研究課題/領域番号 |
23K07418
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
得丸 智子 大分大学, 医学部, 医員 (60883379)
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研究分担者 |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
村上 和成 大分大学, 医学部, 教授 (00239485)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / DAMPs / ATP / アデノシン |
研究開始時の研究の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肥満人口の増加に伴って急増している。近年、ダメージを受けた肝細胞から分泌されるATPやアデノシン(Ado)がDAMPsとして、プリン受容体を介して、肝臓の炎症や線維化を助長することが明らかになってきた。本研究では、肝細胞外ATP、Adoを可視化できるゼブラフィッシュを独自に作製し、NAFLD/NASH病態に関する新たな分子メカニズムの解明を目指す。さらに、作製したモデルゼブラフィッシュを用いてNAFLD/NASHに対して既存薬剤スクリーニングを行うことで、標的薬剤の治療薬としての可能性を探りたい。
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研究実績の概要 |
2023年6月に全ての脂肪性肝疾患がsteatotic liver disease(SLD)と総称されるようになった事を機に、改めて全世界的に同疾患への注目が高まっている。近年、ダメージを受けた肝細胞から細胞外に分泌されるATPやアデノシン(Ado)がdamage-associated molecular patterns(DAMPs)として、アルコール性肝疾患(ALD)や代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD、従来のNAFLD)/代謝異常関連脂肪性肝炎(MASH、従来のNASH)病態の肝臓の炎症や線維化を助長することが明らかになってきた。一方で、ALD、MASLD/MASHの病態進行に伴う肝細胞外ATP/Ado動態に関する報告は未だ認められていない。本研究では、肝細胞から放出されるATPおよびAdoに着目し、細胞外ATP、Adoを可視化できるゼブラフィッシュ(GRABATP、GRABAdoフィッシュ)を独自に作製しin vivoにて解析することで、ALD、MASLDを含むSLD病態に関する新たな分子メカニズムの解明を目指し、さらに肝ATP/Ado経路を介する治療応用への展開を目的とした。 本年度は肝臓特異的GRABATP、 GRABAdoゼブラフィッシュを作製・解析することで、SLDの肝細胞外のATP/Ado動態とSLDの病態・進展度との相関、ならびにその分子メカニズムを明らかにした(Tokumaru, T et al. Sci. Rep. 14, 7813(2024))。さらに、MASLD-likeモデルにおいて、クロドロン酸を投与することで病態の改善を認めた。また、in vitro実験にてパルミチン酸投与(PA)にてATP/Adoが細胞外に放出され、GRABATP、 GRABAdoセンサーのGFP蛍光強度と相関することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型ゼブラフィッシュにおいて高脂肪食負荷によりSLDが惹起された。また、HepG2細胞を用いたin vitro実験において同負荷によりATP/Adoが細胞外に放出され、GRABATP、 GRABAdoセンサーのGFP蛍光強度と相関することが判明した。さらに、GRABATP、 GRABAdoゼブラフィッシュを用いたin vivo実験においても、同負荷後に同様の結果を得た。以上より、肝臓特異的GRABATP、 GRABAdoゼブラフィッシュを作製・解析することは、SLDの新たな病態メカニズムを解明するのに有用であることが示された。また、クロドロン酸が同病態を改善したことより、クロドロン酸のSLDの新規治療薬としての有用性が示唆され、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、肝臓特異的GRABATP、 GRABAdoゼブラフィッシュを作製・解析することで、SLDの肝細胞外のATP/Ado動態とMASLD/MASHの病態・進展度との相関、ならびにその分子メカニズムが明らかになった。今後、作製したゼブラフィッシュモデルを用いて、クロドロン酸に加え、SGLT2阻害薬やビタミンE等の既存の薬剤でのスクリーニングを行うことで、ドラッグリポジショニングを含めた病態に対する有効な治療薬の可能性を探りたい。また、ATP受容体であるP2X7受容体のノックアウトゼブラフィッシュを作製することでMASLD/MASHでのATP動態をより明確にしようと考えている。
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