研究課題/領域番号 |
23K07134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 憲政 広島大学, 技術センター, 技術主任 (70564136)
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研究分担者 |
岩田 哲郎 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (30771563)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 枯草菌ゲノムベクター / ゲノム再構築 / T 細胞受容体 / ゲノム編集 / ノックインマウス / 免疫系ヒト化マウス / T細胞受容体 / 枯草菌ベクター |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト免疫関連疾患で、特徴的なT細胞受容体 (TCR) パターンを示すT細胞が出現することが明らかにされつつある。本研究では、それらの病態機能解明に役立つ新たな免疫系ヒト化マウスを開発する。枯草菌ゲノムを利用したベクター技術とゲノム編集技術を融合し、ヒトTCRゲノムのKIマウスを作出する。各種疾患に関連したヒト主要組織適合抗原複合体のKIマウスも作出し、マウス体内にヒト型抗原認識系の完全構築を図る。ヒト疾病発症の起点となるT細胞の誕生から病態形成、TCRレパトア変化に至る過程を解析できることに加え、種々免疫関連疾患の病態解明に向けた研究基盤構築ならびに放射線科学の発展に貢献する。
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研究実績の概要 |
TCR ノックインマウスの作出のため、ヒト TCR 領域をカバーする BAC クローンを枯草菌ゲノムベクター上で逐次連結させ、ヒト TCR 遺伝子座の再構築をおこなった。α鎖ゲノム領域は約 500 kb 領域、β鎖ゲノム領域は約 290 kb の再構築まで達成した。さらに、枯草菌ベクターから TCR 断片を回収する方策を検討した。回収操作中における機械的ダメージを減らすため、枯草菌ゲノム分断法を利用する遺伝子カセットを構築した。再構築した約 360 kb のα鎖ゲノム断片を用いた予備実験において、インサート領域のみ枯草菌ゲノムから分断、回収する見込みがあることを確認した。 HLAノックイン(-KI)マウス作出については、i-GONAD 法により直接 HLA-cDNAを導入する効率は悪いことが明らかになった。i-GONAD法で導入する ssDNA のサイズを小さくして導入効率を上げるために、Recombinase-Mediated Cassette Exchange(RMCE)法を応用して、2段階でHLA-KIマウスを作成する方法に切り替えた。まず、異なるリコンビナーゼ認識配列をそれぞれマウスH2-AaおよびH2-Ab1遺伝子領域に導入するi-GONAD を行った。現在、1段階目の目的マウスであるリコンビナーゼ認識配列-KIマウスが作成できたか産仔に対してゲノム PCR、シークエンスにより確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α鎖ゲノム領域は、 BAC クローンの連結によってクラスターの上流側から約 500 kb 領域の再構築まで完了した。β鎖ゲノム領域はストラテジーを一部変更し、可変領域クラスター内部のBAC クローン約 290 kb 領域の再構築と、その両端クローン枯草菌ベクターへの導入を行なった。さらに、TCR 断片を回収する方策を検討した。先行研究において、直鎖状でインサートを回収する方法を確立していたが、高い収量を得ることが難しく剪断によるダメージも受けやすかった。そこで、抽出操作中に、機械的ダメージを受けにくいことが期待できる環状 DNA で回収するため、枯草菌ゲノム分断法を利用する遺伝子カセットを構築し枯草菌ベクターへ導入した。再構築した約360 kb のα鎖ゲノム断片を用いた予備実験において、ゲノムの分断が確認でき、塩化セシウム超遠心法を用いた精製操作により良好な結果が得られている。 HLA-KI マウス作成については、 H2-Aa 開始コドン直下に HLA-DRA*01:01-cDNA をi-GONAD により挿入するマウスの作成を試みた。cDNA配列の両側を H2-Aaの相同配列で挟む PCR アンプリコンを合成後、ssDNAとして i-GONAD法を行ったが 目的とする KIマウスが得られなかった。ssDNAのサイズが比較的大きいことが導入効率の悪さに繋がったと判断し、i-GONAD 法で個々の HLA-KI マウスを作成する方針はペンディングとした。方法論を変更し、H2-AaおよびH2-Ab1遺伝子に異なるリコンビナーゼ認識配列をi-GONAD 法で挿入することとした。現在 i-GONAD 後に誕生したマウスの genotyping を行なっている。目的マウスが得られれば、授精卵にリコンビナーゼとHLA置換ベクターを共注入することで、 HLA-KI マウスの完成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
α鎖ゲノム領域およびβ鎖ゲノム領域とも枯草菌ベクター上での再構築を継続する。特にβ鎖ゲノム領域は全長約 500 kb であり、一度の取り扱いが可能なサイズであることからこの完成を目指す。 α鎖ゲノム領域は全長で 900 kb を超え、全長の取り扱いが困難になることが推定されるため、α鎖ゲノム領域下流側からの再構築も進める。 枯草菌ベクターからの回収法の検討を進め、まずは 500 kb の再構築断片に対して ES 細胞への導入できるグレード(インタクトかつ高純度)の精製プロトコルを確立する。精製したゲノム断片を用いてエレクトロポレーションと CRISPR-Cas9 により、ノックインマウス作出のため ES 細胞への導 入を試みる。 また、HLA-KIマウス作成について、H2-AaおよびH2-Ab1遺伝子領域へのリコンビナーゼ認識配列のi-GONADによる同時挿入を試みている。片方のみの導入マウスが得られた場合は、そのマウスを用いて別側のノックイン i-GONAD を行う。得られたリコンビナーゼ認識配列KIマウスより授精卵を採取し、各種疾患関連 HLA を組み込んだドナーベクターとリコンビナーゼを共注入してドナーマウスへ移植する。得られたマウスに 目的とするHLA が導入されることを確認する。組換えの際に残される余分な配列も、リコンビナーゼ反応を利用して除去する計画である。
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