研究課題/領域番号 |
23K07248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (60711083)
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研究分担者 |
湯川 博 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (30634646)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳性麻痺 / 脱落乳歯歯髄幹細胞 / SHED / 新生児低酸素性虚血性脳症 / 幹細胞療法 |
研究開始時の研究の概要 |
周産期・新生児医療の現場では、周産期脳障害に伴う脳性麻痺などの神経発達障害が問題視されている。根本的な治療法は未確立のため新規治療法の開発は喫緊の課題であるが、中でも幹細胞治療は1つの解決策と考えられている。そのため我々の研究グループでは、採取、培養が容易な脱落乳歯歯髄幹細胞(SHED)に着目し、これまでにSHEDの急性期投与が周産期脳障害モデルに対し有効であることを証明してきた。 一方、脳性麻痺は主に遠隔期に発症することから、脳性麻痺の症状を確認してからでも十分効果をもたらす治療法開発も必要である。 そこで本研究では、SHEDを用いて遠隔期の神経障害発症後に効果を示す新規細胞療法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに、ヒト剥離乳歯(SHED)から採取した幹細胞を投与することで、神経症状を伴う低酸素虚血性脳症(HIE)モデルラットの運動障害が有意に改善することを明らかにしてきた。そこで今回、SHEDがHIEモデルラットにおいて神経症状を改善するメカニズムについて検討を行った。 Rice-Vannucciモデルを用いてラットにHIEを誘発し、SHED群にはSHED(1.0×10^6 cells/body、3回)を、ビヒクル群にはビヒクルを尾静脈注射した。SHED最終投与2週間後に脳を採取し、網羅的なタンパク質解析を実施した。抽出されたタンパク質プロファイルは機能アノテーション解析に使用した。フラグが立てられたGO用語は、類似アノテーションや共関連タンパク質間の関係を明らかにするためにクラスタリングした。次にSHED最終投与後、初期(2週間)と後期(10週間)の2時点で脳組織を採取した。初期段階では、SHED投与後、50 mg/kgのブロモデオキシウリジン(BrdU)を3日間連続で腹腔内投与した。抗原回収後、脳切片を抗Doublecortin(DCX)、抗BrdUまたは抗NeuNとインキュベートした。続いて、切片を適切な二次抗体でインキュベートした。 その結果、プロテオーム解析により、Vehicle群とSHED群の間で神経発生関連経路に有意な変化が認められた。組織学的評価では、SHED投与2週間後に、海馬歯状回と脳室下帯において、BrdUとダブルコルチンの二重陽性細胞が、ビヒクル群と比較して有意に増加していた。さらに、NeuN陽性細胞は、SHED投与3ヵ月後に海馬歯状回と大脳皮質で有意に増加していた。 これらの知見から、SHED投与が神経新生を促進することで、神経症状を有するHIEモデルラットの運動障害を改善させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HIEモデルラットに対するSHEDの慢性期効果について、免疫組織学的評価および生化学的評価により、神経新生促進作用を中心に確認することができた。そのため、今年度の進捗はおおむね達成することができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
SHEDの慢性期治療効果について、運動機能に加え、不安関連行動や記憶・学習能力についても評価を行う予定である。また、SHEDのin vitroでの評価としてラット神経幹細胞とSHEDを共培養し、幹細胞の増殖・分化の評価を行う。さらに、SHED投与後の体内動態確認のため、SHEDを量子ドットで標識した後、IVIS Imaging Systemを用いた追跡を行う予定である。
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