研究課題/領域番号 |
23K06918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
船上 仁範 近畿大学, 薬学部, 准教授 (70449833)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 非天然型アミノ酸 / イソバリン / 鎮痛薬 / 痛覚閾値 / 慢性疼痛 / 慢性ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
慢性疼痛は,痛みそのものがストレスとなり痛みを増悪させるだけでなくうつ病を併発させるなど,多くの原因が複雑に絡み合って発症している。しかし,慢性疼痛を発症させる詳細な分子メカニズムは不明であり,既存の鎮痛薬も効果が乏しく,治療が困難となっている。そこで本研究では,ストレスと痛みに共通する情動系神経回路に着目して,慢性ストレスが慢性疼痛の発症にどのように影響しているのかを明らかにする。また,近年,鎮痛効果が示されている非天然型アミノ酸であるイソバリンが慢性疼痛の新たな治療薬になり得るかを検討する。
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研究実績の概要 |
慢性疼痛は痛みの感覚的な情報にとどまらず,痛みそのものが不安や恐怖という不快な情動の生成を伴うことでストレスとなり,痛みを増悪させる悪循環を招くだけでなく,うつ病といった精神症状を併発させるなど,多くの原因が複雑に絡み合って発症している。しかし,これらの因子がどのように慢性疼痛を生じさせるのか詳細な分子メカニズムは不明である。そこで初年度は,慢性ストレスによりうつ及び不安様行動ならびに痛覚過敏を示すSARTストレスマウスにホルマリン試験を行い,ストレスと痛みに関与する脳領域の神経活動について検討した。また,近年,鎮痛効果が示されてい る非天然型アミノ酸であるイソバリンの鎮痛作用の特徴を正常マウスを用いて検討した。 SARTストレスは室温24°C・庫内温度4°Cの動物飼育チャンバーに,マウスを毎日9時から16時までの間は1時間ごとに両ケージ間に移し替え,16時から翌朝9時まで は4°Cのチャンバー内で飼育する環境温度ストレスに7日間曝した。 SARTストレスマウスにホルマリン試験を行い,その後,脳標本を作成して神経活動の指標となるc-Fosの組織免疫染色行ったところ,ストレスや痛みの情動的側面に寄与する海馬や扁桃体へ投射する前辺縁皮質(PL),下辺縁皮質(IL),視床下部室傍核(PVN)および中脳水道周囲灰白質(PAG)の4領域に神経活動の低下が認められた。 また,正常マウスへの圧および熱刺激試験においてイソバリンの鎮痛効果が認められた。さらにホルマリン試験ではイソバリンの前処置により炎症性疼痛は抑制されたが,炎症により惹起する腫脹については改善されず,炎症による痛みのみを抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したとおり,R5年度の研究目的は「ストレスと痛みにおける中枢神経回路の神経活動の評価」と「非天然型アミノ酸イソバリンの鎮痛作用の特徴」を検討することであった. 検討すべき項目に対する成果はすべて得られており,R5年度の目的はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の基礎実験として用いた圧および熱刺激試験により,非天然型アミノ酸であるイソバリンが痛覚閾値を上昇させることを確認した。また,炎症性疼痛を引き起こすホルマリン試験においては炎症による腫脹の改善に改善は認められないものの,非ステロイド性抗炎症薬と同等の鎮痛効果を持つことを見い出した。R6年度はこの鎮痛効果について,現在臨床に用いれれている作用機序の異なる鎮痛薬とイソバリンを比較してその鎮痛メカニズムの詳細を検討する。 これらの研究について,得られた結果をとりまとめ,研究成果の発表並びに論文投稿を行う。
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