研究課題/領域番号 |
23K07381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
渡辺 純夫 順天堂大学, 医学部, 名誉教授 (20138225)
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研究分担者 |
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 教授 (20317382)
山科 俊平 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (30338412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 脂肪性肝疾患 / オートファジー / リソソーム / 核内脂肪滴 / 微小核 / 核内構造体 / 不溶性核蛋白 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本では肝発癌の原因疾患として脂肪性肝疾患の割合が増えつつあるが有効な薬物治療法はまだない状況である。脂肪性肝疾患では肝リソソーム・オートファジー機能障害が病態形成に結び付くことが知られてきている。オートファジー機能障害によって核内蛋白や構造体も影響を受けると考えられるが病態生理学的意義はわかっていない。本研究では脂肪性肝疾患などオートファジー機能が低下した際に観察される核内蛋白・構造体変化の病態生理学的意義を明らかにし、新たな疾患制御のターゲット分子を同定することを目的とした。本研究で得られる知見は脂肪性肝疾患や肝発癌に対する新規治療法開発に結びつく成果になると考えられる。
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研究実績の概要 |
脂肪性肝疾患(MAFLD)などオートファジー機能が低下した際に観察される核内蛋白・構造体変化の病態生理学的意義を明らかにし、新たな疾患制御のターゲット分子を同定するために以下の研究を行った。 ①脂肪肝モデルにおける核内脂肪滴形成の病態生理学的役割の検討。脂肪肝モデルで観察される核内脂肪滴を解析し病態への関与を明らかにするために、単離肝細胞に脂肪酸処置を行って核内脂肪滴形成を誘導する群と、さらにPPARαアゴニストの追加添加によるTFEB発現誘導によってリソソーム―オートファジー機能を回復させるモデルを作成し、核内脂肪滴形成がリソソーム―オートファジー誘導によってどのように変化するのかを解析している。昨年度は、オレイン酸負荷とパルミチン酸負荷によって核内脂肪滴誘導を行い、どちらがモデルとして有用かを検討した。この検討によってオレイン酸負荷よりもパルミチン酸負荷の方が核内脂肪滴を誘導しやすいことがわかったのでこのモデルを軸に蛋白解析に移行することとしている。 ②脂肪肝モデルにおける微小核形成機序と病態への関与の解明。微小核の形成機序と病態への関与を解明するために肝細胞株HepG2にオレイン酸とパルミチン酸を添加し微小核形成を誘導する最適な条件を設定することとした。またPPARαアゴニストの追加添加によるTFEB発現誘導によってリソソーム―オートファジー機能を回復させたモデルも作成した。Hoechst33342による核染色によって微小核発現誘導がパルミチン酸負荷によって生じやすいことを共焦点顕微鏡によって確認した。現在、タイムラプス観察によって微小核誘導の経時的な観察を行っている。またTFEB誘導によって微小核発現が抑制されることも分かったので、この点に関しても現在経時的観察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①脂肪肝モデルにおける核内脂肪滴形成の病態生理学的役割の検討と②脂肪肝モデルにおける微小核形成機序と病態への関与の解明について研究を行っている。この2つの解析のために初年度は安定した核内脂肪滴誘導や微小核誘導が可能となる最適なモデル条件の設定をおこなった。安定したモデル作成ができるようになったため次年度はモデルの解析に移行する予定である。研究自体はほぼ順調に進んでいると考えているが、初年度がモデル作成に多くの時間を費やしたために蛋白やRNA解析に関して若干の遅れが出ている印象である。
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今後の研究の推進方策 |
①脂肪肝モデルにおける核内脂肪滴形成の病態生理学的役割の検討。核内脂肪滴の解析用モデルの安定な作成条件が分かったので、核内脂肪滴形成がTFEB発現誘導によって変化するのかを解析する。またIFNα添加によるPML転写誘導が核内脂肪滴誘導によって変化するかを解析するとともに転写因子TR2, SF1, Sp1発現誘導後のOct4の転写促進に関して評価し、核内脂肪滴合成によって核内PML体の機能が変化するかを明らかにする。また酸性βガラクトシダーゼ染色、リン酸化p53・p21・p16発現を評価し、細胞老化と核内脂肪滴との相関を検証する。 ②脂肪肝モデルにおける微小核形成機序と病態への関与の解明。パルミチン酸添加モデルが微小核形成モデルとして有用であることが分かった。またリソソーム―オートファジー機能回復が微小核誘導抑制に作用することがわかったのでGFP-LC3プラスミド導入やLysotracker Red処置によってオートファゴソームやリソソームを可視化し、微小核がオートファジーやリソソームで分解されるかどうかを共焦点顕微鏡解析する予定である。微小核誘導のピークとなるタイミングを現在、タイムラプス解析し検証中なので、それが判明したところで効率的に微小核を単離する予定である。微小核単離が安定的に可能となったところで微小核に内包される蛋白や膜を構成する蛋白をLC-MS/MSによって同定し、発現蛋白のデータマイニング解析を行い、会合蛋白の予測やオートファゴソームとの介在分子を同定する。
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