研究課題
基盤研究(C)
膵癌の腹膜播種は、腹部膨満や消化管閉塞を生じさせて患者のQOLを著しく低下させる重大な予後不良因子の一つである。近年、直接的に播種へ到達できる腹腔内化学療法への期待が高まっている。本研究は経時的に回収した腹水検体を用いて、血液検体で蓄積してきた高度な「リキッドバイオプシー」解析技術基盤を応用させることで、新領域からの腹水バイオマーカーを導出することを目的とし、新規治療標的の開発への発展を目指す。
膵癌は予後不良な悪性腫瘍の代表であるが、その要因の一つとして膵癌は高率に腹膜播種転移をきたすという点が挙げられる。腹膜播種は予後不良因子であるだけでなく、進行すると腹水貯留による腹部膨満、腸管癒着による消化管通過障害をきたし患者のQOLを著しく低下させることも大きな問題である。一方で、腹水中には腫瘍組織から遊離する播種細胞や分泌顆粒が直接的に供給されることが予想され、全身を循環する血液と比較してより特異性の高い情報が得られる可能性があると考えられる。本研究では腹水中に存在する腫瘍由来の成分を詳細に解析することによって、腹腔内化学療法に対する治療奏功性や耐性獲得の予測が出来るような腹水バイオマーカーを導出することを目的としている。その中で今年度は膵癌患者からの腹水を採取し、①腹水中の膵癌細胞のオルガノイド培養系の確立、②腹水中の細胞外小胞を単離する系の確立を試みた。①腹水中には中皮系細胞、白血球が混在しており、その中から膵癌細胞を単離するための抽出系について検討を加えるとともに、基本的にsingle cellの状態で存在する細胞を培養するための条件検討を行った。その結果、少数例において、継代可能なオルガノイド培養系を確立することが可能であった。②細胞外小胞については、超遠心法を用いた単離を行い、NanoSight systemを用いた小胞径の測定を行い、細胞外小胞が回収できていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
成功率が想定より低いものの、腹水からの膵癌細胞培養には成功しており、また細胞外小胞の単離については問題なく行えている。
培養した膵癌細胞についての発現プロファイルの検討や、細胞外小胞の粒子径や含有されているRNAについて、抗がん治療による経時的な変化が起こっているか検討を加えていく。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件)
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