研究課題/領域番号 |
23K07041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山口 泰成 和歌山県立医科大学, 医学部, 客員研究員 (00769193)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 統合失調症 / バイオマーカー / 認知機能障害 / 前頭前野 |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症では作業記憶の低下などの認知機能障害が中核とされている。NPTX2(neuronal pentraxin 2)は興奮性と抑制性ニューロンの間のシナプス機能を規定しており、認知機能障害の神経基盤に重要な分子であることが想定されている。本研究では、死後脳組織を用いて統合失調症の背外側前頭前野におけるNPTX2の標的microRNA発現の評価を行ない、新規治療法の開発につなげる。統合失調症患者の神経心理学的評価と末梢血を用いたエクソソーム内の標的microRNAの発現解析を行ない、当該疾患の認知機能障害に関わるバイオマーカーの開発につなげる。
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研究実績の概要 |
本年度は、対照者、統合失調症患者の各40名(計80名)の背外側前頭前野(DLPFC)よりRNAを抽出し、錐体ニューロンの神経終末と抑制性のパルブアルブミン陽性介在ニューロンを結ぶシナプスで、AMPA受容体を介した神経伝達を調節し、神経可塑性すなわち興奮性と抑制性神経伝達の均衡を保つのに重要な役割を果たすNPTX2および、NPTX2の前駆体であるPreNPTX2について、real-time PCRを用いmRNAレベルで定量した。 定量データについては、診断を主要因として、性別、年齢、死後経過時間、RNAの品質の指標であるRNA integrity number (RIN)、脳組織の質の全般的指標であるpH、そして組織の冷凍保存期間を共変数とする共分散分析により解析した。その結果、NPTX2については統合失調症患者では平均値して21%程度、統計学的に有意に発現量が低下しており、既報を再現することができた。さらにPreNPTX2の発現については、平均値にして3%程度、発現量が微増している結果にとどまり、疾患での有意な変化は認めなかった。 NPTX2の発現が低下している一方で、その前駆体であるpreNPTX2の発現が低下していない結果から、NPTX2の統合失調症による発現低下については、microRNA制御などの翻訳後修飾が関与している可能性が示唆された。現在、統合失調症のDLPFCでNPTX2を標的とするmicroRNAの発現解析を行なっているが、現在発現が十分に確認できておらず、各種検討を行なっているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初計画していた。統合失調症のDLPFCに発現する標的microRNAの発現解析が、行なえなかった。各種検討を重ねているところである。サンプルの再回収も考慮しているが、コロナ禍も重なり海外出張が困難であり、共同研究先でのmicroRNA発現解析に必要なDLPFC灰白質からの組織の準備ができなかった。現在、統合失調症患者および健常対照をリクルートし、神経心理学的検査の実施および血液サンプルを回収しているが、少数にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
同性で年齢が近い健常対照者、統合失調症患者をペアとして、20組を目標に、認知機能の評価を中心とする神経心理検査を実施し、定量化を進める。さらに末梢血よりエクソソームの分離を進め、microRNA発現解析の予備的検証を行なう。死後脳解析においては、microRNA発現が検証を進めても確認できない場合は、共同研究先のピッツバーグ大学に出張し、DLPFC灰白質組織を切り出し、microRNA発現を行なえるに十分量の組織攪拌液を作成し、これらの領域において標的microRNAの発現解析を行なう。発現量について健常との統合失調症との比較や、NPTX2遺伝子発現との相関などを確認する。
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