研究課題/領域番号 |
23K07158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
生島 仁史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90202861)
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研究分担者 |
芳賀 昭弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30448021)
山下 理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (40793071)
工藤 隆治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (10263865)
佐々木 幹治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (00885600)
大谷 環樹 徳島大学, 放射線総合センター, 助教 (40709557)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 放射線治療 / レディオミクス / MRI / 治療効果予測 / 再発予測 / 治療効果判定 / 非小細胞肺癌 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト非小細胞肺癌由来の培養細胞を用いて小動物のがんモデルを作成し、放射線照射前と照射後約10日経過したがんのMRI像を撮像する。がんのMRI像からレディオミクスの手法で抽出した特徴量と、免疫組織化学的に評価した細胞損傷度との関連性を網羅的に解析する。放射線治療前後で有意に変化した特徴量に免疫組織化学的に評価した細胞損傷度との関連係数を乗じ、 それを加算した腫瘍細胞損傷予測値により放射線治療効果を定量化する。最終的に、分子生物学的根拠に裏付けされたMRIレディオミクス解析により、早期放射線治療効果診断モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
ヒト由来の肺腺癌細胞(A549)をマウスに移植し作成したがんモデルのMRI像から、放射線治療によって放射線治療特異的に変化するレディオミクス特徴量があるか、検証した。X線照射群(20Gy/2回/2日)と対照群において、放射線照射直前と9日後に撮像したMRIのT2強調像と拡散強調像をWavelet変換した画像から476のレディオミクス特徴量を抽出し、2群間で、照射前後で有意な変化を生じた特徴量を比較した。結果、一致率はHistogram特徴量で0%、Texture特徴量で0~2%であった。画像診断医の評価では、両群間に差は認められなかった。2回目のMRI直後に摘出した腫瘍の免疫病理学的検索を行い、放射線照射群における抗腫瘍効果を確認した。以上より、レディオミクス解析により従来の方法では捉えられない画像診断情報を検出できる可能性があると考えた。 次に、転移性脳腫瘍の放射線治療後に、再発か放射線壊死かの鑑別に苦慮した症例を対象とし、MRIと11C-Methionine (MET)PET のレディオミクス解析を行いその鑑別能を検証した。機会学習アルゴリズムにはナイーブベイズモデルを使用した。結果、MRIレディオミクス解析によるROC解析のAUCは0.851であった。またMET PETレディオミクス解析では原画像のヒストグラム特徴量であるMeanDiscretisedIntensity、 10thDiscretisedIntensityPercentile、DiscretisedIntensityInterquartileRangeの3つが有用な特徴量として選択され、それらを組み合わせて構築したモデルによる鑑別診断精度は89.9%、AUCは0.907であった。 以上の結果より、レディオミクス解析により得られる画像情報は臨床で十分活用できると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標はレディオミクス特徴量と免疫組織化学的解析から腫瘍細胞損傷予測値を定量化するMRIレディオミクスモデルを作成することであった。まず最初に癌マウスモデルのMRI像から放射線治療効果により有意に変化する特徴量の存在を証明した。次に、臨床例を用いて一定の事象を予測するレディオミクスモデル作成を行うこととした。対象を、転移性脳腫瘍に対する放射線治療後に再発と放射線壊死の鑑別が困難であった45例56病巣とし、機会学習アルゴリズムであるナイーブベイズモデルを用い、放射線壊死と再発を鑑別するレディオミクスモデルを作成した。画像診断モダリティは、MRIと11C-Methionine (MET)PET とした。後方視的研究のため、モデルの制度検証はROC解析の5クロスバリデーションによって評価した。検証結果は、MRIでもMETPETでも高い診断精度を示した。以上の結果を考慮すると概ね順調に進展していると判断した。当初の計画では、同じ動物実験を繰り返してモデルの検証を行う予定であったが、初回の実験によりレディオミクス解析により従来では抽出できなかった画像情報を取得できることに対する確信が得られたため、既存の臨床データを用いたモデル作成と検証を行うことに変更した。本研究の最終目標は、新たな放射線治療戦略の構築に資する研究成果を得ることであり、臨床データを用いることで、目標に近づくことができると判断したからである。 また今年度後半に、臨床情報にMRIレディオミクスを加えたマルチレディオミクスモデルによる前方視的多施設共同観察研究の準備を開始した。局所進行子宮頸癌を対象とし、治療開始前にマルチレディオミクスモデルによる照射野外再発発生の予測を行い、2年間の経過観察結果でその精度を検証するという内容である。多くの症例集積が必要なため、日本放射線腫瘍学研究機構での実施を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2023度後半に準備を開始した臨床情報にMRIレディオミクスを加えたマルチレディオミクスモデルによる前方視的多施設共同観察研究を進める。多くの症例集積が必要なため、日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)での実施を計画している。 まずは、根治的化学放射線療法を施行した過去の子宮頸癌新鮮例を対象とし、MRIレディオミクス解析を行い、臨床情報を合わせた照射野外再発予測のためのマルチレディオミックモデルを作成する。2023年度ですでに14施設から107例の症例を集積している。また、前向き研究に関しても同14施設から症例集積の協力が得られることになっている。 2024~2025度は同モデルによる予測精度を前向きに検証すると共に、より予測精度の高いmodelへの改良を行う。子宮頸癌IIB/ III/IVA期新鮮例に対する根治的化学放射線療法前に、原発巣のMRIおよび臨床データを収集し、マルチレディオミックモデルによる照射野外再発および局所再発・増悪発生予測値の算出を行う。標準的化学放射線療法を行った後、2年間の経過観察でデータを収集し、モデルの予測精度を前向きに検証する。また、2025年度終了時点では、収集したデータを教師データとして更なるモデルの改良を行う。 臨床データを用いた前向き試験へと研究を推進させる方策である。このため必要な倫理審査やデータ収集プラットフォーム構築、共同研究施設での許諾などの手続きを進めていく。また同時にこれまでの研究で得られた成果を学会発表や科学論文制作で発表していく。
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