研究課題/領域番号 |
23K07331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石田 秀和 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50467552)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ダウン症候群 / モデルマウス / 肺高血圧 / 肺動脈性肺高血圧 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
先天性心疾患を伴うダウン症候群患者では、肺高血圧症の発症頻度が高いことは昔から知られているが、そのメカニズムの詳細はこれまで不明であった。私たちはこれまで、ダウン症候群患者から樹立したiPS細胞を用いて、ダウン症候群患者の肺動脈内皮細胞においては、21番染色体上のDYRK1A遺伝子が1.5倍発現していることに端を発して、その下流のEGR1シグナルが活性化していることにより、細胞のミトコンドリア機能障害が起きていることを明らかにした。そこで、本研究では同シグナルの抑制がダウン症候群患者特異的な肺高血圧治療薬開発につながると考え、ダウン症候群モデルマウスを用いた実験を行う。
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研究実績の概要 |
ダウン症候群のモデルマウスとして一般的に広く用いられているTs1Cjeマウスを本研究では用いた。このマウスは、マウス16番染色体の部分トリソミーマウスであり、ダウン症候群の肺高血圧発症に大きく関与していることが、これまでの我々の研究によって判明している、DYRK1A遺伝子を含む領域がトリソミーとなっている。 このマウスについて、生後8週から3週間、10%酸素下での低酸素飼育により肺高血圧の誘導を試みた。肺高血圧の評価としては、①カテーテルによる右室圧測定、②右室肥大評価として右室重量測定、③肺動脈の病理学的評価、によって行った。低酸素負荷のみでは、Ts1Cjeマウスとその同腹野生型マウスの間で、肺高血圧の重症度に有意差を認めなかった。そこで、肺高血圧モデルラットの作成法としてよく用いられているSugen-hypoxia刺激を試みた。SU5416を投与の後、3週間の10%酸素下での飼育に加えて、1週間の通常大気下での飼育を行った。これにより、Ts1Cjeマウスでは高度の肺高血圧を呈し、同腹野生型マウスよりも有意に重度の肺高血圧を示した。 このダウン症候群肺高血圧モデルマウスにおいて、我々の先行研究によって示されている、PPAGR/EGR1系シグナルの発現変化があるかどうかを、肺組織における免疫染色によって検証した。すると、Sugen-hypoxia Ts1Cjeマウスでは、通常大気下で飼育しているTs1Cjeマウスおよび、Sugen-hypoxia WTマウスに比較して、有意に肺動脈内皮細胞におけるEGR1の発現が亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダウン症候群モデルマウスであるTs1Cjeマウスの樹立および安定的な維持に成功している。また、さまざまな刺激を加えることで、ダウン症候群マウスの肺高血圧モデルの確立に成功した。さらに、これまで我々がダウン症候群患者iPS細胞を用いることで明らかにしてきた、ダウン症候群に関連する肺高血圧発症に重要な役割を果たしているシグナル経路が、in vivoの系である、ダウン症候群モデルマウスにおいても、同様の発現変化をしてしていることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
ダウン症候群モデルマウスに対して、Sugen-hypoxiaを用いることで、同腹の野生型マウスより重度の肺高血圧および肺動脈病変が起きることを示した。肺動脈局所において、どのようなシグナル経路が動いているか、あるいはそのような細胞生物学的変化が起きているのかについて、さらに詳細な検討を行う。 さらに、EGR1経路を抑制するピオグリタゾンを投与することで、ダウン症候群モデルマウスの肺高血圧が改善するかを確認する。これによって、ダウン症候群特異的な肺高血圧治療薬の開発につなげている。
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