研究課題/領域番号 |
23K07310
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
榊原 菜々 神戸大学, 医学研究科, 学術研究員 (90814319)
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研究分担者 |
薗田 啓之 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (60970853)
野津 寛大 神戸大学, 医学研究科, 教授 (70362796)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | OCRL / Lowe症候群 / Dent disease-2 / PI(4,5)P2 |
研究開始時の研究の概要 |
患者尿細管由来培養細胞および,OCRL1蛋白強制発現モデルを用いて,患者変異における5-ホスファターゼ酵素活性の定量を行い,5-ホスファターゼ活性の差がどの程度臨床的重症度に寄与するかを具体的に明らかにする。次にLowe症候群患者の尿細管由来培養細胞にJ-Brain Cargoを投与し,5-ホスファターゼ活性を増加させることが可能かを検証する。さらにLowe症候群モデルマウスに,J-Brain Cargoを投与し,治療効果を判定する。
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研究実績の概要 |
Lowe症候群及びDent disease-2はいずれもOCRLを責任遺伝子とする遺伝性疾患である。Lowe症候群は先天性白内障、筋緊張低下、精神運動発達遅滞に加え,Fanconi症候群と進行性の腎機能障害を呈するが、Dent disease-2では著明な低分子蛋白尿や高カルシウム尿症などを認めるものの症状は腎に限局する。OCRLがコードする蛋白はphosphatidylinositol 4,5-bisphosphate(PI(4,5)P2)の脱リン酸化酵素PI(4,5)P2 5-phosphataseとして働き、この酵素活性の低下がOCRL異常症の病態の本質と考えられているが,表現型とPI(4,5)P2 5-phosphatase活性の相関については明らかにされていない。 そこで,OCRL ミスセンスバリアントをもつ男児12例を対象とし,酵素活性と表現型の関連を評価した。主治医の臨床診断を参考にLowe症候群と、Dent disease-2に分類し、それぞれのバリアントを導入したプラスミドベクターをHEK細胞にトランスフェクションし、OCRL蛋白を強制発現させ、BIOMOL Green assayを用いて、PI(4,5)P2 5-phosphataseの活性を測定した。 Lowe症候群が5例、Dent disease-2が7例であった。酵素活性解析において、野生型を100%の酵素活性とした時、LS群は中央値27%の酵素活性を、DD2群は中央値58%の酵素活性を呈した(p=0.018)。また、Dent disease-2としては比較的重症な症例は酵素活性がより低く、Lowe症候群としては比較的軽症な症例は酵素活性がより高いなど,酵素活性と表現型の相関を示唆するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の施設では2014年からLowe症候群およびDent disease-2の遺伝子解析を開始し,これまでに37例を遺伝学的に確定診断してきたが,昨年度からさらに10例の新規症例が蓄積された。 また当院の遺伝子解析症例について,網羅的な活性の測定を行い,PI(4,5)P2 5-phosphatase活性と表現型が相関することを示唆する結果が得られた。この結果は2024年度の小児腎臓病学会および日本腎臓学会で発表予定である。 症例数が少ないため有意差はでていないが,今年度新たに蓄積された症例を含めて,再度解析予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実績である,OCRL異常の表現型とPI(4,5)P2 5-phosphatase活性の相関については,日本腎臓学会,日本小児腎臓病学会で発表予定であり,論文投稿の準備を進めている。 患者尿細管由来細胞も順次培養をすすめており,これらを用いたPI(4,5)P2 5-phosphatase活性活性の測定を行い,同様に臨床的重症度との比較を行うことを予定している。 また,J-Brain Cargoによる5-phosphataseの遺伝子導入だけでなく,kinase阻害剤の投与などによる相対的な治療についても同時に検討を予定している。
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