研究課題/領域番号 |
23K07008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
廣澤 徹 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (80645127)
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研究分担者 |
坪本 真 金沢大学, 附属病院, 助教 (40835906)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 脳磁図 / 経頭蓋直流電気刺激 / グラフ理論 / MEG |
研究開始時の研究の概要 |
24人の健常成人男性を公募し(被験者特性を均一にするために性別を限 定する)、ランダム化プラセボ(シャム刺激)対照クロスオーバーデザインで DLPFC への tDCS の効果を検証する。tDCS の前後で、40Hz 聴性定常反応(ASSR)を利用して脳磁図 (MEG)で NMDA-GABA 神経回路が作る脳内ネットワークを可視化する。ネットワーク理論を 使って tDCS 前後のネットワークの変化を解析し、心理検査で評価した各種認知機能の変化 との相関も解析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、健康成人男性を対象に、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が脳に与える影響を評価した。この研究の主目的は、グラフ理論を用いて40 Hzの聴覚定常状態応答(ASSR)の脳ネットワークに対するtDCSの効果を評価することであった。第二の目的は、40 Hz ASSRの脳ネットワークを効果的に調整できる集団を特定することであった。方法として、ランダム化シャム対照、二重盲検クロスオーバー方式を採用し、25名の成人男性(20~24歳)が参加した。参加者は少なくとも1ヶ月間隔を置いて2回のセッションを完了し、各セッションで側頭葉前頭皮質に陰極またはシャムtDCSを施行後、40 Hz ASSRをMEGで測定した。信号源はDesikanKilliany脳地図にマッピングされ、局所活動間の統計的関連は偏りのない加重位相遅れ指数(dbWPLI)によって評価された。tDCSおよびシャム条件に基づいて、dbWPLIで構築された加重かつ無向のグラフを用いて、加重特性経路長とクラスタリング係数を測定し、混合線形モデルを使用して比較した。結果として、tDCS刺激後の特性経路長はシャム刺激後よりも有意に低下し(p = 0.04)、tDCS後の全脳ネットワークの40 Hz ASSRは顕著な機能的統合を示すことが示された。単純線形回帰では、ベースラインでの高い特性経路長が、tDCS後の特性経路長の大きな低下と関連していた。したがって、40 Hz ASSRのネットワークが機能的に統合されていない人々に対して、tDCSの効果は顕著に期待された。議論において、健康な脳は機能的に統合されていることを考慮すると、tDCSは機能的統合を強化するよりも、機能的に統合されていない脳ネットワークを効果的に正常化する可能性があると結論付けた。本研究の結果は「Frontiers in Psychiatry」に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究プロジェクトは、計画を大幅に上回る速度で進行した。プロジェクトの主要な目標は、健康成人男性を対象に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が40 Hzの聴覚定常状態応答(ASSR)の脳ネットワークに与える影響を評価することだった。研究の初期段階で、被験者の募集と選定を迅速に行い、二重盲検クロスオーバーデザインのもとでの実験を計画通りに完遂した。これにより、データの収集と初期の分析が予定より早く進行し、効率的に進めることが可能となった。研究の実験段階では、特定された被験者群に対してtDCSおよびシャム刺激を施し、その前後でMEGを用いてASSRを測定した。これにより収集されたデータは、DesikanKilliany脳地図に基づいて解析され、偏りのない加重位相遅れ指数(dbWPLI)を用いて統計的関係が評価された。その結果、tDCS後の特性経路長が有意に低下することが確認され、脳ネットワークの機能的統合が顕著に改善されることが示された。研究成果は、データ解析後すぐに「Frontiers in Psychiatry」に論文としてまとめられ、投稿された。幸いにも査読プロセスを迅速に通過し、出版されることとなりました。これにより、計画の進行状況としては当初の目標を超え、予定より早く主要なマイルストーンを達成した。現在、得られた知見を基に、さらなる研究の拡張と詳細な分析を行っており、次の段階としての展開も視野に入れている。
この迅速な進捗は、チームの効率的な作業と高い協調性、そして計画的なリソース管理によるものです。今後もこの勢いを保ちながら、更なる研究成果の創出を目指して参ります。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトにおいて得られた成果は、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が健康成人男性の脳ネットワーク、特に40 Hzの聴覚定常状態応答(ASSR)に与える影響を明らかにした。これらの成果をさらに発展させるために、次の段階として学術集会での発表を計画している。これにより、広範な研究コミュニティとの知見共有及びフィードバックを得ることが可能となり、今後の研究方向性の洗練に寄与すると考えている。また、本研究成果の応用可能性として、GABA神経系の異常が示唆されている自閉スペクトラム症(ASD)に焦点を当てた新たな研究を提案する。ASD患者における40 Hz ASSRの解析を通じて、その診断支援ツールとしての潜在的な価値を探ることが、次なる重要なステップとなる。具体的には、手元にあるASD患者及び健常コントロール群の小児から得られたMEGデータを用いて、40 Hz ASSRの特性を比較解析します。この分析から、ASDの診断プロセスにおける新しいバイオマーカーの開発に貢献できるかどうかを評価することを目指す。この新たな研究方向は、既存の知識と技術を活用しながら、より広範な臨床応用につながる基礎データを集めることにも繋がる。また、将来的には、tDCSを用いた介入がASD患者の脳機能に及ぼす効果についても検討を加え、治療法の開発に寄与する可能性も探りたい。
研究の推進にあたり、国内外の研究機関との連携を模索し、共同研究の枠組みを構築することも計画しています。これにより、技術的な支援や異なる研究視点を取り入れることが可能となり、研究の質のさらなる向上が期待されます。
今後も、この研究を基に、科学的な探求とともに社会的な貢献を目指して参ります。
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