研究課題
基盤研究(C)
NRDCによる心臓交感神経分布機構は、神経栄養因子や軸索反跳因子の関与が示され、また、洞房結節自動能の調節機構は、イオンチャネルの発現制御によるものであることが明らかになりつつある。一つのプロテアーゼが細胞内局在を変え、異なる働きをする生理学的意義を明らかにすることで、循環器疾患における未知の分子機序解明の足がかりになると考えた。よって本研究では「NRDC酵素活性は、生理学的な状態では心臓において洞房結節自動能に必須のイオンチャネル遺伝子の転写制御に重要な役割を持ち、心疾患においても病状悪化に関与する」という仮説を立てた。
M16ファミリーに属するメタロプロテアーゼ・ナルディライジン(NRDC)は、欠損マウスの解析から、洞房結節自動能に必須のイオンチャネルの転写制御を介して心拍数を制御することが明らかとなったが、その酵素活性の意義は未だ不明であった。また、患者血清におけるNRDC測定結果から、健常人と比較して急性冠症候群(ACS)、タコツボ型心筋症においてNRDC値の上昇を認めたことから、循環動態制御や心血管疾患の病態にNRDCが関与していることが示唆された(IJC2017)。この先行研究を踏まえ前向き臨床研究を行い、心筋トロポニン陰性のACS発症早期において、血清NRDCが上昇することを確認した。生体内でのNRDC酵素活性の意義を明らかにするため、酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスを作製した。本ノックインマウスは、NRDC欠損マウスと類似した全身性表現型を呈した。遺伝型背景がC57B6系の場合、ホモ変異体は生後2日目までに全て死亡したため、生後1日齢における酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスの心電図を施行したところ、野生型マウスと比較して有意な徐脈を認めた。さらに、ICR系への戻し交配を行い、6世代目の酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスを解析したところ、一定数の生存成体が得られた。心電図テレメトリーシステムを用いて、成体酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスに対する自由行動下長時間心電図計測及び内因性心拍数計測を行い、野生型と比較して有意な徐脈ならびに内因性心拍数の低下を認めた。また、臓器特異的ノックインマウスの作製を行った。以上より、NRDC酵素活性が循環動態制御において重要な役割を担う可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスにおける循環動態および心臓表現型解析は順調に進行した。一方、野生型マウスを用いた酵素活性阻害薬のスクリーニングについては候補薬を絞り込んでいるところである。心血管疾患モデルを作製するための十分な個体数を得るのに時間を要しているが、並行して臓器特異的ノックインマウスの作製を行い成功しており、概ね順調であると言える。
酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスは全身性の表現型を呈するため、結果の解釈に体格差を考慮する必要がある。そのため新たに臓器特異的酵素活性欠損変異型NRDCノックインマウスを作製した。今後、本マウスを用いて心疾患モデルでの解析を進める。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Cardiology
巻: 0 号: 4 ページ: 0-0
10.1016/j.jjcc.2024.03.005
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 693 ページ: 149355-149355
10.1016/j.bbrc.2023.149355
Internal and Emergency Medicine
巻: 19 号: 3 ページ: 649-659
10.1007/s11739-023-03508-0
Frontiers in Cardiovascular Medicine
巻: 10 ページ: 1-19
10.3389/fcvm.2023.1042272
https://www.shiga-med.ac.jp/pharm/