研究課題/領域番号 |
23K07101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片桐 千秋 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (00443664)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 高気圧酸素療法 / 放射線 / スパイン |
研究開始時の研究の概要 |
脳腫瘍摘出後に行われる放射線療法は加療期間中の副作用として認知機能の低下を伴い、患者のQOLを著しく低下させる。申請者が行った動物モデルを用いた実験から健常マウス全脳への放射線照射により明らかに認知機能が低下した。放射線照射直前に高気圧酸素療法(HBO)を併用した群では大脳白質において神経保護効果を示し、行動解析により認知機能の回復を示した。HBOは放射線照射による白質の軸索縮小および成熟スパインの消失をどのような分子機序で抑制するのか、大脳白質の神経細胞および成熟スパイン形成に着目してHBOの放射線神経障害抑制機序を解明する。
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研究実績の概要 |
放射線治療は悪性度の高い脳腫瘍の摘出手術後に行われる標準治療であるが、加療期間中に認知機能の低下が副作用として伴うことがある。高気圧酸素療法を併用した脳腫瘍への放射線治療は臨床第2相試験により患者の予後を延長し、拡散テンソル画像解析から高気圧酸素を併用した治療患者群で白質神経細胞のFA値が上昇し、白質の統合性が改善されるなどの治療効果が得られている。動物モデルを用いた実験では10Gyの放射線照射により大脳白質の軸索縮小、成熟スパインの消失、海馬における神経新生の抑制、成熟スパインの消失を示した。申請者は放射線照射による大脳白質の軸索縮小および成熟スパイン形成の消失に着目し本年度は以下の実験を行なった。成熟スパイン消失のメカニズムを解明するため、RNA-seqおよび組織学的解析用に2Gy/dayで5日間、合計10Gy全脳に照射した健常マウス動物モデルを作成し、冷PBS環流後全脳を摘出しQIAGEN社の長期保存液で保存した。その一方で、組織学的にスパイン形成に関与するタンパク質群の動態を観察するために未処理マウスの全脳を用いて条件検討を行なった。全脳の透明化は改変CLARITY法を用いて透明化した。その後、スパイン形成に関与するタンパク質、アクチン重合促進タンパク質(ドレブリン)、裏打ちタンパク質(PST95)、アクチン繊維の抗体を用いて染色を試みたが、全脳では抗体液が浸透せず、ある程度の暑さに切断する必要性が求められた。ライトシート顕微鏡でスパインの形態を捕捉でき、脳切片の内部まで抗体が浸透する厚さおよび抗体の濃度の条件検討を行なった。スパインの3Dイメージング化を目標としているが現在のところかなり薄い切片でのみ観察できており、今後は観察できる範囲を広範囲にする条件検討を行い、大脳白質の各レイヤーにおける成熟スパインのへの高気圧酸素療法による保護作用の解析を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-seq解析をするための充分量のサンプルを作成終わって次年度は解析に集中できるため。組織学的解析についても条件検討を重ねスパインの動態観察を進められる段階に来ているため。
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今後の研究の推進方策 |
PAXgene組織固定液で保存した脳組織の白質部位からシングル核を抽出しシングルRNA解析を進める。遺伝子発現のパラメータからニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分画し、ニューロンのデータセットを得る。放射線照射単独群、高気圧酸素併用群、未処理群における遺伝子発現を比較する。得られたデータにおけるスパイン関連遺伝子の抗体を用いて免疫組織学的にスパインにおける分布を観察する。
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