研究課題
基盤研究(C)
神経炎症はグリア細胞活性化によるグリア炎症であり、α-シヌクレイノパチーなど様々な神経変性疾患の病態進展で重要な役割を果たしている。このグリア細胞の活性化は発症前や発症早期から認められていることから病因の本質に関与していることが考えられる。神経変性疾患の共通病理所見として、病変部位に活性化されたミクログリアやアストロサイトの集蔟、反応性アストロサイトの増生とともにグリオーシスをきたしMAO-Bが増加する。本研究の目的は、MAO-Bに選択的に結合するSMBT-1を用いたPETによるα-シヌクレイノパチーの疾患鑑別や病期指標、治療効果判定、発症前診断への応用の可能性について明らかにすることである。
パーキンソン病、多系統萎縮症、レビー小体型認知症などα-シヌクレイノパチーの神経変性過程では、脳内においてグリオーシスが生じモノアミン酸化酵素Bが増加することが知られている。モノアミン酸化酵素Bの増加は各疾患の病変部位と一致することから、モノアミン酸化酵素Bの分布を把握することは病態を理解する上でとても重要である。本研究では、鑑別の困難さを伴うことがあるパーキンソン病、多系統萎縮症、レビー小体型認知症のモノアミン酸化酵素B分布を[18F]SMBT-1 PETを用いて評価し、[18F]SMBT-1 PETがこれら疾患の鑑別に有用であるかを検討することを目的にしている。さらに各疾患の臨床症状と[18F]SMBT-1集積量との関係を横断的に明らかにするとともに、各疾患における経時的変化を縦断的に明らかにする。本研究は令和5年度から令和7年度までの3年計画を予定している。今までに多数のパーキンソン病患者のリクルート、同意取得ができている。今年度においては、パーキンソン病患者9名において、運動・認知機能検査、脳MRI検査、[18F]SMBT-1 PET検査を施行した。パーキンソン病において、視覚的に中脳での[18F]SMBT-1集積亢進がみられた。しかしながら、COVID-19による影響もあり多系統萎縮症、レビー小体型認知症のリクルートに遅れが生じている。今後、研究実施計画書に従って多系統萎縮症、レビー小体型認知症においても 運動・認知機能検査、脳MRI検査、[18F]SMBT-1 PET検査を順次施行し画像データを収集解析する予定である。
3: やや遅れている
研究対象であるパーキンソン病患者の各種の運動・認知機能評価、脳MRI検査、[18F]SMBT-1 PET撮影まで順調に遂行できているが、COVID-19による影響のために多系統萎縮症やレビー小体型認知症患者のリクルートに遅れが生じている。今後、早急にリクルートを行い、円滑に多系統萎縮症やレビー小体型認知症においても各種の運動・認知機能評価、脳MRI検査、[18F]SMBT-1 PET検査を施行して画像データを収集解析する予定である。
引き続き既に同意取得できているパーキンソン病患者に各種評価、脳MRI検査、[18F]SMBT-1 PET検査を順次施行する。多系統萎縮症やレビー小体型認知症においては、早急にリクルートを行い、[18F]SMBT-1 PET検査を施行しデータ収集・解析を行う予定である。正常健常者と比較し各疾患の病変部位に一致してモノアミン酸化酵素Bが集積していることを[18F]SMBT-1 PETを用いて確認することにより、[18F]SMBT-1 PETがα-シヌクレイノパチーにおいてモノアミン酸化酵素Bの可視化・画像化可能であることを明らかにする。α-シヌクレイノパチーの鑑別における [18F]SMBT-1 PETの有用性についても検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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