研究課題/領域番号 |
23K07468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
及川 律子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (60449395)
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研究分担者 |
山本 博幸 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 教授 (40332910)
渡邊 嘉行 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (90329243)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ミトコンドリア / HBV組み込み / 逆行性シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまでにHBVに感染した肝癌細胞株でヒトミトコンドリア内MTCO3ゲノムにHBV組み込みを発見し、MTCO3とHBVの共局在によるミトコンドリア機能異常を明らかにした。ミトコンドリアは逆行性シグナル伝達を介して核と通信し細胞の恒常性を維持しているため、ミトコンドリアの機能異常に応答して腫瘍形成を促進するエピジェネティックな変化と核遺伝子発現プロファイルの変化を引き起こす。本研究では、HBVのヒトゲノム内への組み込みによって引き起こされるエピジェネティック修飾異常の全容を明らかにし、ミトコンドリア機能異常を介して引き起こされる発癌のメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)によるヒトゲノムへの組み込みの多くが肝細胞癌(HCC)発症要因となるが、いまだ機序の解明には至っていない。我々はこれまでに、組み込み部位を特異的に抽出する手法を用いてB型肝炎ウイルス由来の肝がん細胞株HepG2.2.15のNGS解析を行った結果、ヒトのMitochondrially Encoded Cytochrome C Oxidase III(MTCO3)近傍にHBV断片であるHBs PreS1とHBcの組み込みを発見し、その組み込みがミトコンドリアによるDNAメチル化制御を受けていることを明らかにした。更にHBV組み込みによるミトコンドリア機能異常が、ROSの上昇、ATP産生低下を示す研究成果を得ている。ミトコンドリアは逆行性シグナル伝達を介して核と通信し細胞の恒常性を維持しているため、ミトコンドリアの機能異常に応答して腫瘍形成を促進するエピジェネティックな変化と核遺伝子発現プロファイルの変化を引き起こすと推察した。 本研究でHBV組み込みによるヒトミトコンドリアMTCO3の遺伝子異常が引き起こすミトコンドリアから核への逆行性シグナル伝達を介した網羅的なDNAメチル化制御メカニズムを明らかにすることはHCC発症の原因であるか結果であるか確認する鍵となり、ミトコンドリアが関係する疾患を含めた多くの生命現象を理解する上で重要な役割を果たすと期待される。 この組み込みによる発癌機序を解明することは新たな肝発癌機序の発見、予防法の確立または創薬への臨床応用につながる意義の高い研究となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他の研究と並行して行っているため、本研究にかけられる時間が予定よりも少なくなってしまった。また培養細胞が上手く育たなかったため、サンプルの収集に予定よりも時間がかかってしまった。また本研究ではロングリード解析を行うため、断片化していない質の良い長い配列を保ったサンプルが必要であったため、DNA抽出およびRNA抽出の作業に時間を要しました。
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今後の研究の推進方策 |
既にミトコンドリア機能異常によるROSの上昇、ATP産生低下、ミトコンドリアDNAメチル化の成果は得られている。この成果を踏まえて、ナノポアシーケンサーを用いたロングリード解析によるRNA-seqおよびDNAメチル化解析を行う。ナノポアシーケンスで用いるDNAサンプルおよびRNAサンプルの抽出を行い、シーケンス可能な濃度の確認作業は終了している。また、ナノポアシーケンスで用いるライブラリー調整試薬の準備および機器のメンテナンス作業、データ解析に用いるバイオインフォマティクスツールのインストールは終了している。次年度早々に、シークエンスを試みるとともに、バイオインフォマティクス解析に進める予定である。今後は、研究分担者と密に研究の報告および相談を行うことで、より円滑に研究を進める予定である。特にバイオインフォマティクスによる解析については、解析方法を何通りか検討する。
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