研究課題
基盤研究(C)
血中循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)は腫瘍から血液中に流出したDNAであり、この解析により癌の手術後の再発予測などに非常に有用であることが報告されてきた。大腸癌では遠隔転移を有していても手術・放射線治療等の局所治療が治療選択肢となることがあるが、局所治療の結果予測は十分ではない。現在国立がん研究センター東病院を中心に、大腸がん患者5000例のctDNAおよびCT画像を用いたGALAXY試験が進行しており、本研究ではこの大規模レジストリデータをもとにより高い精度で、遠隔転移を有していても局所治療効果の高い患者群の選別が可能な診断法の確立を目指す。
本研究の目標は、切除可能な肺・肝転移を有する大腸癌患者において、ctDNAと放射線画像データから、手術や放射線治療などの局所治療後の予後を治療介入前に予測することである。GALAXY試験の大規模レジストリデータを用いるが、CTやMRIなどの放射線画像に関しては参加する施設から収集する必要がある。昨年度はGALAXY試験に参加する施設から放射線画像の収集を行い、収集の完了したデータを解析して国際学会にて発表を行った。具体的には、2023年中にGALAXY試験に参加している施設のうち、約7割の施設からCTやMRIなどの放射線画像を収集することができた。毎月研究チームでカンファレンスを行い、収集の進捗や研究の方針を確認しながら進めた。収集した画像をもとに、放射線治療医によって肺や肝臓の全ての転移巣の腫瘍体積を、放射線治療計画装置上で腫瘍を描出することにより、それぞれに対して計算した。局所治療前のctDNA値と腫瘍体積を用いて、単位腫瘍体積辺りのctDNA値に着目し、化学療法によるctDNA値への影響も考慮して解析した。その結果、局所治療後に有意に早期再発を来たさない患者群を認めた。得られた結果を2024年1月に米国サンフランシスコで開催された国際学会(ASCO-GI)にて発表した。今後さらに多くの施設から放射線画像を収集し、またフォローアップ期間を伸ばすことでより詳細なデータを得られる目処がたっている。さらにデータ解析の専門家との調整を行っており、追加で解析を行い、論文化を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
臨床試験参加施設からの放射線画像集積や解析方法の確立など大筋の目処がたっており、概ね順調、あるいは当初の計画以上に進展していると考える。
今年度は新たに収集した放射線画像やフォローアップ期間を伸ばしたデータの追加、およびデータ解析の専門家と新たに連携したより詳細な解析を行う予定である。本年度中にデータを固め、来年度中の論文のアクセプトに向けて進めていく。
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