研究課題/領域番号 |
23K07309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
辻 俊一郎 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30601546)
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研究分担者 |
寺島 智也 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40378485)
全 梨花 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80973370)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 新生児低酸素虚血性脳症 / 脳性麻痺 / ペプチド治療 / 新生児低酸素性虚血性脳症 / 治療用ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らはM1-MGに特異的に結合するペプチドを開発した。そこで、本ペプチドにアポトーシスを誘導するKLAペプチドを結合させた治療用ペプチドを、新生児低酸素性虚血性脳症(Hypoxic Ischemic encephalopathy; HIE)モデル動物に投与することでM1-MGを細胞死へと誘導し、新生児HIEが加療できるか否かを明らかにする研究を立ち上げた。有効性が示されれば、新生児HIEによる死亡を改善させるだけでなく、従来難治性神経障害と考えられていた脳性麻痺の発症を低下させる真に有用な新生児HIE治療法を確立することが期待できる。
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研究実績の概要 |
2023度はモデルマウスに治療用ペプチドの投与を行い、新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する新規治療用ペプチドの治療効果の検討を行った。①HIEモデルマウスへの新規治療用ペプチドの投与:M1ミクログリア特異的に結合するペプチドにアポトーシス誘導ペプチドであるKLAペプチドを結合させた、MG1-KLAペプチドを作成した。次に、生後9日目の新生仔マウス(C57BL/6)HIEモデルマウスを作成した。HIE手術から24時間後に患側である左脳室内にMG1-KLAペプチドの投与を行い、コントロール群には、PBSの投与を行った。また、Sham群を作成し、Sham群にもMG1-KLA、PBSをそれぞれ投与した。本実験系での群数を4群(HIE-治療用ペプチド群, HIE-control群, Sham-治療用ペプチド群, Sham-control群)とし、1群あたり7-10匹程度作成した。②治療用ペプチド投与後の行動機能評価:HIE手術から2週間後に行動機能評価のために、Rota-rod 試験、Open-field 試験を行い、運動機能、高次脳機能を評価し、神経学的治療効果の検討を行った。HIE-治療用ペプチド群では、Sham群と同程度に運動機能、高次脳機能は保たれており、神経学的障害は見られず、治療効果を示していると考えられた。③治療用ペプチド投与後の組織学的検討:HIE手術から慢性期(2週間)で潅流固定を行い、固定および脱水後にパラフィン包埋を行った。マイクロトームにてパラフィンブロックをスライスし、海馬および線条体の冠状断面における組織切片を作成し、免疫染色(MAP2;神経細胞マーカー)を行った。慢性期でのMAP2染色では、HIE-治療用ペプチド群で神経細胞壊死に伴う脳障害が抑制されており、治療用ペプチド投与により脳障害の程度が改善していると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、in vitroにおける治療用ペプチドの投与実験により、M1ミクログリア選択的にアポトーシスに誘導できることが確認できていた。また、HIEモデルマウス作成に関する初期検討も十分に行い、ペプチドの脳室投与の方法も確立できていたため、新規治療用ペプチドのin vivoにおける治療効果の検討は順調に進展することができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、治療用ペプチドによる治療効果の背景に迫る。HIE後72時間でマウス脳を摘出し、ミクログリアを染色するIba-1染色、M1ミクログリアに特異的に発現するCD86染色を行い、治療用ペプチドによるM1ミクログリアの集積効果の解析を行う。また、ペプチド投与後のサイトカインの変動として、HIE手術から32時間/48時間でPBS潅流脱血後に全脳を摘出し、左右の半球における炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β, iNOS)や抗炎症性サイトカイン(IL-10, IL-4)の定量的PCRを行い、mRNAの発現解析を行っていく。 さらに、ペプチド投与の至適タイミングの検討として、本ペプチドがどのタイミングまで治療可能かを検討する。まずはHIE発症後24時間後に投与する系としたが、HIE作成後12時間後、2日後、4日後、7日後と投与のタイミングをずらし検討する。効果は行動機能評価と、行動機能評価後のマウス脳還流固定による組織切片にて確認する予定である。
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