研究課題/領域番号 |
23K07431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高山 敬子 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (40925103)
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研究分担者 |
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
土屋 輝一郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40376786)
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
鈴木 英雄 筑波大学, プレシジョン・メディスン開発研究センター, 客員教授 (00400672)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | NASH / 歯周病 / Nrf2 / Porphyromonas gingivalis / 臓器連関 / 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH) / Lipopolysaccharide(LPS) / 腸肝連関 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らが作製した“組織細胞特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス”は,腸管上皮細胞,肝細胞,Kupffer細胞を含むマクロファージにのみそれぞれNrf2を発現する.この組織細胞特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスを研究に用いることにより,組織細胞ごとのNrf2を介した腸肝連関におけるLPSの動態,シグナル伝達,更には,組織細胞間のNrf2の連携と,それらがNASH病態に与える影響を比較解析することが可能となった.本研究課題の目的は,これらの新規Nrf2遺伝子改変マウスを用いて,歯周病原菌LPSを介した腸肝連関の視点からNASH発症進展におけるNrf2の防御機構を解明することである.
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研究実績の概要 |
本研究では,臓器連関の視点からLPSを介したNASH腸肝連関におけるNrf2の役割を解明することを目的とし,全身Nrf2遺伝子欠失マウス(Nrf2-KO)をベースにKupffer細胞(肝臓マクロファージ),にのみNrf2を発現するマクロファージ特異的Nrf2遺伝子レスキューマウス(Nrf2-mRes)を作製した.これらのマウスと野生型マウス(WT)に,60%高脂肪食を5週齢から23週齢の18週間摂餌させ,並行して17週齢から23週齢の6週間にわたり,Porphyromonas gingivalis(P.g)由来のLPSを 0.3mg/kg投与し,NASHの病態を比較した. 高脂肪食摂餌により,3系統のマウスで肥満が認められたが,各群で大きな差は認められなかった.また,GTTやITTによる評価では,むしろWTよりもNrf2-KOで耐糖能は軽快していた.一方,WTでは肝の脂肪化は認めるものの肝炎症線維化は乏しかったが,Nrf2-KOではNASHを発症し,更に,Nrf2-mResでは,これらの肝炎症と線維化が軽減していた.Steatosis activity fibrosis score(SAF score)による肝の脂肪化・炎症・線維化の定量評価でも,同様の結果が有意差を持って認められ,qPCR解析でもNrf2-KOでは炎症・線維化に関わる因子のmRNA発現が増加していたものの,これらの変化がNrf2-mResでは経過していた.肝組織でのF4/80のimmunoblotはNrf2-KOとNrf2-mResでは同程度であったにも関わらず,LPS binding protein(LBP)の発現は,Nrf2-mResで軽減しており,マクロファージにおけるNrf2の発現が肝臓におけるLPSの代謝(解毒)に重要な枠割を果たしていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,歯周病菌LPSとNASHの腸管連関におけるNrf2の役割を明らかにする目的で,Porphyromonas gingivalis(P.g)由来のLPSの腹腔内投与+高脂肪食摂餌モデルと,P.g生菌それ自体の経口ゾンデ投与+高脂肪食摂餌という2つのモデルを計画した. そのうち,P.g由来LPS腹腔内投与モデルについては,先述したようにマクロファージのNrf2がLPSの解毒代謝に重要な役割を果たすという結果が得られた.ただし,LPS腹腔内投与モデルでは,P.gが腸管細菌叢に与える影響や,腸管上皮のNrf2の役割を検討できないため,今後は腸管上皮細胞特異的Nrf2レスキューマウスも含めて,P.g生菌をゾンデ投与し,NASHの表現型,更に,P.gによる小腸上皮や内臓脂肪への影響を解析する計画である.遺伝子改変マウスの繁殖は問題なく進捗しており,P.g生菌のゾンデ投与を開始している.
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今後の研究の推進方策 |
P.g生菌の経口ゾンデ投与が完了次第,肝組織の病理標本評価によるNASHの病勢評価,血液生化学検査,qPCRを行う.また,P.gが小腸上皮に与える影響については,HE染色による小腸上皮の障害の評価に加え,粘液分泌タンパクであるMuc2やtight junctionタンパクであるZo-1の免疫染色,また,F4/80免疫染色によりマクロファージの浸潤程度を評価する.また,P.gにより内臓脂肪への炎症波及も想定されるため,精巣上体の白色脂肪の炎症(crown like structureなど)を評価予定である. 臨床研究については,肝臓生活習慣外来に通院していたNAFLD患者について,歯周病の評価を行い,血液生化学検査,腹部超音波検査などのNAFLDに関わる臨床情報についてデータの集積・解析を開始している.
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