研究課題/領域番号 |
23K06845
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中島 忠 群馬大学, 医学部, 客員准教授 (40510574)
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研究分担者 |
金古 善明 群馬大学, 医学部, 客員教授 (60302478)
田村 峻太郎 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20866579)
川端 麗香 群馬大学, 未来先端研究機構, 講師 (90721928)
宮城島 孝昭 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40625365)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 遺伝性不整脈症候群 / 遺伝性QT延長症候群 / 失神 / 癲癇 / KCNQ1 / 変異 / 電位センサー / てんかん / 次世代シークエンス / イオンチャネル |
研究開始時の研究の概要 |
若年者が意識消失を伴う痙攣発作を呈した場合「てんかん」と診断されることが多いが、その中には真の「てんかん」以外に、遺伝性不整脈症候群(IAS)の心イベントでありながら「てんかん」と誤診されていることや、真の「てんかん」にIASを合併していることもある。 IASの心イベントでありながらその診断に至らなかった場合、突然死リスクを上昇させ得ることから、IASを見逃さないための簡易な診断法の確立が望まれる。 そこで、臨床データの詳細な解析及びIAS関連遺伝子の網羅的解析により簡易な診断法を確立し、さらに、同定した変異の機能解析により複雑な病態を解明し遺伝子変異特異的治療を確立すべく研究を計画した。
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研究実績の概要 |
我々は、失神歴があり癲癇と診断されていた遺伝性不整脈症候群症例を集積中に、遺伝性QT延長症候群(LQTS)と癲癇性脳波を合併する母娘に遭遇した。娘(13歳)は1回の失神歴があり、母は幼少期に複数回の失神歴があり癲癇と診断されていた。パネル解析の結果、母娘ともにKCNQ1 Q234K変異を同定した。 KCNQ1 Segment 4 (S4)は陽性荷電のアミノ酸の繰り返し構造からなり、チャネルの電位センサーとして機能するが、他の電位依存性カリウムチャネルとは異なり、繰り返し構造の3番目のアミノ酸は陽性荷電ではなく無荷電のグルタミン(Q3)である。Q234K変異は、Q3が陽性荷電のリジン(K)に置換されており、チャネルの電位依存性に変化をきたすことが予想された。 そこで、KCNQ1はKCNE1と会合し遅延整流カリウム電流の遅い成分(IKs)を構成するため、野生型KCNQ1あるいは変異KCNQ1をKCNE1とtsA201細胞に共発現させ(野生型+E1、変異+E1)、パッチクランプ法にて機能解析を行った。その結果、8秒の長い脱分極パルスでは、変異+E1の電流密度は野生型+E1と比べ有意に大きかった(野生型+E1: 701±59pA/pF、変異+E1: 912±50pA/pF、P<0.01)。しかし、変異+E1は野生型+E1と比べ活性化速度は著明に遅延しており、0.4秒の短い脱分極パルスでは、電流密度は野生型+E1と比べ有意に小さく(野生型+E1: 392±42pA/pF、変異+E1: 143±12pA/pF、P<0.01)、IKsの機能減弱によりLQTSをきたすと考えられた。 KCNQ1、KCNE1ともに心臓だけではなく脳にも発現しており、また、KCNQ1 Q234KはIKsの特異な機能異常をきたすことから、心チャネル病(LQTS)に加え、脳チャネル病(癲癇)もきたす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LQTSと癲癇/癲癇様脳波を認めた母娘で同定されたKCNQ1 Q234K変異の機能解析に時間を要しました。そのため、新規に集積した症例の遺伝子解析は予定よりやや遅延しております。
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今後の研究の推進方策 |
KCNQ1 Q234K変異キャリアの症例をさらに集積し、本変異と心脳チャネル病との関連を明らかにする。 また、遺伝性不整脈症候群で遺伝子変異が同定されている患者において、癲癇と診断あるいは誤診された症例の集積を継続し、遺伝子解析を施行する。 不整脈専門医と癲癇専門医で、症例の臨床経過、検査所見(心電図、脳波など)を詳細に調べ、真の癲癇か、あるいは、癲癇と誤診されていたかどうか判断する。真の癲癇と判断された症例においては、同定された遺伝子変異の機能解析を行い、特異な機能異常をきたすかどうか明らかにする。 一方、癲癇と誤診されていたと判断された症例においては、癲癇と誤診された原因を明らかにする。現在、遺伝子型が同定された80数例のLQTSにおいて、癲癇と誤診された因子として、意識消失に加え痙攣が目撃されたこと、KCNH2遺伝子変異を有すること、QTcが正常域であったことなどが候補として同定されているが、さらに症例を集積し明らかにする。
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