研究課題/領域番号 |
23K07616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
慶長 直人 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 副所長, 副所長 (80332386)
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研究分担者 |
森本 耕三 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 抗酸菌部, 主任研究員 (40511879)
土方 美奈子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 部長 (90332387)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 原発性線毛運動不全症 / PCD / 気道線毛クリアランス / 転写開始点 / 遺伝子発現 / RNA網羅発現解析 |
研究開始時の研究の概要 |
慢性の上/下気道感染を主徴とする原発性線毛運動不全症(PCD)における、50を越える原因遺伝子の全貌はいまだ明らかでないが、最近、我々は日本で最も高頻度に見られるDRC1遺伝子の遺伝子異常を同定した。検査上、鼻腔一酸化窒素(nNO)産生量の低値がPCDを疑う最初の手がかりになるが、多くのPCD症例でnNOが異常低値を示すメカニズムは不明である。本申請ではPCDの鼻粘膜組織に発現する遺伝子の網羅解析、特に5'末端RNA網羅発現解析を加えることにより、nNO低値、肺機能、気管支拡張の程度など臨床病態と気道粘膜遺伝子発現制御、分子病態との関連を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
慢性の上/下気道感染を主徴とする原発性線毛運動不全症(線毛機能不全症、primary ciliary dyskinesia; PCD)には、すでに50以上の原因遺伝子が知られている。我々は日本のPCDの原因として最も多く見られるDRC1遺伝子の大規模な欠失異常を報告してきた (Morimoto K, et al. 2019, Keicho N, et al. 2020) が、いまだに病態が不明で、原因を特定できない症例も多く見られる。PCD症例では多くの場合、鼻腔一酸化窒素 (nNO) 産生量が低値を示し、スクリーニング検査として有用であるが、そのメカニズムは明らかでない。本研究では鼻粘膜上皮生検検体のRNA網羅発現解析、特に最新のmRNA 5'末端網羅発現解析を加えることにより、nNO測定値のほか、肺機能や気管支拡張の程度などの臨床所見と、PCDに特徴的な気道粘膜遺伝子発現制御・分子病態との関連を明らかにすることを目指している。 初年度は、鼻粘膜上皮生検検体から得られた微量なRNAでも解析可能な、mRNAの5'末端の新しい網羅発現解析方法 STRIPE-seq (Policastro RA, et al. 2020)を導入し、キャップ構造を持つ5'末端配列を網羅的に取得した。この方法により気道上皮組織の遺伝子発現制御状態に関する有用な情報が得られることが確認された。 PCDにおいて障害される気道線毛クリアランスに関連した遺伝子群の発現定量、転写開始点の同定、それら候補遺伝子を含む上方/下方制御遺伝子の転写誘導状態を明らかにすることにより、PCDの分子病態の解明、病態の修飾、改善の可能性を探ることができると考えられる。得られた知見は、将来的に診断マーカーとしての利用、あるいは粘液組成に影響を与えて細菌感染の定着を阻止する治療法の開発などへの応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鼻粘膜上皮生検から抽出した全RNAを材料として、STRIPE-seq ライブラリー作成を行ない、次世代シークエンサー NextSeq 500(イルミナ)を用いて解析を行った。本法は正確な発現量解析を行うために、分子バーコード (Unique Molecular Identifier、UMI) を組み込み、一つのUMI配列が一つのmRNA分子5'末端へのアダプター分子 (template-switch oligo) の付加反応に対応する。同じUMIタグ分子のPCR duplicatesからシーケンシングされたリードを単一のクラスターにグループ化するクラスタリングステップを含む解析系を構築した。高品質なRNAから比較的断片化の進んだRNAまでを含む複数の全RNA、各100 ngを用いたが、いずれの材料からも線毛関連遺伝子の5'末端RNA発現データが得られ、微量の生検検体を用いた5'末端mRNA網羅発現解析方法として、本法の効率が十分に良いことが確認された。一部の線毛関連遺伝子ではupstream antisense RNAs (uaRNA)と考えられるRNAの発現も認められ、遺伝子制御に関わる今後の検討が必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
PCD疑い患者から電子顕微鏡観察用の鼻粘膜上皮生検検体を専用のキュレットを用いて採取する時に、一部をRNA発現解析のために、RNAlater (ThermoFisher)に浮遊させ、凍結保存しており(Hijikata M, et al. 2023)、nNO濃度測定値・線毛構造の電子顕微鏡検査(EM)・PCD原因遺伝子解析結果・臨床データ等あわせた解析が可能である。今年度、新しいSTRIPE-seq法の導入を行ない、次年度以降はシークエンス解析数を増やし、total RNA-seqおよびSTRIPE-seqから得られるRNA発現データを解析し、nNO測定値の高低、同定されたPCD原因遺伝子によって発現様式の異なる気道粘膜由来の遺伝子およびそれらの遺伝子の活性化プロモーター/エンハンサー領域を明らかにする。
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