研究課題/領域番号 |
23K07126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堤 香織 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (80344505)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ニューロピリン1 / 放射線抵抗性 / 神経膠芽腫 / 放射線感受性 / ニューロピリン / 悪性神経膠芽腫 / 放射線耐性 / 細胞死 |
研究開始時の研究の概要 |
膜貫通タンパク質ニューロピリン1(NRP1)は放射線抵抗性の腫瘍細胞で多く発現していることがわかっているが、放射線抵抗性との具体的な関係や関与経路については明らかとなっていない。本研究では、放射線抵抗性の高いヒト悪性神経膠芽腫由来細胞株T98G細胞内のニューロピリン1の遺伝子発現量をsiRNAによって抑制し、放射線感受性への影響やアポトーシス、細胞老化、細胞生存に関わる分子への影響を調査する。悪性神経膠芽腫の放射線抵抗性とニューロピリン1の関係を明らかにし、放射線抵抗性のメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ニューロピリン1の放射線抵抗性との関連性と、神経膠芽腫の放射線抵抗性獲得メカニズムを明らかにすることを目的とする。先行研究において放射線照射を生き残った腫瘍細胞株で共通してニューロピリン1遺伝子の発現増加を観察したことを踏まえ、ヒト神経膠芽腫由来細胞株T98Gに6 MV 10 GyのX線を照射し、生き残った細胞株群T98G-IRを樹立した。T98G-IRのニューロピリン1遺伝子発現量を親株と比較したところ、先行研究同様に発現の増加が認められた。T98G-IR の運動能をwound healing assayで観察したところ、Type-Iコラーゲンをコートしたディシュ上での運動能亢進が認められた。また、T98G-IRの10 Gy X線照射によるDNAの二本鎖切断数は、親株と比較して有意に増加した。次に、siRNAを用いてヒト神経膠芽腫細胞株T98G細胞内のニューロピリン1遺伝子の発現を抑制し、2 Gy 6MVのX線を照射した後の放射線感受性をコロニー形成法によって観察した。ニューロピリン1の発現抑制細胞では、コントロールと比較してX線照射後の細胞生存率が低下した。しかしながら、ニューロピリン1の発現抑制細胞では、PI3Kカスケード上流ならびに下流のPDGFRAとSOX-2の発現が僅かに増加することをリアルタイムPCRにより確認し、細胞生存率の低下と相反する結果となった。アポトーシスに関連するカスパーゼ3遺伝子、細胞周期関連遺伝子p21の発現は僅かに増加した。タンパクレベルでは、AKTの活性化、カスパーゼ3の活性化にコントロールと比較して有意な変化は観察されなかったが、p21の発現はニューロピリン1の発現抑制細胞で増加した。アネキシンVを用いたアポトーシス細胞の観察では、コントールとニューロピリン1の発現抑制細胞に有意な差異はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、ニューロピリン1の発現抑制が放射線感受性に及ぼす影響とMAPK経路への影響をタンパクレベルで観察する予定であったが、IR細胞の構築による先行研究との比較が行えたことやアポトーシスへの影響がみられなかったことにより、p21へフォーカスを移動した新たな方向へ研究を展開することができている。学会発表による研究成果の報告には至らなかった理由には、当初想定していた放射線感受性の向上とアポトーシス細胞の増加が観察されなかったことや生のシグナルと考えられるPDGFRAとSOX-2の遺伝子発現上昇により考察が困難に期したためである。その後、p21の発現増加観察されたことから、文献調査や細胞老化、オートファジー死、ネプロトーシスに関するアッセイ方法や予備実験にシフトし、ニューロピリン1がどのように神経膠芽腫由来細胞T98Gの放射線感受性を制御しているのか、そのメカニズム解明の方向性に焦点を絞りつつある。また令和5年度は、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の再現性の確認に慎重を期したため、cDNA調製やリアルタイムPCRの関連試薬に費用を要したこと、またウェスタンブロットに使用する抗体の購入に想定より費用を要したことで予算の前倒し請求を行った。途中フリーザーの故障により実験サンプルや研究試薬が常温に放置される事態となり、貴重な試薬やサンプルを失うトラブルもあったが、その後研究体制を立て直し予定以上に研究を進めることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、ニューロピリン1の発現抑制が放射線感受性に及ぼす影響とMAPK経路への影響をタンパクレベルで観察する予定であったが、IR細胞の構築による先行研究との比較が行えたことやアポトーシスへの影響がみられなかったことにより、p21へフォーカスを移動した新たな方向へ研究を展開することができている。学会発表による研究成果の報告には至らなかった理由には、当初想定していた放射線感受性の向上とアポトーシス細胞の増加が観察されなかったことや生のシグナルと考えられるPDGFRAとSOX-2の遺伝子発現上昇により考察が困難に期したためである。その後、p21の発現増加観察されたことから、文献調査や細胞老化、オートファジー死、ネプロトーシスに関するアッセイ方法や予備実験にシフトし、ニューロピリン1がどのように神経膠芽腫由来細胞T98Gの放射線感受性を制御しているのか、そのメカニズム解明の方向性に焦点を絞りつつある。また令和5年度は、リアルタイムPCRによる遺伝子発現の再現性の確認に慎重を期したため、cDNA調製やリアルタイムPCRの関連試薬に費用を要したこと、またウェスタンブロットに使用する抗体の購入に想定より費用を要したことで予算の前倒し請求を行った。途中フリーザーの故障により実験サンプルや研究試薬が常温に放置される事態となり、貴重な試薬やサンプルを失うトラブルもあったが、その後研究体制を立て直し予定以上に研究を進めることが出来ている。
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