研究課題/領域番号 |
23K07011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田中 稔久 三重大学, 医学部, 寄附講座教授 (10294068)
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研究分担者 |
福森 亮雄 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (00788185)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー / タウ |
研究開始時の研究の概要 |
認知症の病態メカニズムにおいては特定の蛋白質が異常重合蓄積することが知られているが、同一蛋白が蓄積する疾患であっても、その超微形態は疾患ごとに異なるものであることがクライオ電顕により明らかにされている。そこで、photoaffinity法を用いて人工的に単一の重合蛋白分子モデルを作成することを発案した。このphotoaffinity法とは、蛋白の特定の部位に変異アミノ酸を遺伝子工学的に組み込み、紫外線照射により蛋白分子間をクロスリンクさせる方法である。本研究では単一形態の蛋白重合モデルを作成し、これを用いて重合形態特異的な抗体作成、重合阻害物質の探索を行う基盤を作ることとする。
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研究実績の概要 |
クライオ電顕により明らかにされたタウ重合体の基本構造は、まず2つのタウ分子が2量体を形成し、その2量体が形成する平面とは垂直方向に重層的にこれらが重なっていくものであった。そこで、各タウオパチー性疾患に見いだされるタウ2量体を個別に作成するために、フォトクロスリンク法を用いて人工的に単一重合タウ分子モデルを作成することを試みた。Pick病脳にあるPick wide filamentを構成する2量体の接合面に位置する322Cys、323Gly、324Ser部位、およびアルツハイマー病脳にあるPaired Helical Filament (PHF)を構成する2量体の接合面に位置する332Pro、333Gly、334Gly、335Gly、336Gln部位に光反応性アミノ酸であるpara‐Benzoyl‐L‐phenylalanine (pBpa)を挿入するためのタウ遺伝子コンストラクトを作成し、リコンビナントタウ蛋白を作成した。そして、紫外線照射により分子間クロスリンク(架橋)を誘導し、タウ蛋白の重合体形成への影響を見る実験を行った。重合過程のモニタリングとしては、電気泳動を行い泳動後のゲルに銀染色を行って、重合したタウを示すバンドを視覚化した。結果としては、野生型タウおよび変異型タウの両者において37℃加温振とうを継続することによって高分子量タウを示すバンドが視認され、すなわち重合体形成が確認されたが、324Ser部位においてフォトクロスリンクを導入したタウ蛋白は野生型タウ蛋白に比較して重合過程が加速化していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リコンビナントタウ蛋白を作成するにあたって、翻訳効率を改善するために441アミノ酸に翻訳される全長型ヒトタウ遺伝子を大腸発現に適した配列に改変した(コドン最適化法)。さらにその3’末端側にHisタグ配列を接合したものをベクターpPAL7(Bio-Rad)のマルチクローニングサイトに挿入した。大腸菌に関しては、アンバーコドン(UAG)は通常は終始コドンであるが、このコドンに対応してpBpaを翻訳時に組み込むことのできる特殊トランスファーRNAを蛋白産生用の大腸菌に導入したもの(Orip-Sup)を用いた。Pick wide filament の構造から332-336番目と、PHFの構造からタウの332-336番目の各アミノ酸部位に対して変異を導入することにし、部位特異的変異導入法(Site Directed Mutagenesis)に従ってプライマーを設計し、PCRを用いて変異を導入した。そして、形質転換により変異タウ遺伝子コンストラクトを大腸菌(Orip-Sup)に組み込んで、蛋白を産生させた、そして、Hisタグアフィニティカラムおよび陽イオン交換カラムを用いて、変異タウ蛋白を精製した。作成した変異タウ蛋白および野生型タウ蛋白を希釈し0.5mg/mlにそろえ、37℃にて加温振とう(overnight)してタウ線維形成の基礎となるコンフォーメーションを誘導し、氷上に配置し紫外線(波長365nm)を30分間照射した。その後37℃にて加温振とうを6日間継続し、サンプルをSDS-PAGEにて電気泳動したあと銀染色によって重合体形成を確認した。野生型タウと324Ser変異型タウの比較では、変異型において重合体の形成の加速が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではPick wide filamentの2量体形成接合面に位置する324Ser部位のみにおいての2量体の形成、重合過程の促進が確認されている。そこで、他の部位においても2量体形成、重合過程の加速が認められるかどうかに関して、十分量の変異タウ蛋白を作成のうえで確認を行う。併せて、チオフラビンTによる蛍光アッセイによって重合の過程を定量化して、アミノ酸部位間において比較検討を行う。また、タウ蛋白の重合が示唆されているサンプルにおいては、ネガティブ染色により電子顕微鏡による観察を行い線維形成を確認する。そして、線維掲形成が確認されたサンプルに対しては、クライオ電顕によってその形態を確認する。超微形態が確認されたサンプルに関しては、それに対する特異抗体等を作成し、疾患の鑑別、治療に応用することにする。
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