研究課題/領域番号 |
23K07193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
飯田 靖彦 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60252425)
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研究分担者 |
藤澤 豊 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (30511993)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 核医学治療 / 実効線量 / 投与設計 / 90Y / 67Cu / マウス / 被ばく線量 / 個別化医療 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、異なる治療用放射性核種(RI)で標識した2種類の放射性薬剤を適切に投与設計することで、最大の治療効果が得られる可能性について検証する。すなわち神経内分泌腫瘍(NET)に発現するsomatostatin受容体 (SSTR)を標的とするペプチド化合物をRI標識し、ラット膵臓外分泌腺癌(AR42J)細胞を移入したヌードマウスでの体内動態から全身の被ばく線量を算出し、67Cu、90Y、177Lu等で標識した薬剤を調整して投与することでその抗腫瘍効果を調べ、効果的・効率的な核医学治療、個別化医療の実現可能性を探る。
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研究実績の概要 |
一般に内用放射線療法に用いる放射性医薬品の治療効果は、放射性核種(RI)の半減期が長いほど高く、また放出される放射線のエネルギーが強いほど高いと考えられるが、これらは同時に正常組織への障害性も高くなることで投与量が制限されるため、標的腫瘍の性状、薬剤の体内動態によって最適な治療効果を示す半減期、エネルギーが存在する可能性がある。特にペプチド、タンパクを母体とする放射性薬剤の場合、金属RIを結合させるためのキレート部位を介して標識するため、同じ動態を示しながら異なるRIを導入した放射性薬剤をデザインすることができ、これらを適切に投与設計することで治療効果を最大とすることが期待される。 本研究ではまず様々な放射性薬剤をマウスに投与して体内動態を調べ、これらを90Yあるいは67Cuで標識した際の実効線量を、MIRD法に基づく実効線量算出ソフトMIRDOSE3を用いて算出して2種の核種間における実効線量比(90Y/67Cu)を求め、放射性核種に適した体内動態があるか否かを検証した。実験にはキレート化合物である(1) 67Cu-ATSM、(2) 64Cu-HP、ペプチド性化合物である(3) 67Cu-DOTATATE、(4) 67Cu-ToDBTTATE、および抗体化合物である(5) 64Cu-TETA-NuB2の5種を用いた。 各々の実効線量を算出した結果、2核種間の実効線量比(90Y/67Cu)には最小値4.59から最大値5.67までの差が認められた。この結果から同じ薬剤を異なるRIで標識した際に体内動態によって放射性薬剤の最大投与量が左右され、治療効果に差が生じる可能性が確認された。今後はどのような体内動態がどのRIに適するかを明らかにするとともに、標的腫瘍の性状によって適切な治療効果が得られるRIが存在する可能性について検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は(1) 67Cu-ATSM、(2) 64Cu-HP、(3) 67Cu-DOTATATE、(4) 67Cu-ToDBTTATE、 (5) 64Cu-TETA-NuB2の5種類の化合物の体内動態を調べ、これらを90Yあるいは67Cuで標識した際の実効線量を、MIRD法に基づく実効線量算出ソフトMIRDOSE3を用いて算出して2種の核種間における実効線量比(90Y/67Cu)を求めた。(1)は、細胞内の電子伝達系酵素により銅が還元を受けて解離し、滞留性を示すキレート化合物で、腫瘍などの低酸素部位の診断に用いる放射性薬剤であり、(2)は、悪性腫瘍の光線力学療法にも使用されているHematoporphyrin (HP)の放射性銅標識体である。(3)と(4)は、神経内分泌腫瘍に多く発現するsomatostatin receptor 2をターゲットとしたペプチド性化合物で、前者は177Lu標識体が神経内分泌腫瘍の治療薬として市販されており、後者はキレート部位を換えることで物理化学的性質を変え、同時に腫瘍滞留性の向上を狙った放射性薬剤である。また(5)は、悪性リンパ腫に過剰に発現するCD20に結合する抗体化合物で、各々の体内動態の違いが90Y標識薬剤および67Cu標識薬剤の投与量に与える影響について調べた。 その結果、90Y標識薬剤の実効線量は0.17 ~ 0.65 mSv/MBq、67Cu標識薬剤の実効線量は0.035~0.12 mSv/MBqとなり、β-線エネルギーを反映した差を示す結果となった。一方で、実効線量比(90Y/67Cu)は4.59 ~ 5.67までの差が認められ、体内動態によって放射性薬剤の最大投与量が左右され、治療効果に差が生じる可能性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
体内動態に適したRIを標識核種として選択することで最大の治療効果が得られる可能性を示唆する今回の検討から、どの薬剤がどのRIに適するかを予想し、実際に放射性薬剤を投与して治療効果を検証していく。すなわちモデル動物としてAR42J細胞をヌードマウスに移入し、腫瘍が成長した後(2~3週間)、動物実験に使用する。その際、移入する細胞数を変え、異なるサイズの腫瘍を作成し、標的腫瘍サイズの差による治療効果の違いについても併せて検討する。一定の被ばく線量となるように異なるRIで標識した放射性薬剤を単独あるいは2種類同時に担がんモデルマウスに投与し、腫瘍の成長を2、3日間隔で2~3週間観察し、腫瘍サイズと抗腫瘍効果の関係を明らかにする。今回はβ-線のエネルギーが大きく異なる一方、半減期は同程度の2種類のRI(90Yと67Cu)を用いたが、エネルギーは同程度で、半減期が異なるRI(177Luと67Cuなど)においてもより顕著に差が生じる可能性があることから、今後はこのような組み合わせによる治療効果への影響についても検討していく。
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