研究課題/領域番号 |
23K07570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 昌文 山形大学, 医学部, 教授 (60360096)
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研究分担者 |
大瀧 陽一郎 山形大学, 医学部, 助教 (80732693)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 心腎症候群 / Rabaptin5 / 病的心肥大 / 初期エンドソーム |
研究開始時の研究の概要 |
心腎症候群の予後は極めて不良である。心腎症候群では、心筋組織再構築と尿細管障害を認めるが、その機序は解明されていない。私たちは、心腎症候群モデルマウスの腎組織で遺伝子スクリーニングを行ない、RABEP1の遺伝子発現が亢進する知見を得た。RABEP1は、Rabaptin5をコードし、心筋細胞と近位尿細管上皮に発現する。Rabaptin5は、初期エンドソームの調節因子であり、受容体の分解やリサイクルを介して心・腎組織の恒常性を維持している可能性がある。心腎症候群発症におけるRabaptin5の役割をin vitroおよびin vivoの実験系で検討する。心腎症候群の新たな治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
心不全の患者数は増加しており、日本人の主要な死因である。心不全患者では腎機能障害が併存することが多く、互いに増悪させあうため、極めて予後は不良である。この病態は心腎症候群とよばれ、心筋組織再構築と尿細管障害を認めるが、その機序は十分に解明されていない。私たちは、心腎症候群の腎組織で発現が変化する遺伝子が、発症機序に関与していると考え、心腎症候群モデルマウスの腎組織で遺伝子スクリーニングを行ない、RABEP1の遺伝子発現が亢進する知見を得た。RABEP1は、Rabaptin5をコードし、心筋細胞と近位尿細管上皮に発現する。Rabaptin5は、初期エンドソームの調節因子であり、上皮成長因子受容体などの受容体の分解やリサイクルを介して心・腎組織の恒常性を維持している可能性がある。心・腎組織における初期エンドソームやRabaptin5の機能はほとんど検討されていない。本研究では、心腎症候群発症におけるRabaptin5の役割をin vitroおよびin vivoの実験系で検討する。心腎症候群の新たな機序を解明し、悪性サイクルを断ち切る治療法の開発を目指す。 2023年は、主にRabaptin-5の発現解析を行った。新生仔ラット培養心筋やH9C2細胞に対して、心肥大刺激(AngII、Wnt3a)や酸化ストレス刺激(過酸化水素、ドキソルビシン)を行った。いずれの刺激においても、Rabaptin-5の蛋白質発現は経時的に亢進した。siRNAを用いてRabaptin-5をノックダウンした培養心筋細胞に対して、心肥大刺激をおこなったところ、Aktのリン酸化が有意に亢進した。マウス心・腎組織での発現を検討したところ、Rabaptin-5の発現は大動脈縮窄手術後早期には増加し、56日後には有意に低下した。Rabaptin-5のfloxマウスまたは過剰発現マウスの作成を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rabaptin-5の発現解析として、培養心筋細胞に対して、心肥大刺激や酸化ストレス刺激を行った。蛋白質発現は、すべての刺激で亢進した。過酸化水素やドキソルビシン刺激といった受容体を介さない刺激に対しても増加しており、エンドソームによる取り込みとは異なる機序の存在が示唆された。一方、心肥大刺激において、mRNA発現を検討したところ、有意な発現変動を認めなかった。Western blottingでは、Whole cell lysateを用いており、蛋白合成の促進ではなく、細胞膜からエンドソームを介して蛋白質発現が変動した可能生が示唆された。免疫染色では、Rabaptin-5は初期エンドソームに分布していた。エンドソーム蛋白を抽出して、刺激に対するRabaptin-5の発現をより詳細に検討していく。培養心筋細胞において、Rabaptin-5をsiRNAを用いてノックダウンしAngII刺激を行ったところ、AKTのリン酸化が亢進した。心筋細胞肥大が増悪する可能生があり、検討を行っている。他方、Rabaptin-5をノックダウンすると、TGFβのmRNAレベルの発現が抑制された。線維化に対しては、抑制的に働く可能生が示唆された。 動物実験に関しては、心筋特異的Rabaptin5ノックアウトマウスを作成する予定であった。しかし、Flox mouseの作成にめどがたっていない状況にある。他方、ユビキチン転移酵素ITCHの心筋特異的過剰発現マウスにおいて、Rabaptin-5の発現が亢進することがわかった。ITCHをノックダウンすると、Rabaptin-5の発現が低下した。ITCHはRabaptin-5の発現と関連することが示唆された。そこで、予備実験としてITCH過剰発現マウスに対して大動脈縮窄術を施行し、Rabaptin-5との相互作用を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、心筋細胞と腎尿細管上皮細胞におけるRabaptin-5の機能解析を主に予定している。<心筋細胞におけるRabaptin5の機能解明>:心筋細胞においてRabaptin5が初期エンドソームに局在することを免疫染色で確認する。我々は、心肥大刺激(heparin binding EGF-like growth factor (HB-EGF), Angiotensin II, Endothelin 1, Wnt3aなど)を加えた場合に、Rabaptin5の発現量が増加する知見を得ている。遺伝子導入やsiRNAによりRabaptin5をoverexpressionまたはknockdownした心筋細胞に心肥大刺激を加え、初期・後期エンドソームに与える影響を検討する。特にRabaptin5をノックダウンし、HB-EGFで刺激した際に、心筋細胞肥大が増悪するか検討する。 <尿細管上皮細胞におけるRabaptin5の機能解明>: 尿細管上皮細胞は、腎線維化に関与する。HK2細胞やHEK293T細胞を用いて、Rabaptin5の発現をmRNAと蛋白質レベルで検討する。また、尿細管上皮細胞において、免疫染色を用いて、Rabaptin5が初期エンドソームに局在することを確認する。次に、酸化ストレス刺激(H2O2や低酸素など)を加えた場合に、Rabaptin5の発現量が変化するか検討する。遺伝子導入やsiRNAによりRabaptin5をoverexpressionまたはknockdownした尿細管上皮細胞に酸化ストレスを加え、初期・後期エンドソームに与える影響を検討する。Rabaptin5をノックダウンしたHK2細胞にamphireglin(AREG)AREGを投与し、EGFR経路への影響を検討する。
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