研究課題/領域番号 |
23K07236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
木下 善仁 近畿大学, 理工学部, 講師 (20634398)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ミトコンドリア病 / レトロトランスポゾン / 遺伝性疾患 / ゲノム解析 / RNAシーケンス / バイオインフォマティクス |
研究開始時の研究の概要 |
ミトコンドリア病の原因遺伝子解明の研究において、Alu配列が発症機序に関わっていることを先行研究で証明してきた。本研究においては、さらなる症例の発見を通じ、どれほどの症例においてAlu配列を含むレトロトランスポゾンが関与しているかを明らかにする。具体的には、全ゲノム解析データからAlu配列を検索するパイプラインを構築し、それらの比較検証を行っていく。そこから、検出したAlu配列を介した遺伝子異常が疾患原因となるか検証実験を重ねて、原因遺伝子としての証明を行う。基礎生物学的な視点として、レトロトランスポゾンが遺伝性疾患に関与する潜在性を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
ミトコンドリア病は1500人に1人に発症するとされる非常に頻度の高い、遺伝性の難病である。また、国の定める指定難病また小児慢性特性疾病となっている。我々は日本最大規模となる約1300患者のゲノム解析を通じ、ミトコンドリア病の原因遺伝子を明らかにしてきた。最近では全ゲノム解析とRNAシーケンスを組合わせた解析を重点的に行うことで、Alu配列を介して生じている染色体微細構造異常(以下、構造異常と呼ぶ)を発見した。Aluはレトロトランスポゾンの一種であり、100万以上のコピーがヒトゲノムに存在している。ミトコンドリア病の発症要因として、Alu配列間での組換えまたAlu配列挿入による偶発的な欠失を見出した。ミトコンドリア病の原因としては初めての発見であった。ヒトゲノムは非常に多くのAlu配列を含むことから潜在的にこのような構造異常の誘発に多く関わっていると考えているが、実際には現状の全ゲノム解析では十分にレトロトランスポゾンを解析できていない。そこで本研究では、Alu配列などのレトロトランスポゾンに着目したゲノムデータの再解析を行い、新規のレトロトランスポゾンを介した原因変異を明らかにする。 本研究では、Alu配列などのレトロトランスポゾンの介在する遺伝子異常を検出するための解析パイプラインを構築した。特に、MobsterやMELT、ERVcallerなどの解析ソフトウェアを導入し、検討を行った。Alu以外にもSVAやL1、HERVも対象として解析を行った。取得済みの約350症例について順次解析を行っており、これにより新規の原因バリアント候補を新たに見出すことに成功した。また、ITPA遺伝子における欠失がAluを介して生じていることを新たに見出し、論文報告した(Omichi and Kishita et al, J Hum Genet, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従い順調にAlu配列などのレトロトランスポゾンの介在する遺伝子異常を検出するための解析を実施することができた。さらに、Alu以外にもSVAやL1、HERVも対象として解析を行うことで、新規の原因バリアント候補を新たに見出すことに成功した。これらに関して、真の原因であるかどうかの検証実験を行っているところである。また、ITPA遺伝子における欠失がAluを介して生じていることを新たに見出し、論文報告した(Omichi and Kishita et al, J Hum Genet, 2023)。別の症例において、X染色体におけるAluを介した欠失も発見しており、これについても論文投稿準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム上のレトロトランスポゾンの検出において、機械学習やディープラーニングをベースにしたソフトウェアであるxTeaやDeepMEIなどが開発されており、これらの解析手法についても現在導入を進めている。検出精度を向上させることにより、レトロトランスポゾンを介した遺伝子異常の発見をさらに加速させる。既に同定しているバリアントに関しては、順次検証実験を行っているところであり、こららを継続していくことで最終診断および論文報告に繋げていく。
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