研究課題/領域番号 |
23K07084
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
芳賀 昭弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30448021)
|
研究分担者 |
坂田 洞察 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10709562)
中川 恵一 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80188896)
生島 仁史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90202861)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | コンピュータビジョン / CT画像 / 人工知能 / 重粒子線治療 / フラグメンテーション / セグメンテーション / レディオミクス / 生成AI / Computer Vision / Computed Tomography / Monte Carlo Simulation / Human Phantom / Radiation Therapy |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,医療用CT撮影装置をコンピュータ上で完全に再現したコンピュータ・ビジョンを実現し,任意の人体ファントムに対する仮想CT画像を生成することで人体の詳細情報をラベル付けしたCT画像ビッグデータベースを作成,医療課題の克服や新たな装置開発に応用することである.本研究で開発する医療CVSによりディープラーニング用訓練データを人工的に作り出すことができ,それによって訓練されたモデルに実臨床CT画像を入力することで,臓器・元素・腫瘍情報といった臨床では得ることができなかった潜在情報を出力することができるようになる.
|
研究実績の概要 |
本研究では人体及び医療用CT撮影装置をコンピュータ上で完全に再現したMedical Computer Vision System(医療CVS)の開発を進め,がん放射線診断・がん放射線治療分野への臨床応用を目指す.医療CVSの開発により,人工知能(AI)の医療応用の共通課題であったデータ数の確保及び正解データ(真値)の不確かさといった困難を取り除くことができるだけでなく,これまでのCTでは自動的に得ることができない臓器・元素情報や悪性腫瘍の情報と紐付けされたCT画像を生成することが可能となる.医療CVSの応用として,重粒子線治療で生じる核破砕片(Fragment)の観測から線量分布を再現する革新的なFragment Emission Tomography (FET),CT撮影後に瞬時に臓器情報を割り当てるSegmentationソフトウェア,悪性腫瘍の鑑別診断ソフトウェア,及び生体用金属材料によって生じるCTアーチファクトの再現によるアーチファクト・リダクション法の開発を目指す. 2023年度には,これまで開発を進めてきたコーンビームCT(CBCT)を用いた高精度な元素推定法を確立し,実臨床データを含む検証結果をまとめて論文を公表した.同手法で得ることができる元素分布の情報は重粒子線治療の線量計算に応用できることから,ビーム照射で生じるFragment生成物の定量化について検討を開始した.また,歯科用CBCTの仮想化を実現し,歯の組織領域(真値)とその仮想CBCT画像のデータセットから歯のSegmentationモデルを学習した.同研究については現在論文を投稿中である.更に,臨床CT画像やMRI画像を用いたがん鑑別に関するレディオミクス研究についても研究が進んでおり,CT画像を用いた食道癌の予後に関する論文を公表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究(医療コンピュータビションの開発と臨床応用)の成否の鍵を握っているのは人体及びCT装置をコンピュータ上で再現するシステム開発であるが,ファンビーム型のCT装置及びコーンビーム型のCT装置ともに,2023年度の研究開発でメインフレームの完成に漕ぎ着けた.開発したシステムについて論文を出版しており,更にCT装置固有のX線スペクトルの推定方法など,その要素技術についての論文も現在投稿中であり,本研究の新規性及び今後の医学物理的研究の方向性の正しさについて自信を深める一定の成果を得たと考えている.また,医療コンピュータビションの臨床応用について歯科用コーンビームCTを用いた高精細人体モデルと仮想CBCT画像生成に基づく自動Segmentationモデルを実現できている.仮想CT画像を生成するための基盤を確立したことにより,生体用金属材料によって生じるCTアーチファクトの再現によるアーチファクト・リダクション法の開発など,臨床応用に関する今後の研究の進展に期待ができる環境が整った.上記は申請書で述べていた通りであり,そのため概ね順調に進展していると判定している.
|
今後の研究の推進方策 |
医療コンピュータビジョンの開発については概ね完成したと考えている.CT装置に備わるBow-tieフィルタやビーム・ハードニング補正等について本開発で派生した新しい研究を進めて論文にまとめることを予定している.また,人体ファントムについては人種や性別・年齢等を考慮し多様性を高めるモデル開発を進めるが,2024年度は特に歯科用の高精細人体ファントムについて,歯根モデルの確立に向けて精度を高める作業を実施する.臨床応用として掲げている重粒子線治療に対するFragment emission tomographyについて,医療コンピュータビジョンで開発されたCT画像から人体元素分布を推定するモデルを用いて重粒子線を照射した際に発生するFragmentのシミュレーションを実施する.ただし,現在の汎用モンテカルロ計算(Geant4)に搭載されているFragment生成シミュレーションの精度は低いため,この精度を高める量子分子動力学計算を新規に開発し,Geant4に実装する予定である.なお,部分的に改良されたモデルは2023年度に実装済みである.また,2024年度には放射線治療や歯科治療等で問題となるCT画像に現れる金属アーチファクトや,特に小児の歯科治療で問題となる撮影中の不慮の動きによるモーションアーチファクトを医療コンピュータビジョンで生成し,アーチファクトを取り除くアルゴリズムの開発に取り組む予定である.がん領域においては,実臨床のCT画像やMRI画像から治療効果等を判定するレディオミクス研究を実施する.2024年度では仮想CT装置は使用せず,実臨床画像に治療効果等の情報が含まれているかどうかのエビデンス蓄積を目指す.
|