研究課題/領域番号 |
23K07641
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 元誉 産業医科大学, 医学部, 教授 (40398243)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カスパーゼ4 / 肺腺癌 / 肺癌 / Caspase / パイロトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
炎症性カスパーゼはプログラム細胞死(パイロトーシス)の惹起や炎症性サイトカインの成熟に関与する因子である。近年、免疫チェックポイント阻害薬が肺癌治療にも適応され、有効性が明らかとなっているが、その奏功率は未だ十分ではない。一方、パイロトーシスに着目した肺癌治療法は未だ存在せず、肺癌におけるパイロトーシスの誘導は新たな肺癌治療法開発へとつながる可能性を有している。本研究では肺癌における炎症性カスパーゼの制御メカニズムを解明し、新規肺癌治療法開発の基盤研究を展開する。
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研究実績の概要 |
炎症性カスパーゼはプログラム細胞死(パイロトーシス)の惹起やIL-1βなどの炎症性サイトカインの成熟に関与する因子である。申請者は炎症性カスパーゼが、①癌微小環境下で生じている小胞体ストレス刺激にて誘導されること、②肺癌細胞の免疫チェックポイントタンパク誘導に関与することを見出した。本研究では癌微小環境の変化によって誘導される炎症性カスパーゼに着目し、肺癌組織における免疫チェックポイント分子の時空間的発現メカニズムの解明及び肺癌におけるパイロトーシス制御方法を探索し、新規肺癌治療法開発の基盤研究を展開することを目的としている。今年度はヒト肺癌細胞株にてCaspase-4発現細胞株とコントロール細胞株のRNAシーケンスを行い、パスウェイ解析の結果を比較検討した。その結果、Caspase-4発現細胞株ではコントロール細胞株と比較して血管新生と細胞運動能に関与する遺伝子発現が上昇していることを見出した。さらにCaspase-4発現細胞株では抗アポトーシスに関与する遺伝子(BCL2ファミリーの一部)も上昇することを明らかにした。一方、Caspase-4ノックアウト細胞株を樹立しRNAシーケンスにて解析した結果、Caspase-4ノックアウト細胞株ではコントロール細胞株と比較して、血管新生および細胞運動能に関与する遺伝子発現が低下していた。また、臨床検体におけるCaspse-4の発現を解析した結果、ステージ3,4の肺腺癌組織中のCaspase-4の発現はステージ1,2の肺腺癌と比較して高値であった。以上の結果より、肺腺癌におけるCaspase-4の発現は癌細胞の運動能及び腫瘍血管新生を促進させ、癌進展に重要な役割を担っている可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定であった実験は、①炎症性カスパーゼの誘導メカニズム及び炎症性カスパーゼによる免疫チェックポイントタンパク発現誘導メカニズム解明、②マウス担癌モデルを用いた炎症性カスパーゼの機能役割解明、③肺癌におけるCaspase-4, Caspase-5の機能解明であった。実験①に関しては、Caspase-4発現細胞株のRNAシーケンスの結果からシグナル解析を行うことで着目すべき転写因子を見出している。次年度はそれらの転写因子候補からCaspase-4の誘導に最も関与する転写因子を同定したいと考えている。実験②に関しては既にマウス担癌モデルの作成に着手している。詳細な解析は次年度に行う予定である。実験③に関しては、RNAシーケンスの解析結果より、肺腺癌におけるCaspase-4の発現は癌細胞運動能と腫瘍血管新生を亢進させることを見出した。以上の結果より、現在の進捗状況は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度実施予定の実験は、①炎症性カスパーゼの誘導メカニズム及び炎症性カスパーゼによる免疫チェックポイントタンパク発現誘導メカニズム解明、②マウス担癌モデルを用いた炎症性カスパーゼの機能役割解明、③肺癌におけるCaspase-4, Caspase-5の機能解明、④臨床サンプルを用いた炎症性カスパーゼとPD-L1の発現解析解明及び免疫チェックポイント阻害剤の効果解析、⑤炎症性カスパーゼの発現を制御する低分子化合物の探索、である。実験①に関しては、本年度に見出した転写因子候補からCaspase-4の誘導に最も関与する転写因子を同定する。実験②に関しては、Caspase-11(ヒトCaspase-4のマウスオーソログ)ノックアウトマウス肺癌細胞株をマウスに移植し(i)原発巣のサイズ、(ii)他臓器転移、(iii)原発巣辺縁の免疫細胞の種類同定・割合解析、(iv)原発巣における免疫系細胞と腫瘍細胞のCaspase-1,11、PD-L1発現解析、(v)生存期間を解析する。実験③に関してはCaspase-4の全長やそれぞれの特徴ある構造の断片(CARD domain, p20 unit, p10 unit)を発現させた細胞株、さらにはそれぞれの活性化部位を変異させたものを導入した細胞株を作成し解析を行う。実験④に関しては愛知県がんセンターにおける非小細胞肺癌患者サンプルを用いて解析を行う。実験⑤に関してはCaspase-4の誘導をルシフェラーゼ活性にて検出できるベクターを構築する。
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