研究課題/領域番号 |
23K07203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中嶋 憲一 金沢大学, 先進予防医学研究科, 特任教授 (00167545)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 人工知能 / 医用データベース / 画像診断 / 予後 / モデル解析 / 心不全 / レヴィー小体病 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、画像診断あるいは臨床診断にあたって、人工知能あるいは機械学習の手法を利用して、様々な臨床情報と画像情報を統合した新しい診断体系を構築する。このためには、適切な大規模データベースを構築する必要があるので、国内外の臨床データベースを作成する。診断名や予後を含めるが、心臓であれば心臓死とその原因など、従来の統計的手法では判断が難しかった領域についての検討を人工知能により行う。画像についても、機能画像としての定量性を改善させて診断に貢献することや、人工知能による画像分類、予測、臓器/病変セグメンテーションも含める。最終的に、作成されたモデルの妥当性の検討を含めて順次実施予定である。
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研究実績の概要 |
本研究は高精度の画像診断を達成するために臨床情報と絶対定量機能画像を統合して、人工知能の手法により実施するものである。 1)心臓病および心不全による死因の予測に関する研究:本研究では、心不全による死因を画像と臨床情報を統合して予測することを目的とし、特に従来予測が困難であった突然死の予測モデルを機械学習を用いて構築した。123I-MIBG検査による心縦隔比(H/M比)の低下が不整脈死や突然死と関連が深いとされるが、中等度の障害を持つ患者での不整脈死/突然死の発生も報告されている。この点を解明するため、臨床情報と画像情報を含む13変数から成る機械学習モデルを開発し、800例を超える日本と欧州の心不全患者データベースを用いて検証を行った。日本のデータではH/M比が低いほど不整脈イベントが多い一方、欧州のデータでは中等度に障害されたH/M比の患者で不整脈イベントが多いことが確認された。これらの原因を機械学習モデルを通じて解析し、その成果の一部を欧州核医学会で報告した。また、123I-MIBGのSPECT-CT画像を用いた臓器セグメンテーションを深層学習で成功させた。 2)高分解能高感度のSPECT-CTに関する検討:心臓および脳領域における正確なSPECT値の算出には、散乱、減弱、呼吸、不整脈、体動などさまざまな要因の補正が不可欠である。これらの要因に対する全面的な補正を行うことにより、定量性の向上が達成された。この成果は「Journal of Nuclear Cardiology」に報告された。 3)123I-MIBGを用いたレヴィー小体病の新診断モデル:本年度、レヴィー小体病を診断するための新しい診断モデルを開発した。このモデルは疾患の確率を評価することが可能であり、レヴィー小体病の診断に対する新しい指標を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)心臓病と心不全の死亡原因予測に関する研究:本研究の目的は、心臓の交感神経機能が不整脈イベントに果たす役割を評価することであった。その第一段階として、交感神経機能と重症不整脈イベント(突然死を含む)の間に強い関連が存在し、そのパターンが患者の背景により異なることを明らかにすることができた。特に機械学習を用いたモデルは臨床的な13変数を含むため、各因子がどのように影響するかを解析するのに有効であることが明らかになった。これまで指摘されていたH/M比との関連に加え、交感神経活動を反映する心臓からのMIBGクリアランスや虚血の関与が相乗的に影響することを明確化できたことは重要な成果である。 2)高分解能高感度のSPECT-CTの検討:心筋集積の絶対値を測定する技術はこれまで方法的な煩雑さのために進展が遅れていた。SPECT画像を劣化させる要因である散乱、減弱、不整脈、呼吸性移動、体動などの影響は、従来個別に検討されていたが、今回初めてこれら全てを統合する可能性を示すことができ、臨床現場への応用が可能になった。さらに、123I-MIBGに関しては、SPECT-CTを用いた深層学習によるセグメンテーションが可能であることを示し、これも重要な成果である。 3)123I-MIBGのレヴィー小体病への適用と新しい診断指標:本年度は新しい統計モデルに基づく新しい診断指標の案を作成することができた。疾患の確率を評価することが可能になれば、診断に寄与するだけでなく、画像撮影の回数を減らすことにも貢献し、実用性が向上すると考えられる。この点についてさらなる検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)心臓病と心不全の死亡原因予測に関する研究:本研究では心臓の交感神経機能と心不全死、特に不整脈関連死の可能性のさらなる検討を進める。特に、多変量の13変数モデルを使用しているが、実用性の観点からはさらに単純化できないかの検討も行う。予備検討では、このモデルの精度が日本人データベースで高いことが確認されているため、今後はその精度の検証を進める予定である。 2)高分解能高感度の定量的SPECT-CTの検討:心臓領域における初期検討で絶対定量法の有望性が確認されたため、引き続き臨床で負荷安静心筋血流SPECTにこの技術を応用し、その実効性を確認する。これには、患者の診断だけでなく冠動脈の性状との合わせた評価が必要であり、現在その検討の初期段階にあるが、今後さらにその推進を計画している。また、123I-MIBGのSPECT-CT画像においては、ディープラーニングによるセグメンテーションからさらに絶対定量へと進む可能性を検討している。 3)123I-MIBGのレヴィー小体病への適用と新しい診断指標:新たに開発した指標のソフトウェア化を予定しており、初期検討は大学病院内での実用性を示すことまで行われた。しかし一般病院の診療体制の中での実用性の検討がされていないため、今後はその精度の確認を行う。さらに、機械学習を用いて診断のさらなる効率化や精度改善の可能性も検討する予定である。
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