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肝線維化は心不全を悪化させるか

研究課題

研究課題/領域番号 23K07543
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分53020:循環器内科学関連
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

辻野 健  兵庫医科大学, 薬学部, 教授 (90283887)

研究分担者 内藤 由朗  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049)
伊藤 都裕  兵庫医科大学, 薬学部, 講師 (20767363)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワード肝線維化 / 心不全 / 心房細動 / MASLD
研究開始時の研究の概要

近年、心臓と他臓器との関連が心不全の病態進行に果たすことが明らかになった。その中で心臓と肝臓の関連が注目されている。本研究では肝臓の線維化が心不全を悪化させるか否かを動物実験および臨床研究により明らかにする。そのために、心不全を発症する動物モデルに肝臓の線維化を誘発する操作を加え、心不全が悪化するか否かについて検討する。また肝線維化を抑制する薬剤が心不全の悪化を予防するかどうかについて検討する。さらに臨床研究において、肝線維化マーカーが心機能の変化に及ぼす影響と、肝線維化マーカーに影響を及ぼす臨床的因子を明らかにする。

研究実績の概要

近年、心臓と他臓器との関連が心不全の病態進行に大きな役割を果たすことが明らかになった。その中で、臨床データから、代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)や、特にそれによる肝線維化が心臓の病態(心不全、心房細動など)を悪化させる経路が存在することが示唆されている。
我々は兵庫医科大学病院循環器内科外来通院中の2型糖尿病合併高血圧患者のうち、2017年~2020年に心エコー検査と血液検査を受け、1~2年後に再度同様の検査を受けた患者を対象として、肝線維化の非侵襲的指標であるFIB-4 indexと心エコー上の左房容積との関連を調査した。その結果、心房細動患者ではFIB-4 indexが高値を示すこと、心房細動を合併しない患者においてFIB-4高値は心エコー上の左房容積増大と関連することを明らかにした。このことから肝線維化は左房容積を増大させることにより心房細動や心不全のリスクを高めることが示唆された。
さらに、その機序を基礎研究で明らかにするため、肝線維化を伴う心不全モデルを作成することを試みた。Dahl食塩感受性高血圧ラット(DSラット)は食塩負荷により高血圧と心不全を発症する動物モデルである。一方、肝線維化を誘発させる方法として、コリンとメチオニンを減量させた食事(CDAA食)で飼育するものがある。我々はDSラットにコリンとメチオニンが欠乏した8%食塩含有食を与え、肝線維化を合併した心不全ラットを作成することを試みた。その結果、脂肪肝を誘発することには成功したが、摂食量が減少し、血圧が十分上昇せず、心不全を発症しなかった。メチオニンを欠乏させるために餌中の蛋白質をアミノ酸に置き換えなくてはならないが、アミノ酸成分食はおいしくないせいで食べなくなったことが推測された。そこで心不全を発症させることができるよう、プロトコールをさらに工夫する必要が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的は①肝線維化が心機能を悪化させるかどうかをラットモデルで検討すること、②肝線維化の改善が心機能を改善させるかどうかを明らかにすること、③高血圧患者において肝線維化が心機能を悪化させるかどうかを明らかにすることであった。
まず①について、DSラットにおいて脂肪肝を誘発することに成功し、肝臓の組織学的検討について経験を積むことができたのはポジティブな面である。一方、血圧が上昇せず、心不全を誘発できなかったのはネガティブな面である。従って動物実験は若干遅れ気味であるが、プロトコールを工夫し、改善することは可能と考えている。②については、①においてモデルが確立されてからのことであるので、今のところ評価できない。一方③については順調に進んでいる。兵庫医科大学病院循環器内科外来通院中の2型糖尿病合併高血圧患者において、肝線維化の指標FIB-4 indexは高血圧患者において左房容積の増大を予測する独立した因子であることが予備的な検討で示唆されていたが、患者を2型糖尿病合併高血圧患者に絞り、症例数を200近くにまで増やし、同様の結果が得られたので、その結果はより確実なものとなった。またFIB-4 indexは、年齢が含まれているため、加齢の影響を受けやすいが、年齢を含まない別の非侵襲的な指標APRIも左房拡大を予測することが明らかにできたので、結果はより確実なものとなったと考える。また、SGLT2阻害薬の使用者ではFIB-4 indexの上昇が抑制されることも明らかにした。このことから、MASLD合併やFIB-4高値の2型糖尿病合併高血圧患者ではSGLT2阻害薬の積極的な使用が望ましいことが示唆された。
以上のように基礎研究は若干遅れ気味であるが、臨床研究では予想どおりの結果が得られ、学会発表を行うこともできたので、全体としてはおおむね順調に進展していると自己評価した。

今後の研究の推進方策

基礎研究では、Dahl食塩感受性高血圧ラット(DSラット)に心不全とMASLD/肝線維化を誘導するモデルを作成する必要がある。我々は、DSラットに最初から8%食塩含有CDAA食を与えたのでは摂食量の低下による血圧上昇不足により心不全を発症させることは難しいと考えた。そこで、6週齢から10週齢まで、通常の8%NaCl食を与え、十分に血圧を上昇させ、そこからCDAA食にスイッチすることを考えた。さらに、ケトン体であるβヒドロキシ酪酸(D-BHB)が肝線維化を改善するかどうかを検討することとした。具体的には、以下のようなプロトコールで行う。まず6週齢にてコントロール群(通常食を与える)と、HS群(8%NaCl食を与える)に群分けする。10週齢にてHS群をさらに以下の4群に分ける。(1) HS+アミノ酸コントロール群:8%NaCl含有CDAAコントロール食(タンパク質をアミノ酸に置き換え、L-メチオニン5.1g/kg飼料含有、重酒石酸コリン2.5g/kg飼料含有、8%NaCl含有食)を与える。(2) HS+アミノ酸コントロール群+D-BHB群:8%NaCl含有CDAAコントロール食を与え、D-BHBを飲水に混和(5%)して投与する。(3) HS+CDAA群:8%NaCl含有CDAA食(タンパク質をアミノ酸に置き換え、L-メチオニンを1.7g/kg飼料に減量、重酒石酸コリン不添加、8%NaCl含有食)を与える。(4) HS+CDAA+D-BHB群:8%NaCl含有CDAA食を与え、D-BHBを飲水に混和(5%)して投与する。
以上のようなプロトコールで、DSラットに心不全とMASLD/肝線維化を誘導したい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 2型糖尿病合併高血圧患者において肝線維化の指標FIB-4 indexは左房拡大と関連する2024

    • 著者名/発表者名
      北村優太、伊藤都裕、金孝泉、内橋未希、打越里奈、岡田優美花、富田月子、内藤由朗、朝倉正紀、石原正治、辻野健
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 2型糖尿病合併高血圧患者においてSGLT2阻害薬は肝線維化の指標FIB-4 indexを改善させる2024

    • 著者名/発表者名
      内橋未希、伊藤都裕 、打越里奈、岡田優美花、北村優太、金孝、富田月子、内藤由朗、朝倉正紀、石原正治、辻野健
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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