研究課題/領域番号 |
23K06945
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤井 敬之 九州大学, 医学研究院, 助教 (30822481)
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研究分担者 |
松本 省二 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00570772)
山崎 亮 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
渡邉 充 九州大学, 大学病院, 助教 (30748009)
磯部 紀子 九州大学, 医学研究院, 教授 (60452752)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 自己抗体 / 免疫治療 |
研究開始時の研究の概要 |
末梢神経障害による末梢性神経障害性疼痛(peripheral NP: PNP)では、近年、原因の一つとして痛覚伝導路に直接作用する自己抗体の関与が明らかとなり、免疫治療による疼痛の改善が報告されている。一方、脳卒中や多発性硬化症でみられる中枢性神経障害性疼痛(central NP: CNP)では、疼痛関連自己抗体の関与は検証されていない。本研究では、CNP患者を対象とし、既知の疼痛関連自己抗体の測定に加え、未知の自己抗体の探索を行い、自己抗体介在性CNPの存在を明らかにする。そして、受動免疫モデル動物の作成を通して、その病態機序を解明する。これにより、CNPにおける新規疼痛コントロール療法の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、抗Annexin A2(ANXA2)抗体に着目して研究を進めた。神経障害性疼痛患者群37名と非神経障害性疼痛群82名(神経障害性疼痛を有しない神経疾患患者32名と健常人50名)を対象に、血清中の抗ANXA2抗体を酵素結合免疫吸着測定法で測定したところ、神経障害性疼痛患者群37名中4名(10.8%)で陽性であり、一方、非神経障害性疼痛患者群では82名中1名(1.2%)であったことから、神経障害性疼痛患者群で有意に抗ANXA2抗体の保有率が高かった(p < 0.05)。また、血清中の抗ANXA2抗体陽性患者の80%がIgG1優位であり、80%の患者で髄液中に抗ANXA2抗体を認めた。さらに、全ての抗ANXA2抗体陽性患者において、血清IgGがANXA2陽性後根神経節ニューロンに結合し、リコンビナントANXA2を血清と前吸着することで、その結合が阻害されることを確認した。また、ヒト後根神経節組織では、ANXA2が後根神経節ニューロンの細胞膜、サテライトグリア細胞、血管内皮細胞に発現していることを確認し、血清中の抗ANXA2抗体はヒトにおいてこれらの細胞に結合して、疼痛の発症や維持に関与している可能性が示唆された。血清抗ANXA2抗体陽性患者は全て男性で、80%で再発性の経過を示し、60%で免疫治療による神経障害性疼痛の改善を認めた。また治療前後で抗体価を評価しえた症例では、免疫治療により神経障害性疼痛の改善と抗ANXA2抗体の抗体価の低下を認めたが、その後神経障害性疼痛の増悪が起こった際には抗ANXA2抗体の抗体価が上昇しており、抗ANXA2抗体の抗体価が病勢を反映する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の学術的問いであった「疼痛関連自己抗体の臨床的特徴の解明」と「疼痛関連自己抗体が生体内で病原性を有しているか」については、臨床研究を通して、解明することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、脳卒中患者を対象とした抗ANXA2抗体の測定を行い、臨床的特徴を明らかにしていく予定である。さらに、抗ANXA2抗体をマウス神経細胞やグリア細胞に作用させ、細胞レベルでどのような変化を誘導するかの解析を進めていく予定としている。
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