研究課題/領域番号 |
23K07493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | (財)冲中記念成人病研究所 |
研究代表者 |
桑原 政成 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20728290)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | キサンチンオキシダーゼ阻害薬 / 離脱症候群 / 心血管疾患 / 尿酸 / 疫学 / 高尿酸血症 |
研究開始時の研究の概要 |
尿酸は、ヒトにおいてエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)の最終代謝産物で あり、エネルギー消費が多くなる状態でも上昇し、急性心不全などにおいても高尿酸血症を認めやすい。また高尿酸血症は、心腎血管疾患の発症にも密接な関係があることが報告されている。高尿酸血症の治療として、キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)が広く使用されているが、XOIの中止例で多くの死亡が認められることが明らかになっている。我々はXOI離脱症候群という概念を仮説と共に提唱して、その関係性を明らかにしてきたが、その原因や機序に関してはいまだに不明である。本研究で、XOI離脱症候群の原因と機序について解明を行う。
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研究実績の概要 |
キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)の使用が、予後に影響するかについて、これまでの日本循環器学会の循環器疾患診療時実態調査(JROAD)のデータを利用した解析結果を、欧州心臓病学会(ESC 2023、アムステルダム)で発表した。また同内容を「Xanthine oxidase inhibitors treatment or discontinuation effects on mortality: evidence of xanthine oxidase inhibitors withdrawal syndrome」のタイトルで、2024年に論文化した(Front Pharmacol. 2024 Jan 8;14:1289386)。 本研究は20歳から90歳の急性冠症候群または心不全の入院患者1,648,891例を解析した。尿酸降下薬を使用していない患者(n=1,292,486)とXOI薬を使用している患者(n=315,388、他の尿酸降下薬を使用しているn=41,017を除く)の死亡率を比較したところ、各種因子調整後も、XOI治療群は尿酸降下薬無投与群と比較して有意に死亡率が低かった(オッズ比:0.576、95%信頼区間:0.567-0.587、p<0.001)。さらに、XOI継続投薬群(n = 226,261)とXOI離脱群(n = 89,127)の死亡率を比較したところ、 XOI離脱群で、XOI継続群と比較して死亡率が有意に高かった(19.8% vs 0.03%;p<0.001)。本研究により、心血管疾患患者に対するXOI治療は死亡率の低下と関連するが、XOIの中止は死亡リスクの上昇と関連していることが明らかにされた。 上記内容が、心血管疾患患者以外の集団でも当てはまるかなど、更に解析を進めていくため、今年度の研究費で2023年までのJMDCデータを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに行った研究を、2023年8月に欧州心臓病学会(ESC 2023、アムステルダム)で発表することができ、また論文として掲載されるまでに至った。今後は、新たに購入した2023年までのJMDCデータを用いて、キサンチンオキシダーゼ阻害薬に加え、尿酸排泄薬についても、その効果と離脱症候群の影響について検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)の中止に伴い、心血管死亡、総死亡が増加する背景は何か」という問いに対して、データベースを用いた疫学的手法によって、答えを導く。これまでに行った、日本循環器学会の循環器疾患診療時実態調査(JROAD)のデータを利用した解析結果が、循環器病を持たない方を対象としても当てはまるかについても、検討を行う。2023年までのJMDCのレセプトデータを今回の研究費で新規に購入しており、そのJMDCデータを解析することで、「キサンチンオキシダーゼ阻害薬の中止に伴い、心血管死亡、総死亡が増加するか」という問いに加え、XOIを含むその他の尿酸降下薬も含めて、同薬を中止をしなかった場合の効果についても、日本人を対象として明らかにする。 具体的な方法としては、XOIの処方群において、他の合併疾患などの背景因子を調整し、XOI単独で中止した患者を抽出することによって検討を加える。また、2019年のXOIの添付文書改訂により、XOIを中止した症例が増えた可能性を考え、同薬の中止した症例とその死亡率についても検討を行う。2020年から2023年までの追加で購入したデータを、2019年以前のデータと比較することによって、同解析を行う。 また、尿酸降下薬の種類によって差異がある可能性も考慮し、JMDCデータを用いて、XOIだけでなく、尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンやドチヌラドの内服中止の影響についても解析を加える。 JMDCデータの上記解析を今年度中にまとめ、最終年度の2025年度に今年度行った解析結果を学会発表、論文作成につなげることを目標とする。
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