研究課題/領域番号 |
23K07427
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
喜多 絵美里 千葉県がんセンター(研究所), 消化器内科, 主任医長 (20773980)
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研究分担者 |
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 研究所長 (30359632)
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (80581793)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ORFドミナンス / 胆道癌 / 膵癌 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまでの研究で、任意の転写産物がタンパクに翻訳されるか(coding RNA)、されないか(non-coding RNA)や、個々遺伝子の翻訳効率に関しては、Open Reading Frame dominance (ORF-D)という指標が、個々の遺伝子の翻訳効率と正に相関することを見出した。今回我々は、難治がんである胆膵癌におけるORF-Dのプロファイルを検討することで、予後予測に有用なバイオマーカーや治療標的の候補を見出すことを目的とし本研究を立案した。
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研究実績の概要 |
遺伝子進化および生物進化の両過程においては、non-coding RNAに対するOpen Reading Frame dominance (ORF-D) のプロファイルが高い方へ移動しており、がんの進化においても類似性が見られることがわかってきた。ORF-Dはがんの進行過程を解明する上で有用な情報を与えてくれるが、ORF-Dを計算するためには、long-read RNA seq を含めたゲノム解析が必要であり、未解明の部分が多い胆膵がんを対象として、胆膵がんの患者由来オルガノイドを用いて検討を開始した。まずは患者由来腫瘍細胞から培養を開始し継代を行い、必要なDNA,RNAを抽出するとともに、マウスの皮下へ培養細胞を移植し、in vivoの検討を並行して開始している。臨床サンプルを用いた胆膵がん細胞の培養に際しては、膵液や胆汁による細胞へのダメージが強いため培養に不適切な検体も散見されることから、培養に用いる臨床検体の保存状態の見直しを行っている。一方で、初代培養工程が順調であれば、その後のDNA,RNAの抽出については問題なく進められており、一部は全ゲノムシークエンスを行い、ORF-Dを含めた解析に着手している。KRAS変異を有する膵臓オルガノイドを用いた検討では、培養細胞に比較しマウスの皮下腫瘍でORF-Dがnoncoding RNAおよびCoding RNA双方で有意に上昇していた。また胆管がんオルガノイドモデルとは異なり、ORF-Dの変動した遺伝子にはオートファジー関連遺伝子が有意に蓄積していた。現在、これまでの結果をpreprintとして公開し、論文の査読中である(Suenaga et al., BioRxiv 2023)。今後、患者由来オルガノイドのライブラリを増やし、癌種や進行度別のORF-Dプロファイルの解析や、正常細胞やマウス由来オルガノイドとの比較検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
KrasLSL-G12D/+ Trp53flox/floxマウス由来の膵臓オルガノイドにin vitroでCre発現ベクター(Cre)又は空ベクター(V)を導入したオルガノイドをヌードマウス皮下に移植し、Creから発生した腫瘍(Sc)を得た。それぞれからRNAを抽出しlong-read RNA seqを行いORF-Dを計算したところ、Vに比較しCreで、Creに比較しScでORF-Dがnoncoding RNAおよびCoding RNA双方で有意に上昇した。また胆管がんオルガノイドモデルとは異なり、ORF-Dの変動した遺伝子にはオートファジー関連遺伝子が有意に蓄積していた。これら結果を含めこれまでの結果をpreprintとして公開し、現在、論文の査読中である(Suenaga et al., BioRxiv 2023)。また、これまで樹立し胆管がん患者由来オルガノイド2種類については全ゲノムシーケンス、long-read RNA-seqおよび一細胞long-read RNA-seqのRunを終了し、現在、データ解析中である。新たに家族性を疑う胆管がんオルガノイドおよび血液サンプルを得て、現在全ゲノムシーケンスを行っている。 胆膵がん患者由来オルガノイドの培養樹立のため、サンプルを収集しているが、臨床におけるサンプル取得の機会はばらつきがあり、なおかつ胆膵がん細胞の培養に際しては、膵液や胆汁による細胞へのダメージが強いため培養に不適切な検体も散見されることから、適切な検体での培養作業はやや遅れていると考えている 。培養工程が順調であれば、その後のDNA,RNAの抽出については問題なく進められており、培養に用いる臨床検体の保存状態の見直しを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得た患者由来オルガノイドのオミックスデータの解析を進めるとともに、胆管がん発癌リスクとなる病態とORF-D変動の関係を調べるため患者由来オルガノイドのlong-read RNA seqを行う。また、家族性が疑われるサンプルのデータから胆管がん発癌リスクとなる変異やORF-D変動遺伝子を同定する。 膵癌については、これまでの検討でマウス膵癌オルガノイドモデルでオートファジー関連遺伝子のORF-D変動を認めており、これら遺伝子の発現量を調べるとともに、オートファジーの関連遺伝子であるLC3およびp62発現量をシンプルウエスタンにより定量する。さらに培養液にDALGreenを添加しオートリソソーム可視化して蛍光顕微鏡による定量を行い、ホログラフィック顕微鏡によるリアルタイム観察を行いリソソーム動態を確認する。電子顕微鏡レベルではオートファゴソームやオートリソソームの変化に関する検討を併せて行う。並行して、膵癌の患者由来オルガノイドの樹立も進めていく。 胆膵がん患者由来腫瘍細胞を多く集め、安定した培養系を確立し、その後の工程を滞りなく進めていくことを目標とし、臨床検体の取り扱い方法の見直しを行うとともに、解析作業についても並行して行っていく。今後は患者由来腫瘍細胞だけでなく、正常細胞やマウス由来細胞についても解析を行っていく予定である。
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