研究課題/領域番号 |
23K07253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
岡田 利也 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (00169111)
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研究分担者 |
近藤 友宏 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 講師 (40585238)
中島 崇行 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 准教授 (30333644)
中村 純 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 客員研究員 (90804518)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | catch-up growth / 子癇前症 / 新生児膵臓 / 胎児腎臓 / fetal growth restriction / 母体5/6腎臓摘出 / メタボリック症候群 / 葉酸 / 5/6腎臓摘出母体 / 神経発達障害 |
研究開始時の研究の概要 |
腎不全に罹患した女性の妊娠は珍しいものではないが、妊娠中の腎不全は妊娠高血圧症候群の発症リスクを高めることが報告されている。子癇前症は妊娠高血圧症候群に分類され、産科領域における代表的疾患の一つで、その病態解析や治療法の開発にモデル動物が用いられているが、母体腎不全に起因する子癇前症モデル動物は見当たらない。 本研究では、妊娠前、あるいは妊娠後のラットに5/6腎臓摘出を施すことによって腎不全を引き起こすとともに抗酸化物質である葉酸を給餌して、母体と胎児を調べる。さらに腎不全母体から生まれた新生児に葉酸を給餌することにより、新たな子癇前症モデルの開発と葉酸摂取の影響・病態抑制効果の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
子癇前症が fetal growth restriction(FGR)の発生率を高めること、およびFGRが周生期の胎児、新生児に悪影響を及ぼすことが報告されている。本研究は、腎不全に起因する新たな子癇前症モデルの作製ならびに治療法の開発、すなわち5/6腎臓摘出手術による腎不全モデルを作製し、FGR発症リスクを調べるとともにそれに対する葉酸による抑制効果を明らかにすることを目的とし、本年度は以下のことを明らかにした。 ①母体5/6腎臓摘出(妊娠5日目に左腎2/3部分切除、妊娠12日目に右腎全摘出)によってFGRの診断基準値「対照群の体重の平均値-2x標準偏差」を下回る有意な体重減少が雄新生児で認められた。出産後、哺育子数を3匹にlitter調整し、幼若期の急速な体重増加(catch-up growth)を引き起こすことで、新生児膵臓におけるランゲルハンス島のグルカゴン陽性細胞の局在の変化、血清アミラーゼの増加が認められた。 ②妊娠母体に5/6腎臓摘出を施した場合、偽手術群との間で胎盤重量の差は認められなかったが、雄胎児のFGR診断基準を下回る有意な体重減少並びに雄胎児の有意な腎臓重量減少が認められた。③5/6腎臓摘出による雄胎児の体重低下は妊娠6日目以降における母体への高葉酸含有飼料を給餌によってやや抑制され、雄胎児の腎臓重量は有意に増加した。 以上のことから、母体5/6腎臓摘出によってFGRが発症すること、出生後catch-up growthを引き起こすことで、メタボリック症候群の発症リスクが増し、FGRモデルとしての有用性が高まることがわかった。さらに、5/6腎臓摘出妊娠母体に高葉酸含有飼料を給餌することで、母体腎不全に起因するFGRが軽減される可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、A) 5/6腎臓摘出母体の腎不全に起因するFGRモデルとしての特性ならびに有用性、B) 腎不全母体への高葉酸飼料給餌による母体ならびに胎児への影響を調べた。 A)の5/6腎臓摘出母体の腎不全に起因するFGRモデルとしての特性ならびに有用性に関する解析では、母体5/6腎臓摘出によってFGRの診断基準値を下回る有意な体重減少が雄新生児に引き起こされるとともに、出生後にcatch-up growthを引き起こすことで、新生児膵臓における組織変化が認められた。すなわち、雄新生児を用い、catch-up growthを引き起こすことでFGRモデルとしての有用性が高まることがわかった。これらの結果は、本年度の日本獣医学会で発表した。 B)の腎不全母体への高葉酸飼料給餌による母体ならびに胎児への影響では、胎児数、胎児体重、胎盤重量の解析については予定通り実施したが、母体に関する血液生化学検査、胎児腎臓ならびに胎盤の組織観察は結果を出すまでには至っていない。 以上のように、令和5年度に計画していた実験で一部結果の得られなかったことから「やや遅れている」と判断した。なお、母体血清、ならびに胎児腎臓および胎盤組織は作製ずみで解析の準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降は引き続き腎不全母体への高葉酸飼料給餌による母体ならびに胎児への影響を解析するとともにFGR新生児へ高葉酸飼料を給餌による影響を調べる。 FGR新生児へ高葉酸飼料を給餌による影響の解析については、葉酸を給餌しない5/6腎臓摘出母体から生まれた新生児を用い、離乳後に葉酸を給餌した新生児と給餌しない新生児との間で以下のこと比較・検討する。①成長への影響、②脂質異常症、収縮期血圧等メタボリック症候群発症リスクの評価、③心臓の重量測定ならびに組織観察による心血管系疾患発症リスクの評価、④行動解析ならびに行動解析終了後の脳組織標本の観察による神経発機能害発症リスクの評価、⑤肝臓の変化(脂肪蓄積の程度、DNA断片化細胞出現の程度、カスパーゼ9および3の発現の変化)、⑤膵臓の解析(膵島細胞の体積、β細胞の比率の測定)⑥腎臓の変化(組織形態計測学的変化、糸球体硬化および間質線維化)を調べる。さらに、⑦免疫組織化学的手法によるレニン、アンギオテンシノーゲン、アンギオテンシンIIならびにアンギオテンシンIIレセプター (AT1及びAT2)の局在、ならびに⑧in situ hybridization 法によるmRNAsの局在および定量的RT-PCR法及びNorthern blot法による発現量を明らかにする。 以上により、腎不全母体における子癇前症発症リスク、FGR新生児の成熟後のメタボリック症候群、心血管系疾患、および神経機能障害発症リスクの評価及びそれら発症リスク増加の原因となる形態的変化及び遺伝子発現の変化に対する葉酸摂取の影響・抑制効果を明らかにする。
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