研究課題/領域番号 |
23K07060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂田 洞察 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10709562)
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研究分担者 |
平山 亮一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 研究統括 (90435701)
皆巳 和賢 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90634593)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | モンテカルロシミュレーション / DNA修復 / 細胞死 / 放射線生物学 / Geant4-DNA / 細胞致死 / 数理モデリング |
研究開始時の研究の概要 |
細胞が放射線に照射された際の生物学的な反応を包括的に記述する為、放射線照射時に誘 発される細胞の修復酵素/蛋白・DNA繊維再結合・細胞致死率を同時に予測可能な統合的放 射線生物応答モデルを開発する。研究代表者が先行研究で開発した放射線に誘発される DNA損傷予測が可能なシミュレーションアプリケーションと組み合わせる事で、放射線と DNAの第一原理的な相互作用計算から出発し、放射線に誘発される修復酵素/蛋白と細胞致死を予測できるプラットフォームを開発する。
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研究実績の概要 |
細胞が放射線に晒されると、放射線或いは放射線の水分解を介して生成されたラジカルによってDNA損傷が誘発される。DNA損傷が細胞内で生じると、修復酵素/蛋白が集積し、DNAが修復される。しかし、この修復プロセスで修復できず、DNA損傷が残存すると細胞死へと至る。本研究では、放射線に誘発されるDNA損傷が、修復酵素/蛋白の働きによってどのように修復され、どのように残存したDNA損傷が細胞死を誘発するかを記述する統合モデルの開発を行なっている。放射線や放射線誘発性ラジカルによるDNA損傷生成をシミュレーションできるアプリケーションと組み合わせる事で、放射線と物質の相互作用から出発し修復蛋白動力学を考慮した上で細胞死を予測できるプラットフォームを開発している。 本年は、既存のDNA損傷によってトリガーされる蛋白動力学を記述できるモデル(Belov et al 2015)を拡張して、放射線に誘発される細胞死を予測できる統合モデルを開発した。 蛋白動力学モデルによって修復酵素/蛋白集積の時間変化とDNA繊維の結合を計算した。このモデルにDNA修復に失敗し細胞死を誘発する確率を考慮することで、残存するDNA損傷が誘発する細胞死の確率を計算できる。この細胞致死確率を考慮した蛋白動力学モデルによって、修復蛋白、DNA修復動力学と共に、細胞致死率(生存率)を統合的に計算可能となった。本研究では、正常繊維芽細胞で測定された蛋白質集積、DNA結合、細胞死を再現するように萌出るパラメーターを決定した。現在、論文投稿に向け準備を行なっている。また、この統合モデルを放射線モンテカルロシミュレーションコードGeant4-DNAに実装する為準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蛋白動力学モデルを拡張した細胞死を予測できる統合モデルの開発において、モデルパラメーターを決定するために充実した実験データセットが必要であった。当初計画では、蛋白集積やDNA結合、細胞生存率まで多岐にわたるデータ測定を予定していた。しかし、正常繊維芽細胞においては、蛋白動力学が非常に類似しており、正常繊維芽細胞グループで同一のモデルパラメータを用いるだけで十分であり、細胞種ごとにデータ測定を取る必要性がなかった。このことにより、モデルパラメーターの決定には、DNA結合と細胞生存率のデータを揃えるのみで十分となった。そこで公開されている既存のヒトの正常繊維芽細胞NB1RGBのDNA結合・細胞生存率データを用いてモデルパラメーターの決定を試行したところ十分モデルパラメーターを決定でき、統合モデルの開発を行うことができた。従って、当初計画より早く進められており、極めて順調な進捗となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主にヒトの正常繊維芽細胞NB1RGBを用いて統合モデルを作成した。しかしDNA再結合に関するデータが少なく、広いLET範囲に適用できるか不明瞭である。従って、統合モデルの信頼性を高める為、DNA再結合に関して、データ測定を計画している。また、正常繊維芽細胞だけでなくHSG細胞などのがん細胞に適用可能な統合モデルが作れるか検討する。 正常繊維芽細胞向けの統合モデルはGeant4-DNAに実装し、世界に広く公開することを目指す。
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