応用できることが期待できる。
|
研究実績の概要 |
周産期ストレスモデルの一つである母子乖離(maternal deprivation; MD)マウスは一部の個体が育仔放棄をすることがこれまでの研究で分かっており、その行動異常は生き残った仔にも引き継がれることが分かっている。また、授乳中のMDマウスでは血中プロラクチン濃度が上昇していることが分かった。また、仔世代の知覚過敏症が授乳期のプロラクチン濃度に依存して増悪することも示唆されており、授乳中の2日目から14日目にプロラクチンを皮下注射すると仔マウスに知覚過敏が生じることも分かった。これらのことから、母性行動の異常に、プロラクチンの関与および知覚過敏症の影響があることが示唆されている。 本研究では、MDマウスにみられる育仔放棄のメカニズムを解明するため、脳内の責任領域の確定及びプロラクチンの寄与について明らかにする計画である。この研究の成果により、臨床的に実用されているバイオマーカーであるプロラクチンのヒトにおける育児放棄症例のスクリーニング及び治療法の開拓につながると期待している。 今年度はまず、脳内の責任領域を同定するため、MDマウスを作成(生後2日目から14日目まで、1日3時間、母仔を乖離する)し、メスのMDマウスが成獣になるまで飼育したのち、対照群オスと交配させ、妊娠MDマウスを作成した。これまでの研究からMDマウスは出産直後から育仔放棄をする個体がみられるため、生後1日~3日目の段階で母マウスの脳を還流固定後に取り出した。生後1~3日目における育仔放棄率はおおよそ先行研究と同程度であった。 現在、先行研究との比較を行うため、これまでと同様の方法(バイオ病理研究所(株)への業務委託)で固定した脳標本の4領域のcFos活性を検証することを計画している。これまでに、標本の切り出しおよび染色を行っており、次年度初頭に標本観察を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MDマウスの作成に当たり、第1グループで予期せぬ食殺やメス個体の割合が低いことがあり、十分なメスMDマウスの確保ができず、実験予定頭数(5匹~7匹)が得られなかった。このことから、第2グループのMDマウスの作成を行う必要が出た。このため、当初予定よりおよそ5か月遅延した(対照群との比較のため購入した9週齢マウスを1週間順化させたのち、オスマウスと交配。およそ3週間後に出産に至り、MD操作を加えつつ出産からおよそ3週目で離乳。10週齢まで飼育したのち、オスマウスと交配させ、およお3週間後に出産に至った個体を還流固定する)。このため、今年度中に行う予定であった分子生物学的解析が行えていない。 進捗状況を改善させるため、次年度は分子生物学的解析とプロラクチン投与実験を同時進行で行う計画である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、今年度作成した標本から同定された責任領域における分子生物学的解析を進めるとともに、プロラクチン濃度と知覚閾値、仔育て行動との関連及び責任脳領域における分子生物学的変化を検証する。前者は令和5年度の残りの研究であるが、後者は令和6年度から7年度にかけて実施する予定であったため、全体の進捗としては大幅な遅れとはならない。また、分子生物学的解析については必要に応じて業務委託による網羅的解析の導入も検討する。
|