研究課題/領域番号 |
23K07278
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
栃谷 史郎 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (90418591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 母体腸内細菌 / 攪乱 / 環境因子 / 母体行動 / 神経発達 / 神経発達症 / 経世代的生物現象 / 母体腸内細菌叢 / 周産期 / 母子関係 / 細菌叢垂直伝搬 |
研究開始時の研究の概要 |
母親から子へ継承される母体腸内細菌叢が児の精神神経発達の基盤形成にどのように寄与し、環境要因による母体腸内細菌叢撹乱がどのようなメカニズムでどのようなアウトカムにつながるのかを詳細に解明することは神経発達障害の予防法や介入法の開発につながる。研究代表者は周産期マウス母体腸内細菌叢の撹乱が、子の出生後の脳発達に影響を与え、子の行動変化(低活動、空間嗜好性)を引き起こすことを明らかにした(Tochitani, 2016:母体腸内細菌叢撹乱モデル)。本研究計画においては、母体腸内細菌叢撹乱モデルにおける母体の生理変化に至るメカニズムや子の神経発達への影響を解明することを目的に研究を進める。
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研究実績の概要 |
研究代表者は非吸収性抗生剤投与による妊娠期マウス腸内細菌の撹乱が、仔の出生後の脳発達に影響を与え、この行動変化(低活動と過度に壁沿いを好む空間嗜好性)を引き起こすことを明らかにした(Tochitani, 2016)。この結果から、研究代表者は子の発達にとって、母体腸内細菌叢は重要な周産期母体環境の1つであると考えている。ただし、子の健全な精神神経発達の基盤としての母体環境に必要な事柄はどのようなものであり、その基盤形成に母体腸内細菌叢の果たす本質的な役割は未だ明らかとは言えない。非吸収性抗生剤投与により母体腸内細菌叢を撹乱する動物モデルを「母体腸内細菌叢撹乱モデル」と名付け、母体腸内細菌叢の子の精神神経発達の関連を明らかにする研究を継続している。本研究計画においては、母体腸内細菌叢撹乱モデルにおける母体腸内細菌叢撹乱から母体生理・行動変容に至るメカニズム、さらには母体生理・行動変容が子の神経発達へ与える影響の解明を目指した研究を進める。 初年度は母体腸内細菌叢撹乱モデルにおいて、周産期に観察される生理的変化を網羅的に明らかにすることを目的とし、周産期腸内細菌叢解析、出産直後糞便中の短鎖脂肪酸濃度解析、血漿メタボローム解析などを行い、母体腸内細菌撹乱モデルにおいて、様々な生理変化を観察した。また、既に母体腸内細菌叢撹乱モデルの行動変容を観察していたが、新たなデータの追加を行い、既に得ていた行動観察結果を確認した。これらの結果は母体腸内細菌叢撹乱モデルにおいて、母体腸内細菌叢の撹乱が、周産期母体の生理的変化を引き起こし、その結果として母体の行動変容に至ることを示唆する。この母親の行動変容が、仔の行動変容の原因の一端である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、母体腸内細菌叢撹乱モデルにおいて、周産期行動変容を観察し、腸内細菌叢撹乱により母体生理変化が引き起こされるという結果を得ている。初年度はこれらの観点からさらに研究を進め、それ以前に得ていたデータを広げ、深めることができ、行動変容や生理変化に関する様々なデータを得ることができた。そのうえで、腸内細菌叢撹乱に起因した脳腸相関により引き起こされる母体内分泌的変化が、観察された母体生理変化の基盤となるという仮説のもと研究を進めている。複数観察された生理的変化のうち、一つ一つ行動変容との因果関係を明らかにしたいと考え、研究を進めている。一部の実験ではデータ解析に新しい手法を必要とし、この点については思った以上に習熟に時間がかかってしまったと振り返っている。また、本研究課題にも関連するが、前研究課題から引き続き継続していた母体腸内細菌撹乱モデルの母子間の腸内細菌叢伝搬の時系列的解析において、追加解析が必要になったなど、論文化にかなり時間を要したことは反省点であると認識している。 これらの過程で、学会発表2件を行い、周産期母体腸内細菌叢に関する日本語総説2件を発表した。また、関連する英語論文を1報発表した。
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今後の研究の推進方策 |
母体腸内細菌叢撹乱モデルにおいて、周産期母体行動の変容と様々な生理変化を観察している。腸内細菌叢撹乱に起因した脳腸相関により引き起こされる母体内分泌的変化が、観察された母体生理変化の基盤となるという仮説のもと研究を進めている。複数観察された生理的変化のうち、一つ一つ行動変容との因果関係を明らかにしたいと考え、研究を進めたいと考えている。具体的に、母体腸内細菌叢撹乱モデルの母親の血漿中や糞便中で、対照群に比べ、有意に濃度が低下していた化合物を、母体腸内細菌叢撹乱モデルに投与することで、行動や生理変化が正常化するかについて検討する研究を進める予定である。また、母体腸内細菌撹乱モデルの出生後の母親の脳における変化を分子生物学的、組織学的方法で明らかにし、母体腸内細菌叢撹乱モデルの母体行動変容の神経科学的基盤を明らかにする目的の研究も進めていきたいと考えている。
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