研究課題
基盤研究(C)
心血管疾患のうち指定難病である家族性大動脈瘤・解離症候群(ならびに肺動脈性肺高血圧症は若年発症例や重症例が多い。これらの背景にはTGF-βシグナルに関与する因子の遺伝的異常が関与しているが、その病態については不明点が多い。これらの病態解明を困難としている、(1)二次元に観察範囲が留まる、従来の病理切片での形態評価、(2) ヒト遺伝子変異を反映しない人為的誘導モデルが多いこと、(3) 実際のヒト組織を用いた病態仮説の検証が困難であること、の3点を克服すべく、三次元可視化システム、ヒト疾患家系遺伝子変異を基にした遺伝子改変マウス、ヒト検体、を軸に病態解明を推し進め、治療法開発につなげていきたい。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)については、ヒト肺動脈性肺高血圧症(PAH)家系におけるBMPR2変異をマウスに導入したが(Bmpr2-KIマウス)、右室圧上昇および右心肥大所見は認めず、PAH発症にはいたらなかった。そのため、低酸素誘導PAHモデルにおいてその代償に大きな役割を果たしているPGC1-aを内皮細胞特異的にノックアウトしたところ右室圧上昇および右心肥大を認め、PAH発症に至った。また肺血管内膜増殖や叢状病変といった、マウスでは再現困難であった重症病変を認め、新規PAHモデルマウスとしての確立に成功した。またこのマウスの肺をシングル核RNAシーケンス解析したところ、変異モデル特異的な内皮細胞の亜集団を認め、病態への関与が疑われた。家族性大動脈瘤/解離(TAAD)においては、ヒトTAAD家系で認めたMYH11変異を模した変異をマウスに導入したところ(Myh11-KIマウス)、大動脈基部、上行大動脈の瘤形成を認め、新規モデルの確立に成功した。またすでに存在しているロイスディーツ症候群モデルマウス(LDSマウス)において、骨髄球特異的にTgfbr2を欠損させると、大動脈瘤形成が軽減された。
2: おおむね順調に進展している
PAH、TAADの両者において新規動物モデルの作成に成功し、またPAHにおいてはシングルセルRNA解析を行うことにより、病的な細胞亜集団の特定に至ったため。
新規PAHモデルについては、病的な細胞亜集団に特異的な因子、シグナルを同定し、治療介入の対象となりうるかについての検討を行う。新規TAADモデルおよびLDSモデルについてはRNAシーケンスなどを行い、病態に関与する因子の同定を試みる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
JCI Insight
巻: 8 号: 17 ページ: 162632-162632
10.1172/jci.insight.162632