研究課題/領域番号 |
23K07357
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 泰史 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70322328)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | p53 / p53 family / 翻訳 / マイクロプロテイン / 食道癌 / ORF / 小型タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
近年のゲノム解析の進展によりヒトのタンパク質は同定し尽くしたと考えられていたが,コドン数100未満の短いORF (short open reading frame, sORF)が存在し,機能するタンパク質をコードしていることがわかってきた.本研究では,癌抑制遺伝子TP53の変異を高頻度に認める食道扁平上皮癌をモデルとし,p53ファミリーに制御される,あるいはp53ネットワークの破綻により発現変化するマイクロプロテインを分析し,機能解析へと展開する.さらに発現異常,悪性度および治療効果との関連性を解析することで,p53ネットワーク破綻を標的とした食道扁平上皮癌の治療法開発の基盤形成を目指す.
|
研究実績の概要 |
近年のゲノム解析の進展によりヒトのタンパク質は同定し尽くしたと考えられていたが,コドン数100未満の短いORF (short open reading frame, sORF)が存在し,機能するタンパク質をコードしていることがわかってきた.sORFから翻訳される100アミノ酸未満のタンパク質はマイクロプロテインと呼ばれ,細胞増殖,代謝,細胞死など生体内で重要な働きをしていることが示唆され,疾患の発症・進展への関連が報告されはじめている.また,タンパク質に翻訳されないと考えられていた非コード遺伝子(lncRNA等)の中にも非典型的な翻訳領域が存在し,マイクロプロテインと類似の機能的なペプチドを合成している例が見つかっている.本研究では,癌抑制遺伝子TP53の変異を高頻度に認める食道扁平上皮癌をモデルとし,p53ファミリーに制御される,あるいはp53ネットワークの破綻により発現変化するマイクロプロテインを分析し,機能解析へと展開する.さらに発現異常,悪性度および治療効果との関連性の解析を行っている.今回,野生型p53により翻訳が上昇する短いORFとして第17番染色体長腕の遺伝子間領域に存在するコドン数44の領域を同定した.その領域から翻訳されるマイクロプロテインをp53MP1と命名し細胞内発現の検討を行ったところ,野生型p53導入により細胞核に発現誘導されることを見出した.p53MP1の核局在は細胞増殖を抑制し,臨床検体での解析で予後不良に関連することを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高率にTP53変異を認めるが,分子標的に乏しい腫瘍に対する治療法開発の基礎研究として,リボソームプロファイリング,およびRNA-seq(totalおよび100-500塩基のサイズセレクション)を行い,p53ネットワークに制御される未知のマイクロプロテインの同定,および発現異常,悪性度および治療効果との関連性を分析した.野生型p53により翻訳が上昇する短いORFとして第17番染色体長腕の遺伝子間領域に存在するコドン数44の領域を同定した.その領域から翻訳されるマイクロプロテインをp53MP1と命名し細胞内発現の検討を行ったところ,野生型p53導入により細胞核に発現誘導されることを見出した.p53MP1の核局在は細胞増殖を抑制し,臨床検体での解析で予後不良に関連することを明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
1) GOF変異p53導入による、細胞増殖能、抗がん剤感受性の解析を複数種類の食道癌細胞株、およびヒト正常食道扁平上皮細胞株で行う。 2)次世代シークエンサーを用いて、変異型p53のGOFによって変化するトランスクリプトームを抽出する。そのうちマイクロプロテインに翻訳されることが予想されるトランスクリプトを約120種同定しており、食道扁平上皮癌組織での発現をISH法,qRT-PCR法を用いて解析し、臨床病理学的因子(脈管浸潤、リンパ球浸潤、リンパ節転移、遠隔転移など、治療抵抗性,予後との相関 の有無から、バイオマーカーとしての有用性を順次検討する。
|